クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。2

プロローグ


 小学生の頃、さくらもりあかいしくらまりが嫌いだった。

 教室で自分の席に座っていると、陽鞠がうるさく話しかけてくる。

「ねえねえっ、朱音ちゃん! 昨日の九時のドラマた?」

「観てないわ。恋愛ドラマなんて興味ないし」

 朱音は鼻を鳴らして、引き出しから教科書を取り出す。

「えー、面白かったのにー。録画してるから、一緒に観ようよー」

「何度も言っているけど、私はあなたと遊んでいる暇はないの。帰って妹の世話があるし、毎日勉強もしないといけないんだから」

 陽鞠は目をきらきらさせる。

「朱音ちゃんって偉いよねー! いっぱい勉強して、いっつも一番なんだもん!」

「ま、まあね。私に勝てる人間なんて、この世にいるわけがないわ」

 朱音は長い髪を跳ね上げる。

 誰よりも努力しているのだから、誰にも負けるはずがない。この先も、ずっと。

「でもでもっ、たまには息抜きもした方がいいよ。勉強ばっかりしてたら、疲れちゃうでしょ?」

「息抜きならしてるわ」

「私と一緒にしようよ! 一人より二人の方が楽しいよ!」

 元気な小犬のように、まりがまとわりついてくる。

 あかは眉をひそめ、冷ややかに陽鞠を見据える。

「……いしくらさん。悪いけど、私はあなたにも興味がないの」

 きっぱりと拒絶の意思を示したつもりだったのだけれど。

「私は興味あるよ! 朱音ちゃんのこと、とっても! だから、友達になろっ!」

 陽鞠は気にせず朱音の手を握り締める。

 屈託のない笑顔。全身から好意があふしている。

「あ、あのねえ……」

「帰りに、ちょっと寄り道しよーよ! すっごくしいいちごパフェのお店、見つけたんだー♪」

「苺ぱふぇ!?」

 ぴくりと反応してしまう朱音。

 すぐに表情を隠すが、陽鞠は見逃さない。

「あー、朱音ちゃんってば、苺パフェ大好きなんだー?」

 からかうように言ってくる。

「ぜ、ぜんぜん好きじゃないわっ」

「ウソばっかりー。思いっきり顔に出てたよー♪」

「で、出てないわ!」

「今日は私がおごるから、ねっ? ねっ?」

 陽鞠が朱音の手を引っ張る。

「う、うう……。じゃあ、ちょっとだけなら……」

「わーい! 朱音ちゃんとデートだー!」

 両手を挙げて大喜びする陽鞠。

 ──やっぱり、この子は嫌いよ……。

 朱音は思う。

 一緒にいると、胸の奥がじんわりと温かくなってしまうから。

 その感覚が不思議と心地良くて、落ち着かない。

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