プロローグ めざせ憧れの王都だよ


「低級ポーションください」

「こっちもポーションくれ」

 王都に来て初日。薬草を買い、てんで低級ポーションを実演で作製してはんばいした。

 売れ行きはよく、思った以上に大せいきようだった。


 ──こんなに売れるなんて。王都最高。


 しかし露店でポーションを売っているれんきんじゆつは他にいない。

 つうはお店を構えているものらしい。

 他の露店を見てみたけど、転売や中古とかの低級ポーションの品質はどれも私のものより明らかに低かった。ちらっと見て分かるほどだったのだ。

 気が付いてしまった。王都の錬金術師のレベルは、思った以上に低いらしい。

 これは、私がなんとかするしか、ないんじゃ、ないのかな。

 かつやくできるのはうれしいけど、思ったより、これは大変だぞ……。



 今日でハシユリ村ともお別れだ。

 私はずっと憧れだった王都についに旅立つ。相棒はスライムのポムだけだ。

「お兄ちゃん、さようなら、ばいばい」

「おお、達者でな! ミレーユ、ポム」

「きゅきゅぅ」

 ハシユリ村は田舎いなかも田舎、王国の秘境にして、さいおうとも言われる辺境の地。

 両親はずっと以前に他界しており、私とお兄ちゃんはおばあちゃんに育てられた。

 おばあちゃんは村でゆいいつの錬金術師として生計を立てていた。

 そのおばあちゃんも、去年くなった。

 今はお兄ちゃんが家をいで錬金術師をしている。そうなると問題は私だ。村に二人も錬金術師は必要ないのだ。

 お兄ちゃんは許嫁いいなずけがいて、そのうちけつこんしたら、私は完全に用なしだ。


 それならうわさに聞く、女の子ならだれでも憧れる、田舎村では伝説の王都に行ってみたい。

 ということで、私は家を出ることになった。

 相棒のポムはグリーンスライムで大きさは三十センチ。ねんれいは十さい前後だと思われる。

 緑の半とうめいのまんじゅう形で目と口がありしよくしゆばすことができる。

 昔ある日に山で薬草採取をしていたところ、先に薬草の群生地でむしゃむしゃしていたヤツで、そこで仲良くなって私の後をついてきて以来、ずっといつしよにいる。

 なんで私が気に入られたかはよく分からない。

 もちろんポムの大好物は薬草だ。それも貴重なヒール効果の高い薬草が大好きだった。

 別に薬草しか食べないかというと、そんなことはなく野菜も、普通の雑草も食べる。

 その辺のこだわりは、しゃべったりしないので、よく分からない。

「王都楽しみだねー、ポムぅ」

「きゅきゅぅ」

 ハシユリ村のとなりまちへ行く行商さんの荷馬車に一緒に乗せてもらって、村から出ていく。

 ポムはだんからぽんぽんねて、きゅぅきゅぅ鳴くだけだ。

 今はすわっている私のひざの上で、軽く上下するだけで大人しくしている。


 家はびんぼうなので、持ってこれるものには限界があった。

 私は収納のリュックサック一つで、他には薬効が高い薬草のうえばちをいくつもぶら下げて持ってきている。

 収納のリュックサックはいわゆるマジックバッグとも言われるもので、内部の空間が圧縮されていて重量軽減のほうかっているという、見た目の何倍も持ち運べる魔道具の一種だ。

 持ってきた薬草は、この村では別段めずらしくもなんともない薬草だけど、死んだおばあちゃんの話によれば、他の村では珍しいものが多いんだって。

 だから、入手できないかもしれないと思って、なるべく多くの種といくつかの植木鉢を持参したのだ。

 これだけでも、外の世界ではポーションなどに加工して売れば、それなりの値段になるかもしれない。ただ村では草のままだと捨て値もいいところなので、持っていても貧乏にちがいなかった。

 そもそも村の外では、それらの薬草は結構マイナーみたいで、売りに出しても全然売れないらしくて、商人も買っていってくれない。そもそも薬草だと知らず断られた。

 ぎよしやの行商さんとぽつぽつ会話をする。

「貧乏生活とはおさらばするんだもんねー」

「あはは、じようちゃんがんれよ」

「はい」

 行商さんからげきれいをもらう。


 うちは村の中で細々とポーションとか魔道具なんかを作って売ったりして、なんとか生活しているのだ。

 いろいろな商品を作れても、材料をこの村まで運んでくると、輸送費やら何やでかなりの経費がかかってしまうので、錬金術製品の輸出入みたいなこともやっていなかった。

 お兄ちゃんには悪いけど、このせまい村の中で頑張ってもらおう。

 私は世界へ羽ばたいて、王都で錬金術または薬屋をするのだ。

 それはきっと、すごくキラキラした世界ではなやかで、とってもすごいと思うんだ。


 商人さんの荷馬車に同乗して三日目、ようやく町にとうちやくした。初めての町だ。小さいころ両親と来たことがあるらしいけど、おくにはないんだよね。

「ありがとうございました」

「ミレーユちゃん、さようなら。よい旅を」

 お礼を言ってなけなしのお金をはらい、立派なおのぼりさんになって安い宿に一ぱくする。

 そしてそこからは乗合馬車を乗り継いで何日も何日もかかって、やっとのことで、はあ、やっとのことでですよ、王都の目前まで来ることができた。

「すごいよポム、ポム見て、あのかべ、すごい、大きい、高ぁーい」

 私はついはしゃいでしまう。

 だってそこはまぎれもなく王都の壁で、あの中には国で一番大きい町が広がっているはずだから。

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