電撃文庫『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』/二丸修一

幼なじみが負けフラグの時代は終わった? 予測不能なヒロインレース開幕!

著者:二丸修一 イラスト:しぐれうい

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★特別書き下ろしSS『群青同盟リモート会議』


 招待URLをタップすると、黒羽、白草、真理愛、哲彦の四人の顔が映った。

 現在世界的に大変な状況というわけで、密を避けるために群青同盟の会議を延期していた俺たちだったが、さすがに電話やホットラインでは限界があるということで、哲彦提案によるアプリZaamを使ったリモート会議が行われることになったのだった。

「さて、今回の会議のテーマは、なかなかヘビーなこの状況で、オレたちがやれること――だ」

「やれることってのは、こう、世間を楽しくするとか、そういうことか?」

 俺が尋ねると、スマホ画面に写る哲彦は頷いた。

「まあそういうことだな」

「おいみんな、おかしいぞ。哲彦のID、乗っ取られているんじゃないのか? 哲彦がこんなこと言うはずないよな?」

 黒羽、白草、真理愛が苦笑いをする。

 哲彦はこめかみに血管を浮き出させて言った。

「末晴のエロ本は机の引き出しの一番下――」

「あああぁぁぁぁぁ! てめぇぇぇぇ、ぶち殺すぞコラァァァ!」

「なんだやんのかオラァァァァ!」

 そっとヘッドホンから白草が耳を遠ざける。

 真理愛もさすがにしかめっ面だ。

 俺たちが不毛な言い争いを続ける中、黒羽が止めた。

「はい、ストップ! 話が進まないでしょ! そんな話、今更でしょ。ハルのエロ本は引き出しの下の一番下の二重底の下ってことはわかってるんだから」

「ふーん、いいこと聞いたわ……」

「中身をすべて妹ものに変えておく必要ありますね……」

「………………………………ん?」

 ちょ、待って? え、待って待って?

「クロ、今、お前――」

「掃除してるんだから知ってるに決まってるじゃない」

「で、でも、俺の部屋は自分でやるって……」

「それでも軽く掃除機かけたりくらいはしてるから。あと机の引き出しを全部漁って中身を確認するとか」

「おいいいいぃぃぃぃぃ! 人権侵害だ! 訴えてやる!」

「じゃあ今度そういう本見つけたら机の上に並べて置いておくね」

「本当にごめんなさいもう許してください」

 誰のものとはわからぬため息が聞こえてくる。

 哲彦が頭を掻いた。

「おい、リモートなんだから変な方向に話を持っていくな。全員強制的に同じ話題になるんだからよ」

 そういうこと言われると、黙るしかなくなってしまう。

「話を戻すぞ。今回の話し合いだが、こんな状況だから世間を楽しくとか言っておくと盛り上がりやすく、知名度が向上できてうめぇな、って狙いもある。それも考慮しろよ」

「よかった、哲彦だ」

「ハル、そういうこと言わない! 話がこんがらがるから!」

「へーへー」

 黒羽のおかげで何とか話は進んでいき、では実際どんなことをやってみるべきだろうという流れとなった。

「俺、実はいいアイデアがあるんだ」

 俺がそうつぶやくと、みんなが口を閉じた。

 哲彦が促してくる。

「言ってみろ、末晴」

「ああ。今は人類の危機――そんな状況下だからこそ、人を元気にするには、人の本能に訴えかける必要があると思うんだ」

「ほー、なかなかでかいこと言うじゃねぇか。で、その内容は?」

「人が本能的に喜ぶと言えば……エロ!」

 黒羽、白草、真理愛から表情が消える。

「つまりエロは世界を救うということが――」

「ハル……」

「スーちゃん……」

「末晴お兄ちゃん……」

 黒羽、白草、真理愛……三人の美少女から一斉ににらまれると、さすがに画面越しでも怖い。めっちゃ怖い。ホント勘弁して……。

「すいませんでした」

 俺は条件反射で土下座した。

「ハル、ずれてる」

「えっ?」

「スーちゃん、もうちょい右」

「あっ、はい……これで……よろしいでしょうか……?」

「はい、そこでいいですよ、末晴お兄ちゃん。まったく末晴お兄ちゃんは……そんなに欲求不満ならモモにだけ伝えてくれればよかったのに」

「!?」

 画面を通じて殺意が充満していく。

「もちろん世間様に肌を見せるつもりはありませんが、末晴お兄ちゃんだけになら……」

「モモさん? 何を言ってるの?」

「これが〝理想の妹〟とか笑わせてくれるわ。ただの発情したメスじゃない」

「ああ、いろいろと自信のない方々には毒のような発言をしてしまいましたね。後輩なのに生意気なこと言ってすいませんでした」

「はぁ!? 自信とかじゃなくて倫理的な問題で突っ込んだつもりだったのだけれど?」

「そもそもその胸で言われても――」

「ああ白草さんそういうこと言うんですか品行方正なモモでも我慢の限界というものはあるんですよ?」

「ちょ、ストーーップ! ストップ! ストップ! ちょっと待て!」

 これがリモートの恐ろしさか……。

 本来なら人数が多ければグループができたり、多少距離を取ったりすることができるが、どうしても一つの話題で流れができてしまうため、逃れられない。

「喧嘩はせずに、みんなが喜ぶようなネタを……な!」

「最初にエロを言い出したハルが言っていいセリフじゃないと思うけど?」

「すいませんでしたごめんなさい」

 俺が土下座をすると、全員がため息をついた。

「でも人は本能的にエロを喜ぶことは確かだし、発想自体は間違っちゃいないんだよな」

 哲彦の発言でちょっと流れが変わった。

 たぶん俺が発言したときは『エロ本みたいなエロ』をみんなが想像したが、それとは違う狙いがあるのではないかと察知したからだろう。

「哲彦くんは何かアイデアあるの?」

 黒羽が問うと、哲彦がぽつりぽつりと語り出した。

「まず志田ちゃんが色っぽく意味ありげに上着を脱ごうとするシーンを撮るとするだろ?」

「ちょ、哲彦くん!? それじゃ――」

 哲彦は無言で手を突き出した。黙って話を聞けのポーズだ。

 思わず乗り出し、アップになっていた黒羽は元の位置に戻った。

「次に可知がニーソックスを脱ぐシーンに繋がる」

「ちょ、私はそんなこと――」

 無視して哲彦は続けた。

「で、真理愛ちゃんがスカートを脱ぐシーンになる。もちろんここまでで下着は一切写らない」

「ははあ、わかってきましたよ」

「そしてたっぷりと溜めた後――下着姿の末晴が登場する」

「……おい」

 それ完全に詐欺だよなぁ!

「今、多くの人間が自宅で自粛して、不満が溜まったり、ストレスを感じたりしているだろ? 天気で言えば、雲の中に雷が溜まっている状況だ」

「――で、ハルに避雷針になれと?」

「志田ちゃん、正解」

「それ喜んでねぇだろ! 裏切られてブチ切れるだけだろ! 楽しませるって話じゃなかったのかよ!?」

「末晴お兄ちゃん、それはちょっと違うんじゃないでしょうか?」

 真理愛が異議を唱えた。

「ここまで露骨におバカな内容ですと、騙そうとして作るんじゃなくて、『みんな薄々騙してくるなと思って、それを楽しむ動画』ってことになりませんか?」

「あー」

 なるほど……そういう動画、あるな……。

 そしてそんな動画に対し、真面目に怒っている人がいたら、逆に笑われてしまうパターンのやつだ。

「真理愛ちゃんの言っていることがオレの狙いだな。騙そうとするだけならこんな内容じゃ甘いし、エンターテインメントにもならねぇ。でもこれはコントと同じで、何かやってくるってわざとらしい前振りがあるからエンターテインメントとして成立する」

「まったくこの男は……」

 白草のつぶやきは全員の気持ちを代弁していたのかもしれない。

 こう、何というか、発想自体がひねくれている。

「安心しろ、末晴。お前が出てきた瞬間、『百万回振られた男』って赤字でオレが埋めておいてやる」

「おい、哲彦。そんなことしたら俺、泣くぞ?」

「正直、やる気が湧かないんだけど……」

 黒羽はため息をついた。

「でも今の大変な状況下で、私たちができることは少ないわ。動画の配信が私たちの武器なのだとしたら、少しでも笑えたり楽しめたりするものを提供したいって気持ちはあるわね」

 白草の意見に皆が頷いた。

 ということで意見が出尽くし、投票となった。

 五人のうち、過半数のオッケーがあればこの企画は成立する。

 結果――賛成二、反対三で否決。

 あとで聞いてみたら、女性メンバー三人が反対に回っていた。

「動画を作成する趣旨は賛同するけど、この内容はあり得ないわ」

 そんな白草の意見に、女性メンバーたちが頷き、押し切られた。

 その結果、代わりに公開した動画は――

『元子役丸末晴のモノマネ百連発』

 となった。

 これに関しては俺が大反対したが、他の四名の賛成により可決。

 俺は地獄を見たが――

「ねーねー、ハル。あれやってよ、『ちょっとナンパなガンジー』」

「いいわね、志田さん。私としては王道の『開港を迫るペリー』とかがいいのだけれど」

「モモは『ミケランジェロのダビデ像』を希望します!」

 女性陣には大ウケだった。

 そして動画を公開した反応は――

 いやホントこの話題はやめてください、お願いします。



                                      

                              おわり




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