01 幼馴染のSランクパーティーからお荷物扱いされている件


おれは世界一のけんになる。そしてどんな人でも守れる、強い男になるんだ」

 俺の目の前で幼馴染のアイザックがそう高らかに宣言し、木人形へとりかかる。

 斬り付けられた木人形には大きなみぞができていた。

「私は絶対世界一のほう使いになるわ」

 エミーがつえり回すとそれにあわせて、火の玉がじゆうおうじんに空中を動き回る。

 そして、岩へ向かって火の玉を放つと派手な音を立ててばくはつした。

「わっ私は……どんなも治せる女性になれたらいいなって思ってます」

 カラの目の前には大量の空のポーションのびんが置かれている。

 カラが魔法を唱えるとポーションの瓶の中にとうめいの液体がどんどん満ちていく。

「俺は……」

 みんなといつしよにいつまでも楽しくいられたらいいと思ってしまう。

 そのためにみんなが夢をかなえるためのサポートをしよう。

 そしていつか……。


 俺たちは魔王城に一番近い辺境の地グラエラ村で育った仲良し4人組だった。

 俺たちが12さいになると、4人は村の司祭からかんていをうけ、それぞれが適性職業を告げられた。

 アイザックは世界一の剣士になるという目標に近いけんとう

 エミーも自分が望んでいた魔法使い。

 カラも人を回復させ導く聖女。

 俺は……せいじゆう使いという変わった職業だった。

 聖獣使いというのは司祭も今まで聞いたことがないというほど希少な職業で、村の職業一覧にものっていなかった。

「すごいねロック! 聖獣使いなんて希少な職業につくなんて本当にロックはカッコイイよ」

「そんなことないよ。エミーだって小さいころから訓練してた魔法使いになれてすごいじゃないか」

「本当だよね。俺なんてありきたりな剣闘士だからな。ロックはやっぱりすごいよ」

「いやいやアイザックは俺たちのこうげきの中心だからな」

「私も、ロックと同じ聖気を使えるから一緒に訓練しようね」

「カラの回復にはみんな期待しているからね。一緒にがんろうね!」

「それにしても、聖獣使い、魔法使い、聖女、それで俺の剣闘士ってかなりバランスのいいパーティーじゃね?」

ちがいない! みんなで最高のパーティーになろう」

 全員がこぶしをつきだし、そして空高くかかげた。

 空は快晴、俺たちの進むべき道を太陽が明るく照らしているようだった。

 そして3年が経過した。

 俺たちは村から王都クロントへ来てぼうけんしやパーティーとしてやっていた。

 元からの才能や運もあり3年間という短い間でS級パーティーへと成り上がっていた。

 ただ、俺たちの中でじよじよに差ができてしまっていた。

「なぁエミー、もう首を縦にふれよ。あれとパーティーを組むメリットがもう何もないんだよ」

「そんな……だってメリットとかそういうの関係なくない? 私たちはずっと一緒だったんだよ」

「もう俺たちは自分たちのパーティーのことだけを考えていればいい時期は終わったんだよ。S級パーティーとしてさらに成長しなきゃいけないんだ。あいつは12歳までで終わり」

 俺は宿屋の2階の借りている部屋の前で中の声を聞いていた。

 このやりとりを聞くのも、もう何度目だろう。

「俺たちはだれもがあこがれ、せんぼうを集めるS級パーティーなんだよ。だからこそさらに高みに行かなきゃいけないし、をいつまでもめんどう見ているゆうはないんだ。なぁわかるだろ? 勇者が俺たちのパーティーに興味を持ってくれるなんてこんなチャンスはない。あれをクビにすればくいくんだよ」

 俺は部屋のとびらを開けることができなかった。

 さらにアイザックはまくしたてるように続けている。

「あれは確かに12歳まではすごかったよ。でも今じゃただの役立たず、お荷物だ。あれの代わりなんていくらでもいる。あれのできることはみんなできるんだからな。S級パーティーの一員にまでなれただけであれだって満足するだろうよ。つうはS級に上がる前に切り捨てられる。勇者が俺たちの仲間になれば王様だって俺たちを無視できなくなるし、俺たちの村にだっていいえいきようがあるに決まってる。みんなの夢が叶うスピードだって上がるんだよ」

 聖獣使いという非常にレアな職業になった俺は最初の頃はみんなからの期待にこたえられるように頑張った。でも、当たり前だが聖獣なんてそんなめつにいるものじゃなかった。

 王都クロントへ来れば何か情報があるかと思ったが、王都でも聖獣使いはめずらしい職業だった。

 過去にまったくいなかったわけではなかったが、その多くはいつしようがい聖獣を探すか別の職業について一生を終えている。

 聖獣がいないと言っても、関連した色々なスキルを覚えられたのでパーティーにはこうけんしてきたつもりだ。聖獣使いのスキルは聖獣がいなくても仲間へのサポートとして使えるものがたくさんあった。

 小さな頃からみなをサポートすることを意識してきたのでえん魔法や装備への加護などで仲間の力を向上させた。荷物持ちもそつせんしてやり、料理やけいかいせつこうかべ役までやってきた。

 パーティーが強くなりS級へ上がるためには上手く立ち回ることも必要でギルドとのこうしようもしたし、すべてのやつかいごとは全部俺が引き受けた。

 みんなが特化してきたえていく中で、全員のサポートができるように、そしてどんな職業になってもだいじようなようにと基本的な技術は身につけた。

 だけど、その俺の貢献はまったく理解されていなかったようだ。

「明日、勇者と顔合わせをしてもらいそのまま地下ダンジョンへもぐる。俺たちに足りなかった力が彼にあれば『めつのダンジョン』の攻略もできるはずだ。それであれとはおさらばだ」

「たしかにロックは使えないけど。でも幼馴染で頑張ってきたんだから切り捨てなくても」

「エミー、もう話し合いは終わろう。エミーは個人的にあれと付き合えばいい。ところで明日からダンジョンだって言っているのにカラはそんなドレス持っていくのか?」

「そうよ。てきでしょ? これ高かったから宿に置いておいてぬすまれたりしたらいやでしょ。あれも子供じゃないんだから荷物が一つくらい増えたからと言って文句言わないわよ」

 カラは村での大人しかった性格から一変し、王都に来てからというものの、美しさへのこだわりがでて、とてもかねづかいがあらくなっていた。もはや世間いつぱんの聖女のイメージとかけはなれている。

 ゆいいつ俺をかばってくれていたのはエミーだけだが、それも難しいらしい。

 ドアをノックし扉をあけると室内が静かになる。

「それじゃ俺はもうるからな。ロックお前もいつまでもトロトロやっていないでさっさと明日の準備しておけ。ただ、ガチャガチャ音たてるんじゃねぇぞ。お前と違って俺たちは明日いそがしいんだからな」

 明日の準備のために買い出しに行った俺にたいしてアイザックはそう言い放つとベッドに入る。

 宿では小さい頃から一緒に育ったこともあり全員が同じ部屋で寝ていた。

 でも最近では当たり前のように俺だけベッドの使用は許されずゆかで寝ている。

 パーティーの中では結局戦闘に参加し、敵をたおせる者や回復ができる者が優先される。

 見えないところでのカバーや地味にかつやくをしても、それはやって当たり前というにんしきしかされなかった。

 本当に、どうしてここまで差ができてしまったのだろう。

 勇者が入るということは明日で俺は首になるってことか。

 小さな頃から一緒にやってきて仲間だと思っていただけにショックは大きい。

 その夜、俺は床の上でうすい毛布をかぶりながら声を出さずに泣いた。


◆ ◆ ◆


 早朝から冒険者ギルド『キンバリー』へ行き、勇者と初顔合わせをすることになった。

 もちろん、俺には勇者が来ることは聞かされていないので知らなかったフリをする。

 勇者はさわやかながおの好青年だった。薄い茶色のかみに引きまった身体からだつきをしている。決していい体格というわけではないが、日々鍛えているのがわかる。

「初めまして。勇者のキッドといいます。S級パーティーグラエラへおためしということですが参加できて非常に光栄です。しっかり実力を見せられるように頑張ります」

 俺たちのパーティー名は村の名前からとっていた。

 育った村グラエラは魔王城の近くということで観光客なども少なく無名に近かったため、育ててくれた村が少しでも有名になるようにと村の名前をつけることにしたのだ。

 勇者はすごくれい正しい人だった。

「勇者が参加するのか? すごいなアイザック」

 アイザックは俺を一度チラッと見て舌打ちをしただけで、それ以上何も言うことはなかった。

 勇者は空気を変えるかのように一人一人にていねいにあいさつをしていく。

 エミーやカラへは、

「神様もこんなに美しい女性に才能をあたえるなんてひいがすぎますね。でも神様も2人の美しさには贔屓してしまう気持ちもわかります」

 とかお世辞を並びたてていた。

 確かにエミーもカラも顔は可愛かわいいと思った時期もあるが最近では顔よりも大切なことがあるというのを学んだ。

 キッドは俺の前までやってくると自分の荷物を指差しながら、

「オイ使用人、これ俺の荷物な。貴重品も入っているから乱暴に扱うなよ。お前なんかの金では一生買えない物もあるからな」

 前言をてつかいしよう。すごく嫌なやつだ。

「キッドさん、ロックは使用人ではないです」

 エミーは俺に気を使ってかばってくれる。

 かのじよだけは、他が変わっても俺のことを幼馴染として見てくれている。ただ、扱いとしては使用人と変わらないが。

「そうなのですか? それにしては全員分の荷物も持たせていますよね? それに明らかにドレスのような冒険には必要ないものまで」

「エミー、もう余計なことキッドさんに言わないの。別にロックの扱いはどうでもいいわ。それよりさっさと行きましょうよ」

 カラは自分の方に非難がまわってくるのを嫌がり話題をそらした。

 そりゃキッドもツッコミをいれたくなるだろうよ。

「あぁもう行くが……キッド、一応装備の確認をさせてくれ」

 アイザックが勇者に声をかけると勇者はこしにさしてある剣をく。

「アイザックさん安心してください。ぼくには王様から頂いたこの『りゆうめつしつの剣』がありますので」

 キッドが抜いた剣はかなり年代物のようだ。なかなかよく作りまれていて、名刀と呼ばれるには十分な剣だった。

 ただ……。

「その剣、根元の部分にうっすらとヒビが入ってないか?」

 剣はとてもらしいものだったが手入れがされていないようだ。きっと剣の切れ味がいいので手入れをサボっていたのだろう。

 キッドは俺に対して敵意を向け、にらみつけてくる。

「お前、うるさいぞ。俺の剣にヒビが入っていたりするわけないだろ。この剣は俺が王様から頂いたドラゴンでさえ倒せるっていう剣なんだ。そうやっていちゃもんをつけて俺の評価を下げるひまがあるなら自分も役に立つ行動しろ」

「お前はほんとじやしかしないな」

 アイザックが死んだ魚のような目で俺の方を見てくる。

 最初の頃はアイザックからのこの目線にもショックを受けていたが、慣れてしまった俺がいる。

 アイザックはもう無視でいい。

 ただ、キッドの武器については疑問が残る。いくらいい武器だとはいっても、最低限手入れや確認は必要だ。それをおこたっている上に、忠告しても確認をしようともしないとは、勇者として大丈夫なのか不安になってくる。

 俺はこれから行くダンジョンはどんなに注意をしてもしたりないと思っていた。

 武器はどんなにいい剣でももうしてくる。

 それなのにキッドは剣の力を過信し、アイザックはキッドのごげんをとるために剣をめたたえていた。それからしばらくキッドが王様からこの剣をもらうことになったまん話が続いた。

 話がひと段落したところでアイザックが声をかける。

「よし! それじゃあ気合いれていこう」

「僕が加入したからには大船に乗ったつもりでいてください」

「さっさと終わらせてもうけた金で新しい服買いにいきましょ」

「魔法は私に任せて」

 4人が気合を入れているのを俺は少し遠くから見つめていた。

 当たり前のように俺の入るすきはない。

 今日加入した勇者が楽しそうに笑っている。本来なら俺があそこにいたはずだった。

 アイザックだけではなくエミーもカラもまったく気にもかけてくれないようだ。

 もう俺はこのパーティーには必要とされていない。

 本当に今日で終わりのようだ。

 俺はそのえんじんを見つめながら今までのことを思い出していた。


 俺もみんなのために頑張ったつもりだった。

 でも、それはな努力だったらしい。

 楽しい時も苦しい時もみんなと一緒だったから頑張れた。

 みんなの夢をおうえんすることが俺の夢だった。

 だけど、もう俺にはそばで応援することもできないらしい。

 今日が最後だと思うと目からあふれそうになるなみだを必死にこらえることしかできなかった。

ドラゴンノベルス5周年記念フェア

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