プロローグ 旅立ちの日

『勇者』の故郷はほのおに包まれていた。

 きばの突き出したイノシシのような顔を持つオーク達は、騎兵刀サーベルを右手にりかざし、左手にはりやくだつした村のわずかな物資を持ちくちぎたなののしり声をあげている。

 昨日まで戦いとはえんの生活を送ってきた『勇者』は、家にあった安物のどうつるぎを片手に構え、3人のオークと向かい合っている。

「……!」

 だがその姿は、くつきようなオーク達に比べてたよりない。いずれ最強の存在になる可能性をめている『勇者』も、今はまだ戦いを知らない少女でしかなかった。

 戦いはすぐに決した。『勇者』のいちげきは1人のオークのうでを浅くいたが、すぐに別のオークによって、『勇者』はめにされた。けんを持った手も、オークの筋肉が盛り上がった手につかまれると、びくとも動けない。

『勇者』は必死にもがくが、そのはんこう心もオークを楽しませるだけだった。

 牙の突き出した口からオークの長く赤い舌がぺろりとくちびるめた。みがおそろしげなオークの顔をゆがめる。

『勇者』にれようとオークの武骨な手がびる。が、その手は宙を摑んだまま止まった。

「あ?」

 オークは背中に熱い熱を感じて不思議そうに首をかしげた。

 振り返ろうとするが、急激なだつりよく感を感じて、ひざをつく。

 そのままオークはたおれた。


*         *         *


 ずるりと俺のミスリル銀のやりはオークの背中からけた。オークは倒れたまま動かない。

 オーク達は、走竜ライデイングドレイクに乗って槍を突きつける俺を見た。俺の着ているよろいの胸部にあしらわれたりゆうもんしようにオーク達の視線が吸い寄せられる。

「バハムートだんの紋章!? な、なんで王都の騎士がこんなちんけな村に!!」

 オーク達はおびえてさけんだ。まともな戦力もない村を略奪するだけだと思ったのだろうが、目の前にいるのはおう軍すら恐れるバハムート騎士団のせいえい、王都走竜騎士だ。

「ぎゃ!」

 オーク達がおどろいたすきを突き、『勇者』がオークのすねをり、その腕から抜け出す。

 俺の方へ走る『勇者』の顔に笑みがかんだ。

 俺は走竜ライデイングドレイクから降り、槍を置き剣を抜きながら、『勇者』である〝妹〟をかばうようにオーク達に立ちはだかる。

「うちの妹に手を出したんだ。かくはできてるよな?」

 俺は騎士の剣をオーク達に突きつけてそう言った。

 これが『勇者』の物語の最初の1ページ。

『勇者』は故郷の村をおそうオーク達を倒し、村人の脱出を成功させる。

 オーク達の正体は、魔王軍のせんけん隊だ。きんりんの村も次々に制圧されていくなか、『勇者』が中心となって人々を救い出し、集結した人々と反撃の狼煙のろしを上げたのだった。

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