〇見えない闇(7巻アニメイト特典)
その事実を重く受け止めながら、私は廊下を歩いていた。
「……理解した、とは?」
前後不覚に陥りながらも、冷静な教師を装い話を進める。
「
「何を言っている」
ダメだ。私の目の前にいる子供を、普通の高校一年生と見るべきじゃない。
「あの男は茶柱先生に接触などしていない。当然、退学にするよう迫ってもいない」
「いいや、おまえの父親は私に協力を求めてきた。事実、私がおまえに教えたように退学を迫ってきたはずだ」
内心で焦りを見せる私を、完全に綾小路は見抜いている。
「もう化かし合いは
だが、私の隠し通したかった事実に気づいたと綾小路に指摘される。
その瞬間、気が緩んだ。
「……話したのか、理事長が」
思わず、本心からそう聞き返してしまった。
「綾小路、カマをかけたな……?」
「ええ。理事長は
この場が支配されていくのが分かる。特殊な環境で育ってきたとだけ教えられていたが、一体なにをどうすれば、こんな得体の知れない子供が出来上がるのか。
優秀な生徒は数多く見てきた。だが、そのどれにも当てはまらない未知なる人間。
これまでの私の
どうすればいい。どうすれば、この子供を利用することが出来る。
そのハードルさえ越えることが出来れば、私はAクラスに上がれるはずだ。
それで、過去を塗り替えられるはずだ。
だから───どんな手を使ってでも、綾小路を利用しなければ。
綾小路にも言い逃れ出来ない、決定的な何かを
私は日々、己の中に潜む見えない闇と戦っている。