九月十五日(金)


 相変わらず君はおひとしだ。

 放っておけばいいのに、いつも面倒な事を進んでやってしまう。

 今日決まった、学園祭の出し物の配役だってそうだ。

 黙っていても推薦や多数決で勝手に決まるのに。男子は『こくたにがどうせやる』とかどこかで思っている節があった。それもいつもの事だ。

 全員が嫌がってやらないからって立候補して主演をする事なんてないのに。

 本人はいつものように「そんなのは時間の無駄だからな」とか言っていたけど、授業内で使うと決められた時間に無駄も何も無い。

 私なら考えられない。主演なんて台詞せりふも多いだろうし、覚える手間を想像しただけでおつくうになる。

 何よりもそんな事をしたら、結羽太君と一緒にいられる時間が減ってしまう。

 大体、私の晩ご飯は誰が作るのか。もし結羽太君が主演の台詞覚えとかで晩ご飯を作れないような状況になったら私が作らなきゃいけなくなる。

 なんて事を言ったら「俺離れする良いチャンスだ」とか結羽太君は言うだろうけれど。

 笑いながら。

 言った事は冗談だって分かる笑顔で。

 私以外にはしない『格好を付けた笑顔』で。

 たとえどんなに忙しくても、結羽太君が晩ご飯を作ってくれる事は分かっている。

 でも、こんな文句を書きたくなってしまった。

 もし演技でも、あの笑顔を違う人に向けられたら嫌だって思ってしまう。最初からラブストーリーと分かっていれば結羽太君も立候補しなかったはずなのに。分かっていたら、私もヒロインに立候補したと思う。

 ヒロインになったはなちゃんは可愛かわいいし、良い子だし、友達としても自慢できる。ヒロインに推薦されたのも分かる。花火ちゃんは本気で拒否していたけど、結羽太君が「時間の無駄だから腹を決めろよ」って言ってた。

 もしかしたら結羽太君は、花火ちゃんの事が好きなのかもしれない。

 私なら好きじゃない人と演技でも恋愛のまねごとなんてできない。

 ……本当に結羽太君が花火ちゃんを好きだったとしても。それでもって、どこかで思ってしまった。

 だから、自分のためにしてしまった。

 本当はずるをしているようで、自分には使わないって決めていたんだけど。

 もうやり直してしまったし、仕方がない。

 とにかく。

 頑張ってヒロインをやろう。

 結羽太君が手を挙げるタイミングはバッチリ覚えてる。そのタイミングで私も手を挙げよう。

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