第七章 次なるミッションへ



「これより、計画に向けて会議を行う」

 ファフニル国のアドイク大臣は国の未来を常にうれえている。

 ここファフニル国ではスキルが重要視されており、アドイクも賛同していた。

 過去の歴史において、国を興して発展させたかげではスキルが大きく関係している。

 古代ていこくバンダルシアのこうていのスキル、軍編制は大陸最強の軍隊を作り上げた。

 そのおかげで大陸せいを成しげていた。

 その部下も例外ではなく、ゆうしゆうなスキルを持つ者がそろっていたという記録も残っている。

 スキルの有用性は太古の昔より認められていた。

ぞくとの会談などというふざけたもよおしはてつていしてぼうがいさせてもらう。みなもそう思うだろう?」

「まったくです。そのために我ら反体制派が集まったのですからね」

 ここに集まっているのは国のじゆうちんの一部だ。

 前王を支持していた軍務関係者や貴族など、いわば真の国造りに必要な人材でもある。

 ただしそんなかれらでも、二度目の異世界しようかんは反対していた。

 その結果、アズゼルによって一度は国がかたむいてしまったのが前王のゆいいつの失策とにんしきしている。

 しかし、だからといって前王がしつきやくする必要はどこにもなかったというのも共通認識だ。

 アドイクは前王の政策を全面的に支持していた。

 前王による魔王とうばつ制度やクソスキル税、これらはめぐり巡って国にかんげんされる。

 下々の者はそこを理解して、馬車馬のように働かなければいけない。

 しっかりと動かして結果を出す。

 それを実行させるのは自分たちであり、上に立つ者のかんとく責任であり責務だ。

 そういった真理を見通していたのが前王であり、アドイクはけんおうとすら呼んでいた。

 そんな前王が今はろうゆうへいされて、歯がゆい思いをしている。

「アドイク大臣、目の上のたんこぶであるあの聖女のむすめはどうされるおつもりでしょう?」

やつかいだな。陛下おかかえのデス・アプローチやドリューハンドも返りちにあっている。加えてあのビリー・エッジすらもげき退たいされてしまった」

「足はついていないでしょうな?」

「問題ない。口はふうじた」

「ほう……?」

 アドイクは先回りして、地下牢にとらわれていたビリー・エッジの皿に毒を盛っていた。

 殺し屋などしょせんは使い捨てで何の問題もないと、いつさいの罪悪感がない。

「信じがたい話だが、聖女に関してはあのアズゼルを討伐している。クリアほうしゆう、調べたところによるとあれは何かの条件を満たせばすさまじいアイテムが手に入るもののようだ」

「あの火宿りのつえを所有しているそうですな。身もふたもないスキルです……そうだ! ならば、あの魔道士協会を利用しては?」

「確かにやつらならば、火宿りの杖のような存在は許しておかんだろう。だが奴らとて一枚岩ではない。みつに行う計画にかかわらせるにはリスクが大きすぎる」

「しかし、ならばどうやってあの聖女を……」

「ううむ……」

 アドイクたちはマテリに対してせいこうほうでは手がつけられないと理解している。

 しかもシルキア女王のお気に入りという点も、やりにくさにはくしやをかけていた。

 聖女マテリは今や国民たちのシンボルとなりつつある。

 つまり現体制をとうかいさせるならば女王だけでなく、聖女をどうにかしなければいけないと彼らは考えていた。

「……ひとつ、提案があります」

「ゲハテールはくしやく、言ってみろ」

「あちら側にはないメリットを提示すればいいのです。いくら力が強くても、しょせんはまだ子ども……どうとでも口車に乗せられますよ」

「さすがはたくみな話術で財を成した貴族なだけはある。一体、どれだけの人間が泣かされてきたのだろうな」

「ハハハッ! アドイク大臣にはかないませぬ」

 その後、ゲハテールが作戦を提示した。

 聖女と祭り上げられているマテリだが、人はいずれきる。

 その中にはマテリに反感を持つ者がいて、彼女の命をねらうかもしれない。

 ここでマテリに対して、狙われる理由がわかるのではないかとおどす。

 仮にそんなものがなくとも、人は危機感を覚えればさいなことでも「もしかしたら」とごういんに思い起こす。

 不安を植えつけた後からスタートで、その上で新体制のらしさを説く。

 このゲハテールの作戦に、アドイクが賛同した。

としごろの少女だ。私のがあれば育ちも顔もいい男などいくらでもあてがえます」

「フフフ、素晴らしいぞ。ゲハテール、作戦の主導はお前に任せる」

「お任せを!」

「では次、魔族との会談だな。これについては短期決戦で妨害する。アンシーン!」

 何を言い出すのかと皆がいぶかしむ中、アドイクの背後に何者かが現れた。

「ここに……」

「な、何もないところから人が!」

「フフ……アンシーンのスキルはとうめい、こいつをやとうのにどれだけ苦労したか……」

 アンシーンの存在で、この場が活気づいた。

 暗殺において彼以上の適任はないと、アドイクは本気で思っている。

 見えざる追跡者アンシーンストーカーにはアドイクも苦労して人脈を辿たどりに辿ってようやくせつしよくできた。

「アンシーン……聞いたことがあるぞ! かつてそいつをおそれて強固な警備をつけてやかたに引きこもった貴族がいたという……」

「アドイク大臣、女王を暗殺するのですな!」

「確かにそれが手っ取り早い! 聖女とかいう小娘はその後でいい!」

 この作戦は必ず成功するとアドイクは確信した。

「機は熟した! では」

「ファイアボァァァァァァルァ!」

「ぎゃぁぁあ─────────!」

 とつぜんばくふうが我々をおそった。

 メンバーの一人が燃え上がってっ飛ぶ。

 全員、ひっくり返って起き上がれずにいた。

「な、なにが起こった!」

「つぇつぇりゃぁぁぁ────!」

「ぎあぁッ!」

「なっ! ま、まさか聖女か! なぜここが……」

 この秘密の会議に参加していた者たちが次々とたおれていく。

 同時に室内も燃え上がり、そうぜんとなった。

 アドイクは混乱したが、計画の前倒しを思いついた。

「ゲハテール! こうしようだ!」

「そうですな、アドイク大臣!」

 ゲハテールが、しんにゆうしやである少女に向き直った。

「少女よ! 取引を」

「うりゃあぁあッ」

「ぐっふぁぁぁッ!」

「ゲハテ────ル!」

 杖のひときで仕留められたゲハテールが倒れた後、少女の目の前にいるのはアドイクだ。

 いくらなんでも話を聞かなすぎると、アドイクはますます混乱するばかりだった。

「ラストォ────……一人ぃ……」

「あ、あの女王に従うのが正しいと思うか! よく考えろ! 聖女などと言われてるがお前は利用されているだけだ! そうだ、アンシーンはどうした……おっとぉ!」

 アドイクが後ずさりした時、何かをんだ。

 姿が見えなくてもそのかんしよくは人間の体だとわかった。つまり透明になっているアンシーンだ。

 アンシーンがすでに倒されていたという事実を知って、アドイクは絶望の底にたたき落とされた。

「ハ、ハハハ……のがしてくれぇ……」

「せいやさぁッ!」

「うぎゅッ……」

 杖によるおうでアドイクがこんとうした。


*  *  *


──────────

ミッション達成! エンチャントカード・魔防10%無視を手に入れた!

効果:敵の魔防を10%無視する。

──────────

「マテリ、どこに行ってた?」

「ミッション」

「そっか」

「私にはわかります。聖女として治安をするため、王都の見回りを行っていたんですね」

 ミリータちゃんはミッションの一言でなつとくしてくれる。

 フィムちゃんは思考停止して、私の聖女活動のいつかんだととらえてくれる。

 ここファフニル国の王都で、私は久しぶりにのんびりと過ごすことにした。

 ただし訳のわからない魔族にいいようにされていたせいで、以前の活気はない。

 少しずつ復興に向かっているけど、閉店したままの店が目立つ。

「ひどいですね……。こんなじようきようでマウさんたち、魔族が受け入れられるでしょうか?」

「無理だろうね。それにマウちゃんたちだって完全に信用できるわけじゃない」

「そ、それならなぜ和平に協力すると引き受けたのですか?」

「そこにつかみたいものがあるから」

 さつりくのカードだけは何としてでもほしい。

 仮にマウちゃんたちが何かたくらんでいたとしても、約束だけは守らせる。

 逆に言えば約束さえ守れば、何かを企んでいてもスルーするかもしれない。

 そんな算段だけど、フィムちゃんは目をかがやかせていた。

「何かとはやはり平和ですね。しようの志は常に高みにあるということですか」

「そろそろフィムちゃんがいろんな意味で心配になってきたよ」

「ボ、ボクに至らないところが!?」

「いや、あのね……」

 フィムちゃんに関してはこのままでいいかな。

 そのノリでも、ついてきてくれるなら色々と助かる。

「あ、師匠! あそこのれきがひどいですね。皆さん、苦労されてますよ」

「そうだね」

 大変だとは思う。

 だけど私は今日、のんびりすると決めて──

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新たなミッションが発生!

・瓦礫のてつきよ作業を手伝う。報酬:ドラゴンボム

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「毎日、おつかれ様です! 私に任せてください!」

「聖女様!? いえ、あなたにこんな作業をさせるわけには」

「任せてくださぁぁいッ!」

「は、はい……」

「ファイアファファイッ!」

 くずれた建物の瓦礫を火の玉でぶっ飛ばす。

 こんなもの、どかすよりこわしたほうが早い。

 へんをミリータちゃんがつちで叩きつぶして、ものの数分とかからなかった。

「聖女様、助かりました! 時間はかかりますが、これでまたここに店を建てられます!」

「あ、うん。それはよかった」

「やはりあなたはこの国における聖女……今は何のお礼もできませんが、いつか必ず!」

「うんうん」

 報酬は?

 いや、この人たちに言ってるんじゃなくてね?

──────────

ミッション達成! ドラゴンボムを手に入れた!

効果:食べるとやみつきになるまぼろしの果実をさいばいできる。

──────────

「あ、よかった。でもあまり見ないタイプの報酬だ」

「ド、ドドドド、ドラゴンボム! 今はもう見られねぇとか言われてる果実だ!」

「へぇ、でも栽培かぁ。どうしようかな?」

「まぁ後で食うべ」

 たまにはこんなのもいいか。

 となりでフィムちゃんがよだれを垂らし始めたけど、お昼にはまだ早い。

 ガン見してくるけどまんしてほしい。

「し、師匠、そろそろ食べごろでは?」

「まだ腹ごなしのミッションがこないからダメ」

「だいぶ運動になったのでは?」

「最近、ステータスが上がったせいなのかな。あまりつかれを感じないんだよね」

「さすが師匠です……じゅるり」

 何をどう話しても最後にはこうなる。

 えた子は無視して歩き続けると、何か人だかりができている。

 事件かなと思ったけど、何のミッションも発生しない。

 これはスルーだなと思ったけど、真っ先に何かをぎつけて行ったのはフィムちゃんだ。

「皆さん、どうされたんですか?」

「王都内でも地方でも、食料不足が問題になっていてな。魔物に畑をらされるし、困ったもんだよ」

「魔族しゆうげきえいきようも?」

「それもある。たまたま王都内に行商にきていた商人や生産者もせいになったからなぁ。これからどうするか……」

 なるほど、それは確かに深刻だ。

 あれ? なんだか私、異様に気分が上がらない。

 こんな時ですらミッションが発生しないとしょせんはごとみたいに思ってる?

 マテリ、いつからそんなはくじような女の子になったの!

 確かにあなたは正義の味方じゃないけど、人並みの心は持っているはず。

 奮い立て!

──────────

新たなミッションが発生!

・食料をめぐんであげる。報酬:ゴールデンポテトの種

──────────

「奮い立ったぁぁぁ! 私は人間!」

「ひっ!」

「皆さん! ドラゴンボムをどうぞ!」

「なんですかそれ!?」

 皆、見たことがない果実にまどっている。

 隣でフィムちゃんがこの世の終わりみたいな顔をしてるけど気にしない。

 後でマウちゃんといつしよにおいしい食事を作るからさ。ミリータちゃんが。

「これ、食えるのか? 赤々としていて、なんだか……」

「でも聖女様がくれたんだから一口……」

 がぶりとかじったおじさんがカッと目を見開く。

 そして夢中になってあっという間に食べつくしてしまった。

「あ、あ、あまうまいっ! なんだこれは!」

「なに? どれどれ……ほわぁぁぁぁ────!」

「だ、だいじようか!」

「一口で感じる甘味の後で襲う酸味の波状攻撃……甘味だけなら甘ったるさが勝って暴力ともとれるが、ぜつみような酸味が加わればそれはハーモニー……。そう、これは合唱団だ!」

「お、おう」

 すごいじようぜつ

 私のじゃおいしいしか言えないと思う。

──────────

ミッション達成! ゴールデンポテトの種を手に入れた!

効果:黄金のような色合いのいも。栄養価満点。

──────────

「また食べ物だ」

「ゴォォォ────ルデンッ!」

「わっ! ビックリした……なに、ミリータちゃん」

「ポテトだ! てよし! 焼いてよし! 何をしても栄養価が失われない満点食材!」

「へぇ……。そうだなぁ」

 食べ物には困ってないし、ここは一つ──

「皆さん、これよかったら栽培してみません?」

「ほぉ、見たことない芋だな」

「それとさっきのドラゴンボムの種も一緒にどうですか?」

「そ、そうか! この芋とドラゴンボム……やってみる価値はあるかもしれん! きたぁ───

──────────!」

 皆のテンションがいつせいに上がった。

 うんうん、わかるよ。

 私もミッションがきたらそうなるからね。

 よかった、これで私がつうの子だと証明された。

 スキル中毒なんていわれのないしようごうがステータスについてしまっているからね。

 だれだって報酬をもらったらうれしいはず。

「マテリ、あの人たちが喜んでるのは食料問題が解決するからだ」

「え? ど、どうしたのかな?」

「いや、なんでもない」

 最近、ミリータちゃんがするどくてこわい。

 後日、ためしに王都内の菜園に植えたら芽が出てきたと聞いた。

 王都内が活気づいて、一気に名物化したのはいい。

 私が恵みをもたらした聖女なんて呼ばれて、より神格化されてしまった。

 きゆうくつに感じるけど、これでミッションが増えるならどんどん神格化しなさい。

 待ってるよ。


*  *  *


「さぁマウちゃん! たんとめしあがれ!」

「ふぉ、ふぉぉぉぉ……」

 いよいよ魔族の王との会談、人間サイドはシルキア女王様と大臣たちとなぜか私たち。

 魔族サイドはマウちゃんとフクロウ伯爵のみ。

 気難しそうな大臣のおじさんたちが終始、険しい表情だ。

 席が一つ空いてるのが気になるけど、病欠かな?

 テーブルにはアドイクと書かれた紙が置かれている。

 それはそれとして、テーブルに並べられたごうな料理の数々はマウちゃんをりようするのに十分だ。

 まさかいきなりけするとは思わなかった。

「……女王。これはいかがなものかと」

「あなたたちもしわだらけの老犬みたいな顔をしてないで食べるのですよ」

「な、なんですと! 聞き捨てなりませんな!」

「すべてのそう理解は食からッ!」

 シルキア女王様がなぞはくで大臣たちをだまらせた。

 意外に効果があったのか、大臣たちはおぎようよくナイフとフォークを使って料理に手をつけ始める。

 かんちがい全開のお花畑女王様だと思ってたけど、この調子で国のトップとしてげんを示しているのかもしれない。

「しかしですな。女王も王都のあのさんじようたりにしているでしょう。国民にしても、魔族を受け入れるはずがありません」

「それはわかってます。ですが私にはどうしてもマウちゃんが悪い魔族とは思えないのです」

「そのこんきよは?」

「見てください。あの食事の仕方……たどたどしくはありますが、確実に人間のマナーを覚えようとしてます。生物の本質は食事に出ますからね」

「は、はぁ……」

 不器用にナイフとフォークをあつかっている姿は確かにけなだ。

 フクロウ伯爵なんか手すらないからどうしようもない。

 ついばむようにして食べてる。

「確かに受け入れられるには時間を要するでしょう。しかしドワーフやエルフと私たち人間は、かつて対立していた歴史もあります。今はこうして共に食事をとっていますが、これも長い時間をかけたからこそです」

「それをここから始めようと?」

「そうです。少しずつ相互理解を深めて、いつか皆にもわかっていただくのです。それにはほうもない時間を要するかもしれません」

「ううむ……」

 大臣たちが今一、納得できてない様子だ。

 これはしょうがない。

 この会談、というか会食だって実現したのが不思議なくらいだ。

 一人、欠席している程度でほぼ全員参加。

 これはすごいことだよ。

 ところで一応、私もいるから何か言わないとダメですか?

 和平交渉がまとまらないと、殺戮のカードがもらえないからね。

「女王様、和平交渉も何もマウちゃんに争う気がない時点で成立したようなものじゃないですか?」

「おいふぃい……おいふぃいいぃ……あふっ……あひゅう……」

「ほら、もうかんらくしてますよ」

「あふあふあふ……」

 大臣たちがし黙る。

 納得できない気持ちはわかるけどね。

 何せ私の報酬がかかっている。

 これ以上、もたつかれるのはストレスだ。

「あそこを見てください。前の王様が送り出した勇者たちの集まり、勇勝隊がいるんですよ。あの人たちがいてもまだ不安なんですか?」

「それは……」

 せっかくここにはあの勇勝隊とかいうのがいる。

 この人たちまで備えて安全性を主張しているのに、じれったい。

「何が我々がいる、だ」

「警備という名目でずっと立ちっぱなしなんだが……」

 なんか不満らしき声が聞こえたけど気のせい。

 その配置を決めたのは私じゃないからね。

「いや、やはり魔族と和平などありえん」

「今は食べ物にられているが、いつほんしようを現すか……」

 ここにきてまだ大臣たちがごね始めた。

 あぁ、もう。

「そ、そうだ! そうなったら誰が」

「とぅりゃあぁッ!」

「うおぉっ!」

 杖をると大臣たちがのけ反った。

 風圧で少ないかみがふわりとれる。

「それはつまり私の聖女としての力を信用していないと?」

「いや、そうは言っておらん」

「はりゃぁぁぁッ!」

「ひぇぇっ!」

 もう一度、杖を振ると大臣の一人があわてて髪を押さえる。

 少し髪全体がずれてる気がした。

「マウちゃんがまた何か企むってことは私の力にくつしていないということ。つまり私の力はその程度だと言ってるんですね?」

「だからそうは言って」

「ファイアボッ!」

「うわぁぁ! 待てぇ!」

 杖の先からほとばしったほのおがまた大臣たちをおびえさせた。

 信用してないなら、ここで信用させるしかない。

 こんなことでグダグダと時間をかけて、私を殺戮のカードから遠ざける。

 何かを決めるのに長々とタラタラと。

 最初は同情していたけど、ここまで長引かせるなら強引に納得してもらうまでだ。

 そのずれてるとうはつごと吹っ飛ばすかもしれない。

「やっぱり信用してないんじゃないですか。それはつまり、私を聖女と認めた女王様への不信であり不敬ですよ」

「そ、そうかも、しれんな」

「そうでしょ? だからここはマウちゃんと仲良し条約を結んでとっとと終わりましょう?」

「ううぅ……」

「そもそもこんなのはシルキア女王様が独断で決めれば終わりなんですよ。わざわざこんな場まで設けたのは、あなたたちをないがしろにしたくなかったからです」

 大臣たちがちんもくする。

 まだ少し不満げな大臣がいたけど、杖を強くにぎりしめたらうつむいて顔をらした。

 そしてなぜか勇勝隊の人たちが白い目で見ている。

 何か思い当たることでもあったのかな?

「で、どうなんです?」

「異論、ない……」

「私もだ」

「あぁ、好きにしてくれ」

「シルキア女王様。大体可決したっぽいです」

 シルキア女王様が微笑ほほえんで答えた。

 料理をほおっているマウちゃんも満足げにうなずく。

「その、なんだ……もぐもぐ。確かに……もぐ……私に対する恐れや……もぐ……不満はあるかもしれない」

「ちゃんと食べてからしやべって」

「少しずつ時間をかけて誤解を解いていくつもりだ。これらの品々を前にしてなおさら、敵対などできるか。こんなもの魔界では絶対にお目にかかれん。オウルークもそう思うだろう?」

「ハッ! しかしこのやわらかい肉……一体何の肉でしょうか?」

 やばい、それはたぶんとりにくだ。

 黙っていよう。ん、でもフクロウって確かヒヨコとか食べるんだっけ?

「では決まりですね。これよりファフニル国はマウちゃんとの和平条約を結びます」

「うむ……もぐもぐ」

 雨降って地固まる、というのかな。

 これで長らく続いていた勇者と魔王問題が片付いたことになる。

 別に国を救ってもミッションじゃなかったら、本当に割に合わない。

 でも今回は殺戮のカードが貰えるだけマシ──

──────────

グランドミッション達成!

ファフニル国とマウとの和平条約を結ばせた!

転移のほうじゆ

効果:一度でも行ったことがある場所に転移する。何度でも使える。

──────────

「あああぁ───あああぁぁぁ!」

「聖女様!?」

 思わずさけんで立ち上がってしまった。

 この手にあるのは誰もが夢見たしゆんかん移動のアイテム!

 グランドミッションってなに!

 なんで事前にミッション告知されなかったの?

「ミリータちゃん。どうも私のスキルにはまだ上があるみたいだよ。ミリータちゃん?」

「てん、い、の、ほー、じゅ……あわわわ……」

「ミリータちゃん! しっかり!」

「お、おめぇ、これ……。どれだけの奴らが、ほつしたと、思って……バタン」

「ミリータちゃ───ん!」

 ショックが大きすぎて気絶しちゃった。

 そもそも見ただけでなんでそこまでわかるのか。

 謎しか深まらないけど、今はかせてあげるべきかな。

「あぁ、やはり聖女様は神に祝福されている……。あのお方は聖女ソアリスの生まれ変わりでしょう」

「じょ、女王! 気を確かに!」

 シルキア女王様は自分の世界に行っちゃってるし、大臣たちは一か所に固まって完全に怯えている。

 もうカオスすぎてどうしようもないけど私はひとまず宝珠にほおずりしてよう。

 すりすりすりすりすりすりすりす────りすり。


*  *  *


「マテリ、なんだって?」

 夜、王宮の私室。

 ミリータちゃんとフィムちゃんを交えて今後の行動指針を話した。

 その内容は会食で明らかになったグランドミッションをふくめたものだ。

 何せこのグランドミッション、ミッションとして事前に通知されなかった。

 そのくせミリータちゃんも卒倒するような激レアアイテムが貰えたんだから、そりゃ考察する。

 で、私の予想としてはたぶんかくしミッションみたいなものだと思う。

「だから、その辺のミッションと違ってさ。国とか、大きなものに影響するミッションだと思う。だけどその通知はない」

「それならアズゼル討伐がグランドミッションにならなかったのはなんでだ?」

「それはわからないけど、それすらもグランドミッションにあたいしない小さなことなんじゃないかな」

「あの魔界最強の一角がなぁ……」

 アズゼルは確かにやばい奴だったけど、私以外にも討伐できる存在がいてもそこまで不思議じゃない。

 ほうっておけばこのファフニル国がほろんでいたかもしれないけど、考えられる事態はそれだけだ。

 この国だけでもブライアスさんや一級ぼうけんしや、勇勝隊だっている。

 他国ともなれば、もっと強い人がいるかもしれない。

 それを裏付けたのがミリータちゃんがもたらした情報だ。

「世界には魔道大国にオラの故郷であるドンチャッカ国……いろんな国がある。それにりんごくの兵力はこのファフニル国をしのぐって聞いたな」

「シルキア女王様から聞いたけど、隣国の王子のスキルはかなり有名みたいだしねぇ」

「あ、そういえばあの女王様のスキルって何だったんだ?」

けいがん。ものをより正確に捉える目だってさ」

「どこがクソスキルなんだ?」

「さぁ?」

 あの王様基準だと、スキル単体でそうできるものじゃないとダメなのかな?

 大切なのはスキルをどう使うかだってのにね。

 クリア報酬だって私じゃなかったら、人によっては自分でアイテムを使わずに売りさばいてかねもうけしていたかもしれない。

 そんなことして力をばらまくメリットがないから、私は絶対にやらないけどね。

「それで次の目的地は隣国エクセイシアか?」

「そうだね。近場からミッションあさりして、いずれはミリータちゃんの故郷にも行きたい」

「ミッション漁りに里帰りかぁ」

「それとフィムちゃんの故郷もね」

「エルフの女王が治める天然の不可侵国……。海をわたる必要があるな」

 侵略をはばみ続けた天然が待ち受ける国も気になる。

 そんな国の中でどんなミッション報酬が?

 考えただけで涎が出てきた。

「あー……今からでもすぐに」

「マテリはいるか?」

「マウちゃん?」

 入ってきたのは魔王ことマウちゃんだ。

 フクロウ伯爵をお供につけて、神妙なお顔をしてらっしゃる。

「今回のことは改めて礼を言う。約束通り、これを受け取ってほしい」

「殺戮のカードォォォ───────!」

「……正直だな。おそらく報酬がなければ、こうはならなかっただろう」

「そうかもしれないね」

 改めて近くで見るとたけこそ小さいものの、しっかりとした眼力が備わっている。

 私をかすように、マウちゃんは視線を動かさない。

「オウルークによれば、お前は欲望のおもむくままに行動して今に至るわけか」

「オウルーク? あぁ、そこのフクロウ伯爵か」

「こやつのスキルは広く深く見通す。さくてきも可能で、対象が辿ってきた過去もな。だからお前にたのんだ。そこにあるのが欲望だったとしても、事態は好転する。そのスキルによってな」

「ある程度はお見通しってわけか」

 フクロウ伯爵、弱い魔族と言っていたけどすごいスキルを持ってらっしゃる。

 だからあの魔王城のめいきゆうもするっとけたし、なんとか隊の接近にも気づいた。

 私のスキルと過去も見通している。

 これがこの国にとって凄まじい力になるかもしれない。

「マテリ、ちようなしで告げる。そのスキルがあれば、世界をどうにかすることも可能だろう。その上で、おのれについてしんけんに考えるがいい」

「はぁ……そういうの苦手なんだけどな」

「この先、そのスキルを知った者がいれば間違いなく利用しようと考えるだろう。近しい者に危害がおよぶかもしれん。その時になれば報酬だの関係なく決断をせまられるかもしれん。それでもお前は欲望を優先させるのか?」

「さぁ? その時になってみないとわからないでしょ」

 私のあっけらかんとしたそくとうにマウちゃんが面食らっている。

 もう少し考えろとでも言いたげだった。

「それを言うなら、マウちゃんだってこの国と和平条約を結んだ。人間だって裏切るかもしれないし、血をみることになるかもしれないよ?」

「それはそうだな。それでも私は父のようにはなりたくない。私のスキル、完全では誰も殺せんからな」

「すごそう」

「魔族、魔王にあるまじきスキルだとののしられた。今回の侵略が最後のチャンスだったのだが、我ながらマヌケよの……」

「ね、おたがい大して先のことなんか考えてないでしょ」

 マウちゃんが笑ってくれた。

 今思えば、フクロウ伯爵のスキルで私を見抜いてから殺戮のカードをえさにして利用すると決めたわけか。

 見事に釣られちゃったけどこうかいはしていない。

 だってそこに報酬があるから。

「殺戮の名をかんして命をうばっても何も残らない。そんな父上を見ていると不安を覚えるのだ。誰もしんらいせず、ただ奪うことのみを考える……。そんな理念で魔界を統一して何になる。残るのは無だ」

「お家事情は知らないけど、好きなように生きればいいんじゃない? 完全治癒なんてスキルなら絶対に重宝されるよ」

「そうだな。奪うより救うほうが気持ちがいい。それをお前に教えられた」

「何一つ教えてないけど」

 奪うより貰ったほうがいい。

 クソスキル扱いされてひどい目にあった身だけど、私は大した目的意識をもって動いてない。

 だってそこにミッションがあるから。

じやしたな。明日は旅立つのだろう?」

「うん。エクセイシアに行くつもり」

「いい報酬があるといいな」

 そう言ってマウちゃんとフクロウ伯爵は部屋を出ていった。

 今思えばあの二人の討伐ミッションが出なかったから、敵対せずに済んだわけか。

 やるじゃん、クリア報酬。

 これからもじゃんじゃんミッションと報酬を頼むよ。

──────────

名前:マテリ

性別:女

LV:52

攻撃:1154+3540

ぼうぎよ:1106+998

魔攻:910+1120

魔防:936+250

速さ:997+70

武器:ほむら宿やどりの杖+4(攻撃+80)

ユグドラシルの杖+4(攻撃+860 魔攻+1120 魔法のりよくが二倍になる) エンチャント・魔族特攻・殺戮

防具:ラダマイトのリトル胸当て+4(防御+600 魔防+80 すべての属性たいせい+70%)

ヒラリボン+3(防御+40 速さ+70)

すごい旅人服+3(防御+3)

アンバックル+1(防御+85 絶対にノックバックしない)

プロテクトリング+3(常にガードフォース状態になる。防御+120)

ごうしんうで+3(攻撃+2600 1レベル×50)

神速のピアス+1(攻撃回数が+2される)

ヒールリング (使うとヒールの効果がある) エンチャント・回復増

聖命のブローチ(のろいを完全に無効化する)

不死鳥のかみかざり+4(防御+150 魔防+170 精神耐性+100% 常にダメージを回復する)

スキル:『クリア報酬』

称号:『捨てられた女子高生』

『スキル中毒』

『物欲の聖女』

『勇者の師匠』

──────────

名前:ミリータ

性別:女

LV:46

攻撃:1624+3770

防御:1555+1040

魔攻:451

魔防:1103+345

速さ:971+110

武器:とうしんの槌+3(攻撃+3770(550+1レベル×70) 速さ+110) エンチャント・マーダー

防具:ラダマイトのドワーフ胸当て+4(防御+720 魔防+100 すべての属性耐性+80%)

バーストバックラー+4(防御+230 魔防+150)

聖命のブローチ(呪いを完全に無効化する)

光の髪飾り+4(防御+90 魔防+95 精神耐性+100%)

りやくだつおうの指輪(あたえたダメージ分、回復する)

スキル:『神の打ち手』

称号 :『

『アイテム中毒』

──────────

名前:フィム

性別:女

LV:101

攻撃:872+390

防御:850+640

魔攻:473

魔防:458+70

速さ:654

武器:アイスソード(攻撃+170 冷気による追加ダメージを与える)

防具:ラダマイトアーマー(防御+610 魔防+70 すべての属性耐性+20%)

オーロラガントレット(防御+30 攻撃+20 すべての属性攻撃が強化される)

勇者のあかし(剣装備時、攻撃+200 攻撃回数+2)

スキル:『全剣技』

称号:『勇者』

『聖女の

『聖女の信者』

ドラゴンノベルス5周年記念フェア

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