ようこそ実力至上主義の教室へ1年生編 Short Stories

〇夢と現実の狭間で(4巻とらのあな特典)

 私の目の前に置かれてあったのは、あんまんとピザまんだった。

「両方食べる!」

 空腹だった私は飛びつくようにその2つのターゲットへと近づいた。

 けれど、まるで高速移動のように2つの物体は逃げてしまう。

「むう、やるね。なら今度こそ!」

 再び跳躍した私は、先ほどよりも素早く、そして無駄なく手を伸ばす。

 だがまたも2つの食べ物はするりと私の手をすり抜けて距離を置いてしまった。

「……じゃあ、こうだと?」

 今度はピザまんを捨てあんまんにだけ手を伸ばした。すると逃げることもないまま難なくつかむことに成功する。私はそのままゆっくりとピザまんも掴もうとしたが、ピザまんは三度高速で距離を取るように逃げた。

 更に手にしていたあんまんもいつの間にかすり抜けている。

「これはつまり───」

 2つの食べ物が意味することに気がついた時、その2つは姿を消し世界は一瞬にして消え去った。そして柔らかな地面が私を迎え入れていることを知る。そして頭のそばで聞き慣れた目覚ましが鳴っていた。

「んー……」

 あぁそうだ。と眠い頭で状況を把握していく。今日は試験最終日だ。誰よりも先に部屋までたどり着いた私は、最後の詰めを考えていて眠ってしまったようだった。

 体を起こすと室内には、いつの間にかDクラスのあやの小路こうじくんの姿があった。

「おーはよー綾小路くん。ごめん、アラームで驚かせちゃったかな」

「いや、別に。よく眠ってたみたいだな」

「あははは、ごめんね。グースカ寝ちゃってて。随分早いね、まだ20分あるよ?」

「そういうお前こそ、いつからここに?」

「1時間くらい前かな。ちょっと静かに過ごしたくって。自室だと友達が出入りして騒がしいし」

 本当は寝るつもりはなかったけど、何となく恥ずかしかったのでそう言っておいた。

 でも良かったのかも知れない。結果的に戦う方法を定めることが出来た。

「それに、色々と頭の整理もしたかったしね」

「成果あり、か?」

「それなりにってとこかな」

 を追うものはいつをも得ず、かな。うさぎグループだけに方針をしっかりと固めた。

 でもせつかく綾小路くんと2人きりなんだし、調べておこうかな。

 ゆきむらくんやそとむらくんはすごくわかりやすい人たちなんだけど、綾小路くんってどこか雲みたいでつかみきれないところがあるんだよね。

 私は立ち上がり軽く手グシで乱れた髪を整えると綾小路くんの隣に腰を下ろした。

「試験までまだ時間もあるし少し話でもしよっか。迷惑でなければだけど」

「別に迷惑ってことはないぞ。いちが良ければ構わない」

 嫌がることもなく、そんな私の話を聞き入れてくれる。

「じゃあ決まり。実は綾小路くんにね、少し聞いてみたいことがあったの。クラスメイトの子にはさ、かんざきくんとか男子も含めて全員に聞いたことなんだけど、他クラスの子がどう考えているのかは聞いたことがないから、少しだけ気になってることがって。綾小路くんは、Aクラスに上がりたいって思いは強い?」

 まずは彼の深層心理を探る。何を考え何を目的として行動しているのか。

 私は、この特別試験のグループ分けに1つの疑問を感じていた。分けられたグループには何か1つの意味がある。例えば神崎くんの配属された竜グループは各クラスの代表とも言える人たちが名を連ねている。自分を高く持ち上げるつもりはないけれど、それでもやはり普通なら私はそこにいたんじゃないだろうか。

 でもそうじゃなかった。それは一瞬落胆することのようにも思えたが、もしかしたら別の意味を持っているんじゃないかとすぐに頭を切り替えた。

 私がこの兎グループに送り込まれたことには何か意味があるんじゃないか。

 この目の前にいるあやの小路こうじくんの存在もまた、その可能性の1つだ───。

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