プロローグ 嘘と虚構と宣戦布告
♯
──コツコツと新品の革靴が音を立てる。
俺の一挙手一投足に数万の視線が集中しているのが振り返らなくても肌で分かる。
ここ
「…………」
そんな熱気を平然と切り裂きながら、静かな足取りでマイクの前に歩み寄る俺。
小さく息を吸い込んで、それからぐるりと周囲を見渡してみる。──この島最大のイベントホールだと聞いているが、どうやら席は全て埋まっているようだ。友達とひそひそ話しているやつ、暇そうに
だが、それも当然の話だろう。
国内最難関と言われる
昨年度の絶対王者を一日にして陥落させた、注目度最高のスーパールーキー。
ああ、もちろん────そんなのは、全部嘘だ。
(やべえ……やべえ、心臓止まりそう。何これ? 俺なんでこんなことしてんの?)
堂々と開示された情報は、そのほとんどがデタラメだった。合っているのは精々名前と性別くらいだ。俺の成績は合格点スレスレだし、7ツ星でも最強でもないし、どころか学園側からの評価は他の誰よりも低いと聞いている。
……だけど、それは誰にも知られちゃいけないらしい。
絶対にバレるわけにはいかない、らしい。
だから俺は、バクバクと高鳴る心臓を無理やり抑えつけて、余裕の笑みで口を開いた。
「──よう、お前ら。俺が新しい〝7ツ星〟の
最初に宣言しておいてやる──俺はこれから二年間、7ツ星としてこの島の頂点に君臨し続ける。例の〝お嬢様〟にも他の誰にも、星を譲るつもりは一切ない。……ああ、だけど文句があるならいつでもかかって来てくれていいぜ? 《
まあ──当然、
「……ふぅ……」
異例のスピーチ内容にざわつき始める場内から視線を切り、俺は早々に壇を降りることにした。浮かべているのは不敵な笑みだが、反面、胸中には後悔やら焦燥ばかりがぐるぐると渦巻いている。……ああもう、本当に言いやがったよ。正気か俺? 馬鹿じゃないのか? いいや、間違いなく馬鹿だ。だってここまで来たらもう言い訳できない。全てが終わるまで引き返すことすら出来やしない。
けれど──そう、そうだ。だからこそ。
俺はこれから、ここにいる連中を軒並み騙す。
卒業までの二年間、どんな手を使ってでも絶対にこの〝
…………さて。
そもそも