この素晴らしい世界に祝福を!(1) あぁ、駄女神さま
第四章「このろくでもない戦いに決着を!」

エピローグ


 ベルディア討伐の翌日の事。


 俺は今後の事を考えながら、一人、ギルドへと歩いていた。


 俺に課せられたのは魔王討伐だ。

 だがそうなると、ベルディアみたいな強敵を、これからも相手にしなければならなくなる。


 魔王討伐を成し遂げ、願いを一つ、叶えて貰うか。

 それとも討伐は諦めて、この世界に安住の地を見つけるか。


 ……答えはもちろん決まっている。


 最弱職に就いている俺が、これから先も、あんなに都合良く勝てる訳がない。


 これからは、危ない事はせずにのんびり暮らそう。

 日本の知識を生かして商売をするのだ。

 安全な仕事をしつつ、たまには刺激を求め、簡単なクエストをこなしたりして。


 そんな今後の人生設計を考えながら、俺は冒険者ギルドの入り口に手をかけた。


 ドアを開けるとむせ返るような臭いが鼻を突く。

 人の熱気と酒の臭いが、俺が開けた入り口から外に向かって流れ出してくる。

 魔王の幹部を討ち取った記念に、冒険者達が昼間から宴会を開いているらしい。


「あっ! ちょっとカズマ、遅かったじゃないの! もう既に、皆出来上がってるわよ!」


 ギルドに足を踏み入れた俺に、アクアが上機嫌で笑いかけてきた。


「ねえカズマ、お金受け取って来なさいよ! もう、ギルド内の冒険者達の殆どは、魔王の幹部討伐の報奨金貰ったわよ。もちろん私も! でも見ての通り、もう結構飲んじゃったんだけどね!」


 何が嬉しいのか、報酬の入った袋を開けて俺に見せて、たはー、と頭をぽりぽりとかきながら、アクアが実に楽しそうにケラケラと笑う。


 こ、こいつも出来上がっていやがる。

 この世界での飲酒に対する年齢制限はどうなっているのだろう。


 見れば、ギルド内の冒険者達も、殆どが歩く事も出来そうにない程に、ぐでんぐでんだ。

 酔っ払い達は放っておき、俺はカウンターへと向かう。


 そこには既に、ダクネスとめぐみんの姿があった。


「来たかカズマ。ほら、お前も報酬を受け取ってこい」


「待ってましたよカズマ。聞いてください、ダクネスが、私にはお酒は早いと、どケチな事を……」


「いや待て、ケチとは何だ、そうではなく……!」


 二人がワイワイやっているので、俺は受付のお姉さんの前に立つ。

 ……と、見慣れた受付のお姉さんが、俺を見てなぜか微妙な表情を浮かべた。


「ああ、その……。サトウカズマさん、ですね? お待ちしておりました」


 ……?


 受付のお姉さんの態度に、違和感を覚える。


「あの……。まずはそちらのお二方に報酬です」


 お姉さんは、言って小さな袋をダクネスとめぐみんに手渡した。


 あれ、俺のは?

 疑問に思っている俺に、お姉さんが。


「……あの……。ですね。実は、カズマさんのパーティーには特別報酬が出ています」


 ……!?


「え、何で俺達だけが?」


 俺の疑問の言葉に、だれかの声が答えてくれた。


「おいおいMVP! お前らがいなきゃ、デュラハンなんて倒せなかったんだからな!」


 その声に、そうだそうだと騒ぎ出す酔っ払い達。


 こ、こいつら……。

 この世界に来て苦労続きだった事で、不覚にもその優しさにジンときてしまった。


 俺が四人を代表して、特別報酬を受け取る事に。

 受付のお姉さんが、コホンと一つ咳払いし、そして……。


「えー。サトウカズマさんのパーティーには、魔王軍幹部ベルディアを見事討ち取った功績を称えて……。ここに、金三億エリスを与えます」


「「「「さっ!?」」」」


 俺達は、思わず絶句した。

 それを聞いた冒険者達も、シンと静まり返る。


 そして……。


「おいおい、三億ってなんだ、奢れよカズマー!」


「うひょー! カズマ様、奢って奢ってー!」


 冒険者達の奢れコール。

 あっ、そうだ!


「おいダクネス、めぐみん! お前らに一つ言っておく事がある! 俺は今後、冒険の回数が減ると思う! 大金が手に入った以上、のんびりと安全に暮らして行きたいからな!」


「おい待てっ! 強敵と戦えなくなるのはとても困るぞっ!? というか、魔王退治の話はどうなったのだ!?」


「私も困りますよ、私はカズマに付いて行き、魔王を倒して最強の魔法使いの称号を得るのです!」


 騒ぐ二人の言葉を搔き消して、どんどん盛り上がっていくギルド内。


 そんな中、申し訳無さそうな表情を浮かべる受付のお姉さんが、俺に一枚の紙を手渡した。


 それは、ゼロが沢山並んだ紙。

 この世界の小切手?


 と、酔っ払ったアクアが上機嫌で俺の隣にやって来て、俺の手元の紙を横から覗き込む。


「ええと、ですね。今回、カズマさん一行の……、その、アクアさんの召喚した大量の水により、街の入り口付近の家々が一部流され、損壊し、洪水被害が出ておりまして……。……まあ、魔王軍幹部を倒した功績もあるし、全額弁償とは言わないから、一部だけでも払ってくれ……と……」


 受付のお姉さんはそう告げると、そっと目を逸らしてそそくさと奥に引っ込んで行く。


 俺の手元の紙を見て、まずめぐみんが逃げ出した。


 次いで、逃げ出そうとするアクアの襟首を素早く摑む。

 俺達の雰囲気で請求の額を察した冒険者達が、そっと目を逸らした。

 請求を見ていたダクネスが、俺の肩にポンと手を置き……。



「報酬三億。……そして、弁償金額が三億四千万か。……カズマ。明日は、金になる強敵相手のクエストに行こう」


 ダクネスはそんな事を言いながら、心底嬉しそうに良い笑顔で笑いやがった。



 ……どうしようもない仲間と共に、この理不尽な世界で一生暮らす?

 …………俺はそっと目を閉じると、深く、魔王討伐を決意した。




 このろくでもない世界から、脱出するために!



(終)



【次回更新:5/16(月) 『この素晴らしい世界に爆焔を!』 第一章 「紅い仁美の魔法使い達」】

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