番外編 ベルクマン家の勇者レオ


 一学期の半ば、学園の放課後。

 用事で少しおくれて、おれたんれん場へ向かった。

 鍛錬場はとても広く、しようげきを吸収するどうのフェンスで、いくつかの区画に分けられていた。ベルクマン家に割り当てられた場所には、未来の勇者のレオも来ていて、俺の側近たちとけんじゆつの練習試合をしていた。

「お、ちょうど見ごたえのある勝負をしているな」

 うちで一番の剣の使い手であるギルベルトと、レオが試合中だった。

 魔力を使わない剣術のみの手合わせだが、二人とも運動神経ばつぐんなので、曲芸みたいな動きをしていた。

「すごいな」

 俺は側近たちに交ざって二人の試合を観戦した。

 ガキンッ!

 ギルベルトの剣がレオによってはじかれる。試合はじよじよに、レオがギルベルトをあつとうする展開になっていった。

 ──やっぱり、レオは強いな。

 ただ、不思議なことに、この強いレオのうわさがあまり広まっていなかった。

 鍛錬場はかくしなどなく、他のばつの貴族や王家の関係者も見ることのできる場所にある。今も、他家の子女たちが、こちらをチラチラと見ていた。これだけもくげきしやがいて、何でレオの噂が広まらないのだろう。

 レオは悪魔と戦う人類の切り札だ。俺としては、今のうちから知名度を上げておきたいのだが。

 試合はレオの勝利で終わった。

 ──ギルベルトや俺の側近たちに勝っても、あまり評価されないのかな。ここはやはり、こうしやく家の長子である俺がレオに派手に負けて、みなにインパクトをあたえた方がいいのかもしれない。

「レオ、調子はどうだ?」

「セリム公子」

 俺がレオに声をかけると、ギャラリーの視線が一気に俺に集まってきた。特に女子の注目がすごい気がする。学園は貴族社会だから、身分の高い者の動向が気になるのだろうな。

「俺も剣のけいをしたい。つきあってくれるか?」

「喜んで」

 俺は魔術に比べて剣はあまり得意ではない。でも、負けるための勝負だから、問題ないだろう。

 ──さあ、派手にぶっ飛ばしてくれ。

 結界魔法を中心としたぼうぎよ型の俺が、魔法を使わずにこうげきりよくの高いレオにいどむのだ。あっさり負けることだろう。

 だが、俺の予想に反し、レオと俺の試合は、地味な打ち合いが続いた。

 ──これは……。

 以前に領地で、カティアに剣術を教わっていたときの手合わせと同じだった。俺との間に力の差がありすぎることに気づいたレオは、俺の訓練になるように、俺に力量を合わせて稽古に付き合ってくれていた。

 ──いや、そういうことじゃないんだって。

 前世のレオなら余計なことは考えずに俺をたたきのめしてくれてたんだけどなあ。今世は、俺がかれおさなじみを〈治癒スキル〉で助けたから、レオは俺に恩義を感じているらしい。

 ──まあ、せっかく上級者が稽古をつけてくれているんだ。なおに剣の練習をしておくか。

「「「セリム様~、がんばって~」」」

 知らない女子たちが俺にせいえんをくれる。

 俺は結局、ギルベルトとレオの試合よりずっと長い時間、レオと剣の訓練を続けた。

 俺がつかれて試合を終えると、周囲は俺をたたえた。技量の高すぎるレオの動きは、手加減を周囲に気づかせなかった。ギャラリーたちには、俺とレオがかくに打ち合っているように見えたらしい。

 さっきギルベルトに圧勝したレオのことは、皆のおくから消えていた。

 ──俺、しゃしゃり出て逆効果だったんじゃ……。


「今日はギルベルトが派手な負け方をしたので、レオに注目が集まってしまうのではないかとヒヤリとしました。ですが、公子のフォローで何とかなりましたね」

 帰りの馬車で、俺は側近のヴァレリーに、気にしていたことをもろに言われた。

「何のことかな?」

 俺としては、未来の勇者であるレオに注目が集まってほしかったんだ。レオの強さを打ち消すつもりなんてなかったんだぞ。

「常に情報がれないように気を配っておりましたが、今回は危なかったです。我々がレオのかんゆうに成功するまで、彼の実力を他家に広めないよう、今後も注意してまいります」

「え、いや。レオの評判が広まっても、俺は別に……」

「心得ております。レオほどの実力者の心証を悪くすることはしません。せいこうほうの勧誘で、必ずベルクマン家に……」

 ヴァレリーはレオをじんえいへ引きむのに燃えていた。

 公爵家のためにがんってくれている側近を前に、俺はそれ以上本音を言えなくなるのだった。


   ◇ ◇ ◇


 場所と時間を少しもどす。

 学園の鍛錬場。

 セリム公子とレオの試合が終わると、日が暮れかかっていた。

 帰りたくをしてレオが鍛錬場の外へ出ると、一人の美少女に声をかけられた。

「ちょっといいかしら」

 すらりとしたスタイルに長いかみ。ルヴィエ侯爵れいじようナディアだ。

「セリムから、ベルクマン家はあなたの勧誘にまだ成功していないと聞いたの。仕官先に迷っているなら、ルヴィエ家はどうかしら? 実力だいでしっかりしようしんできるわよ」

 ナディアは以前に公子から言われた通り、レオを自勢力へ引ききに来ていた。

「いや、セリム公子にも伝えたが、俺は王都をはなれる気はない。地方への仕官は断っているんだ」

 と、レオは素っ気なく、ベルクマン家の者に断ったのと同じ理由を述べた。だが、相手はやり手のナディアである。

「あら? このままどこのさそいにも乗らないと、あなた、強制的に王家に仕官することになるわよ。王家は国の各地にちよつかつりようを持っているわ。身分のないあなたは、問答無用でへきに飛ばされるでしょうね」

「それは……」

 レオは強いが貴族の常識にうとい。ナディアに言われるまで、王家が自分をどうあつかうか想像できていなかった。

「地方貴族といっても、みんな王都にしきを持っているのよ。条件こうしようできる相手に仕える方が、よっぽど行動の自由を得られるんじゃないかしら」

「たしかに……」

 レオはそこで初めて、仕官先を決めることの重要性に気がついた。

「ルヴィエ家は良いわよ。交易が盛んだから、王都に行く仕事も多いの。王都で生活はできないけど、そっちにかかわれば、知り合いの顔を定期的にかくにんするくらいできるわ」

 ナディアのたくみなセールストークに、レオの気持ちはぐらぐらさぶられた。しかし──。

「俺はセリム公子に恩を受けた。ベルクマン家を差し置いて、他の貴族に仕えるわけにいかない」

 レオは、貴族に仕官するなら、まずセリム公子に義理を果たすべきだと思った。

「そう。まあ、手合わせであれほどセリムに手加減してたし、すでに彼が飼いらしちゃってるのかしらね」

「飼い馴らし……」

「まあ、今は仕方ないわ。こっちはいつでもかんげいするから、ベルクマン家と条件が合わなかったら、うちも候補に入れておいてちょうだい」

 と、言いたいことを言うと、ナディアは去っていった。

「俺は……いつの間にか飼い馴らされていたのか」

 レオはナディアの言葉が引っかったが、否定もできないことに気がついた。


 休日。

 レオは久しぶりに幼馴染に会いに行った。

「相談したいことがある」

 彼は同じいんで育った幼馴染に、仕官についてのなやみを話した。

「ふむふむ~。このまま学園を卒業すると、王都を出ることになりそうなのか」

 幼馴染のミーナは、ショートカットでホコリにまみれ、よく男だとかんちがいされていた。だが、よごれを落とすと実は可愛かわいい女の子だ。

 マーケットで買ったリンゴを片手に、二人は近くのさくの上にすわって話をした。

「そのルヴィエ家の人が言っていることが本当なら、仕官先を決めた方が良さそうだね」

 ミーナの言葉に、レオは首を横にって、

「正直なところ、ごうまんな貴族や王族になど仕えたくない。お前たちといつしよに街で仕事をしていたいんだ」

 と、本音を口にした。

「傲慢な貴族? それって、セリム公子様もふくまれるの?」

 セリム公子に食中毒の治療をしてもらったミーナは、彼のファンになっていた。

「いや、公子はちがう。だが、俺はこのまま彼に飼い馴らされるのも……」

「飼い馴らされる?」

 ミーナに聞き返されて、レオは気まずそうな顔をした。

「公子と手合わせをすると、勝つことができない」

「え、レオが負けるの? 公子様って、そんなに強いの!?」

 ミーナはおどろいて口をポカンと開けた。昔からレオをよく知るかのじよは、彼の異常なほどの強さを知っていた。

「いや、勝負がつかず、引き分けになる。公子が少しでもをする可能性があると思うと、俺は力が出せなくなるんだ」

「……ほむ」

「以前に、公子がこの辺り一帯の家のあまりを直してくれたって、お前が教えてくれただろ。しようで病気を治したり、丸一日かけてひんみんの家の修理をしてまわったり。あの人はまさしく聖人なんだ」

 レオはめずらしく熱を込めて語っていた。それは、レオと長い付き合いのミーナも初めて見る姿だった。レオは仲間の中では最強すぎて、いつもクールなキャラだったのだ。

「……そんな公子に、かすり傷ひとつつけられないだろ」

 ボソリとつぶやくレオが、ミーナにはほほ笑ましかった。

「うん、そうだね。公子様はすごいわ。レオが以前に土魔法で屋根の修理をしようとしたときなんか、屋根を重くしすぎて家ごとつぶしちゃったもんね」

「…………」

 レオは無言でミーナから視線をらした。

「そこまで公子様にしんすいしてるんなら、仕官させてくださいって、素直にたのんだらいいのに」

「それは……」

 レオはどうしても王都から離れたくなかった。孤児院で苦労して育った彼は、目の前の幼馴染や仲間を守れるのは自分だけだという考えにしばられていた。役人や貴族はびんぼうにんに無関心だし、同じ平民同士も冷たいものだ。仲間が苦境に立たされたとき、自分が離れた地で助けられないのはいやだった。

「レオの気持ちはうれしいし、私もレオと離れたくないよ。でもさ、現実的な話、私が魔物の食中毒で死にかけたとき、助けてくれたのは公子様で、レオじゃないんだよ」

 幼馴染の言葉に、ピクリとレオのかたが揺れた。

「ごめん。レオを批判したいわけじゃないの。ただ、それくらい、公子様には人を助ける力があるって言いたくて。彼を守るってことは、無数の『私たち』を助けることにつながるんじゃないかな」

「ミーナ……」

「レオが特別な力をさずかったのはさ、私たち数名の仲間を助けるより、もっと大きなことのためだと思うんだ。でも、レオの魔法って、戦う以外には使えないじゃん。多分その力は、公子様みたいな人を守るためにあるんだよ」

「…………」

 ミーナの言葉は、レオの心を大きく揺さぶるものだった。しかし──。

「公子には、すでにたくさんの配下がいる。それに、彼自身、相当強いんだ。俺が必要ないくらい」

「そうなの? うーん、まあ、まだ学園に二年以上通うんでしょ。将来のことは、ゆっくり決めたらいいんじゃないかな」

「そうだな」

 レオはうなずいて立ち上がった。

 彼のこの時の考えは、一カ月後に魔人という強敵と戦い、また変化することになる。


   ◇ ◇ ◇


 サティはくしやく領での戦いが終わった。

 俺はサティ領からベルクマン領へ直接帰省した。

 夏休みのはじめ、レオがベルクマン公爵家に仕官してくれることになった。前世との違いを思うとかんがいぶかい。あれだけ敵対していたレオが、俺の下につくとは。

 だが、これは大きな責任を背負ったということでもある。人類の最終戦力になる勇者を、ベルクマン家が責任を持って最強に育て上げなければならないのだ。

 俺は庭の鍛錬場にレオを引っ張っていった。

 ベルクマン領主城の鍛錬場──以前に父と勝負した場所だ。あのときは、大暴れした父が城をこわしかけていたけど、レオならだいじようだろう。

「公爵家に来てくれたことだし、もう一度手合わせしておきたい。レオのせんざい能力はとても高い。できるだけばそう」

 俺はレオに訓練用の剣をわたした。

「前に試合したときと同じで、ルールは特にない。魔法でも剣でも、好きにこうげきしてくれ」

 これから起こる危機に備えるために、勇者レオは最強でなければならない。だが、俺には少し気になることがあった。レオと戦うことで、問題点を洗い出すつもりだ。


 試合開始と同時に、レオは剣を構えてこちらにっ込んできた。

 三カ月ほど一緒に訓練して、おたがい手の内はバレている。俺は結界で身を守りながら魔法で攻撃するえんかくタイプ。近付いて、ばやい攻撃でかくらんし、何もさせずに圧倒するのが良策だ。まあ、そんなことは俺も分かっている。

すなあらし!」

 俺の結界はひようへきだけではない。風魔法と土魔法、結界魔法の三つを複合したおおわざを放った。

 俺の周辺で風がくるい、その中を無数のいしつぶてう。中心の俺だけは無傷だが、近付けば風と石でダメージがちくせきされる。

 レオはすぐに後ろにんで俺からきよをとると──。

えんせんぷう……」

 以前に教えた複合魔法をってきた。俺は防御結界を張ってそれにえる。

 ──強いけど、耐えられるんだよなあ。

 もともと俺が防御寄りなのもあるが、守りにてつすれば、レオにも負ける気がしなかった。

 ──やっぱり、レオは前世より弱くなっている。

 サティ伯爵との戦いで気づいた。俺は今世で、レオの育成に失敗していたようなのだ。

 俺が考えだすと、レオは攻撃を止めた。

「どうです? おかげさまで使える技が増えたと思いますが」

「……そうだな。強くなっていると思う」

 俺はレオの言葉をこうていした。今の段階で、レオは同世代で最強だ。俺もレオには勝てない。

 でも、弱い。これじゃこの先まずい。

 前世のレオは、サティ伯爵よりはるかに強い魔人化した俺に圧勝していた。今から一年半で、彼をそこまでの強さに持っていかなければならない。

 ……どうやって?

 ああ、前世は身分をかさに着てレオのことを何でも鹿にしていたし、俺だけじゃなく周りもそういう貴族だらけだった。だから、レオもはつぷんしていたんだろうな。

 でも、ベルクマン家に仕えてくれることになった、自分より強いレオに、力不足だからもっと強くなれって、どうやって伝えればいいんだ。

 二周目の人生で、俺はめつを防ぐために行動を変えてきた。だが、レオをきたえるのには前世の好戦的な俺の方が役立っていたんだな。

おもしろそうなことをしているではないか」

 ふいに、背後から声がかかった。

「父上……」

 相変わらず、縦も横もでかいくまのような父が、じようげんで立っていた。

「セリムが学園から連れ帰った平民の天才というのがこの男か。うむ、かなりの実力者のようだ」

 父はレオのことを一目で気に入ったらしい。強いやつが好きだからなあ。

「今の戦いは見させてもらった。セリム、この者はお前より強いのではないか?」

 父に問われて、

「はい。俺ではレオにかないません」

 と、俺はあっさりと認めた。何せ前世で長期にわたって悪魔に心を折られてきたのだ。いまさらくやしがる気もなかった。だが、父にはそれが気に食わなかったらしい。

「何とのないなんじやくさ。これが次代のベルクマン公爵だと!?」

 父はおおぎようにショックを受けた様子を見せ、レオに向き直った。

「どうだ? お前、私の養子にならんか? 見ての通り、うちのむすは軟弱であますぎる。公爵家をがせるには不足だと思っていたのだ」

 と、父はレオの肩をポンポンと叩いた。──また急にとつぴようもないことを言い出したな。

 だが、父の意図は分からないでもない。きよくたんな言い方をすれば、領主に必要なのは魔物に勝てる強さだけだ。血統など、家という組織がしっかりしていれば、入れえてもかまわない。だから、俺に気を抜くなとはつをかけたいのだろう。でも、普通の十五の子ども相手に伝わる内容ではないと思うぞ。

 反応に困る俺と異なり、レオはすぐに父の言葉へいかりを向けた。

「……俺は、セリム公子だからこそ、仕えたいと思ったのです。セリム様のことを悪く言うのは、やめていただきたい」

 初対面の公爵──あつ感のかたまりのようなうちの父を、レオは一歩も引かずにらみすえた。

「ほう。おのれの主張を通したいのなら、力を見せるがよい」

「望むところです!」

 二人とも戦う気満々だ。


 父とレオの勝負は、自然災害みたいなものだった。俺との手合わせと全然違う。レオは多分、感情で強さが変わるタイプだ。

 奴らは、城を保護する俺の魔力がかつする寸前まで暴れ回り、勝負が済むと満足げに頷き合っていた。

「決めた。夏休み中、レオを辺境に連れて行く。レオには相当な伸びしろがある。楽しみだ」

 父は大喜びで、翌日にはレオを引き連れて辺境へ魔物退治に行ってしまった。残された俺は領民の治療のため、別行動となった。

 まあ、いいか。治療活動をする俺より、戦いに明け暮れる父といる方がレオの強化になるだろう。


   ◇ ◇ ◇


 夏休みのなかごろ

 辺境へえんせいしていた父たちが城に戻ってきた。

「予定より早いかんですね。何かありましたか?」

 エントランスにむかえに出て、俺が父に問いかけると、

「レオを息子にすることにした。手続きに王都まで行ってくるぞ」

 と、彼は意気ようようと答えた。

「はぁ!? 何でいきなりそんなことになったんですか?」

 驚いて俺は聞き返す。まさか夏休みのはじめに言っていたたわごとを本当に実行する気か!?

「レオが強すぎたんだ。家臣にするだけではいずれ王家に取られる。その前にもっと強い結びつきを作っておく」

「ああ、そういうことですか」

 たしかにレオの実力が広まれば引く手あまたになるだろう。だが、結びつきなら一族のだれかとこんいんとかでも……いや、無理やり結婚相手を決めたらこんが残るか。のレオを養子にする方がいいな。

「安心しろ。公爵家のけいしよう権は持たない養子とする。部下たちにお家そうどうの元を作るなと散々言われたからな」

「そうですか」

 なるほどなあ。最初に聞いたときはびっくりしたけど、けっこう良い手かもしれない。レオが父の養子になれば、大貴族の一員として扱われる。誰よりも強いレオの立場がぼんような貴族より下では、何かとトラブルになりそうだもんな。

「それと、レオの装備も調ととのえるぞ。レオのやつ、王国が支給したそのままの学生服を着ていた」

「何と!」

 俺は驚いて父の横にいたレオを見た。レオ、もしかして、前世でもただの布でできた制服で俺に勝っていたのか!?

「それはいけませんね。南方からシルクリザードの革を取り寄せましょう」

「そうだな」

「後は、くつぶくろも新調した方が良さそうですね。靴の魔法は私が設計します。レオの動きに合わせて、ジャンプ補助、ダッシュ時の力の効率的な推進力へのへんかん……」

 俺がブツブツ言いだすのを、レオはあきれたように見て、

「いや、そんな高価な物はなくても大丈夫で……」

 と言いかけた。だが──。

「安心しろ。レオを最強にする費用をケチるほど、ベルクマン家はこんきゆうしてない」

「そうだ。私が責任を持ってレオを当代最強の戦士に育ててやろう」

 俺も父もレオの強化にきようする気はないのだ。

 やる気満々の俺たち親子を前に、レオはこんわくした様子だった。その彼の肩に、ポンとヴァレリーが手を置いた。

「貴族には人材しゆうしゆうへきやパトロンしゆを持つ方が多いのです。公爵は昔から強い人材を大切になさる方でした。セリム公子は、以前はそうでもありませんでしたが、こうして見るとやはり親子でいらっしゃる」

 ヴァレリーはニコニコしながら頷いていた。

 ──任せろ。レオのことは俺が責任を持って、絶対に前世より強くしてやるんだからな!

 二学期にレオの強さが王家にバレて一波乱が起きることを、このときの俺はまだ知らない。

ドラゴンノベルス5周年記念フェア

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