第一話 焱の妖精





  クイズです♪ クイズです♪

  ギリシャ神話のヘラクレスは十二のなんぎよう

  果たしたことで有名ですが、ではそもそも

  なぜ難行へのちようせんを決めたのでしょうか?

   A☆どもくしたから。

   B☆きらわれ者だったから。

   C☆神様をうらんでたから。



    Ⅰ


「さ──ぁ♪ 答えはどれだと思いますかしら♪ ツバメさん、ヒビナさん?」

 少女Aのびかけ──通りに面したカフェ。

 同席=少女B+C──はんのうなし。

「はー……ちよう良い天気。超ばっくれてー」

 少女B=ツバメ──せんれつ蒼い眼スカイ・ブルーえいかく的ツインテール/すらりとしたあし/青いスカート/ニーソックス/エナメルぐつぎようわるく足を組み、春の青空をあおぐ〝理由無きはんこうたいせい

 そのれんくちびるに、ぼうき球体=ロリポップをワイルドにくわえ、ガリガリかじる。

「…………」

 少女C=ヒビナ──あわ琥珀の目アンバー・ライト/金色のショートヘア/黄のリボンタイ/細い脚/芥子からし色のスカート/ストッキング/エナメル靴。小さなかたをすくめてへいちゆう──ヘッドホン&こしきゆうしきアイポッド=リヒャルト・シュトラウス作曲『悪ふざけ野郎テイル・オイレンシユピーゲル』=大音量。

《あ・な・た・た・ち》

 少女A=から無線通信ウイスパーへ──はんがん/手が腰に。

 ゴトリと音を立て、九ミリけんじゆうがテーブル上にしゆつげん

のうミソぶちまけたいですかしら?》

「Bっす」「Cです」

 ツバメヒビナ──そくとうちゆうただよっていた目が回れ右して少女Aへ。

「よろしい」

 少女Aのしようやさしげ/拳銃はほうのようにいつしゆんで腰ポシェットにしゆうのう

「……なんかアゲハのやつマジでスイッチ入れてね?」ツバメ──あきれ顔/ヒビナにひそひそと。

けいさつんだ方が良いかもぉ」ヒビナ──真顔/ヘッドホンを外さずどくしんじゆつで会話。

「お二人とも。今日は特別な日なのですわ。しゃんとなさい」

 少女A=アゲハ──気品に満ちた深紫の瞳デイープ・パープル=左目にザックリ走ったかいぞくきず

 つやめくロングヘア×ウェーブ/ふんわりそでのシャツ/むらさきのリボンベルト/紫のピンストライプのタイ/長い脚/上品なタイツ/黒靴=すべて小隊のせいふく

「お待たせいたしました」

 わかいウェイター──運んできた飲み物をテーブルへ。

 アゲハ=アールグレイ。「タバスコをいただけますかしら?」

 ツバメ=ホットココア。「オレ、とう足んない。砂糖もっとちょーだい」

 ヒビナ=レモンソーダ。「ボク、レモンしい。十くらい欲しい」

 されておうじるウェイター=各調味料をうんぱん──三人の手がばやびる。

「ちょっと乙さんたら、入れすぎですわ」

 鳳──こうちやり注がれるタバスコ。

「鳳にだきゃぁ言われたくねーっす」

 乙──シュガースティック6g×8=同時投入。

「……………」

 雛──ミニカップ入りレモンじる×12をかいふう/投入/開封/投入。

 たじろぐウェイターを完全──ぼうじやくじんにカップを持つ三人。

 鳳=ごくからとう。赤い油がいたきようあくえきたいを上品に一口/可憐に微笑。

「ああ、体が温まりますこと」

 乙=ごくあまとう。ココア:砂糖=ほぼ1:1/ゲル化げんしよう/生コンクリートそっくり。ロリポップをくわえたまま、ココア味のするドロドロの砂糖をシャーベットのようにせつしゆ

 雛=さんとうちようめんくちびる中央にくわえたストロー/歯がけて無くなってしまいそうなたんさん風味のレモン汁を、吸入チユー嚥下ゴクリ吸入チユー嚥下ゴクリひようじよう──ぼうきよう

「うぷっ」よろめくウェイター──退たいさん

「てか、クイズの答えはどれよ?」

 乙──ロリポップを齧りながら。

「あら、気になりますの?」

 鳳──やたらとうれしそうな顔。

「気にしないもん」雛──レモン汁のからようでピラミッドけんせつかんりよう。「だってCだから」

「そ・れ・は♪」

 ぱちりとケースのふためる鳳。

妖精スプライトたちへ》

 ふいに副官からの声なき無線通信ウイスパー

 三人のがつこつしよくされた通信器=だれにも聞こえない電子のささやきウイスパー

《第二たいせいこう。先取こうせいによるようげきじゆん!》

りようかい、ニナさん。ただちに要撃準備を整えますわ》

 鳳のおうとう──起立/二人を見る/き浮きと。

「と・いうわけで♪ お仕事が終わりましたら、お教えいたしますわね♪」

「だりー」「Cだもん」

 乙+雛──起立。

「さ、お二人とも、いらっしゃい。あたくしが、おまじないをして差し上げますわ」


 ミリオポリス第二十三区リーズイング──通りをはさんだカフェの向かい。

 真新しい教会=アウグスティヌス参事会──その一階、司祭室。

「無理な相談だ、ニナ」

 初老の男──司祭服/見事なはくはつはい色の目/深いしわげんとうつ老オークのぜいるぎなく/動じない。

「知っての通り、この街ミリオポリスには十八のしゆうきよう、四十二の宗派がこんざいしている。たがいのかいが争いをばぬよう、代表者をまねき、会合を開く。それをがカトリック教会がしゆさいするときにかぎって中止するわけにはいかない」

「平和的な対話それ自体をにくむ者がいるのも事実です、トマス・バロウ神父様。そうした者たちがカトリック教会の主催日をねらってしゆうげきを計画したじようほうがあるということも」

 女──じゆんぱくのスーツ/短いくろかみしつこくこつかんの夜のようにこうしつえ冴えとしたはだりんとしたぼう──トルコけい

「会合の全員がと戦っている。退しりぞけない理由を数えればきりがない」

「しかしてきゆるす理由にはなりません。特に、かつて兵器開発局のじゆつもんだった、あなたを赦す理由には……バロウ神父様」

「私はいつかいの神父にぎないよ、ニナ。心配せずとも警察が二十人けいにあたってくれている。それとも君の狙いは、私にMSSの出動をようせいさせることかね?」

「そのようなたいおちいらぬよう、ここのけいかんが本来の役目をまつとうすることをいのります」

「皮肉はよしたまえ。君も彼らも治安を守る者同士だ」

 バロウ神父──まどへ/向かいのカフェを見る──いき

を配置するとは……。君の上官であるヘルガはを好機に変える名人だ」

 ニナ──無言/ひようぞうのように直立不動。

 バロウ神父は戸口へ──りん。「冬真トウマ

 黒い学童服の少年が入ってくる──やわらかな金髪/白いほおあおひとみ/まだ立ち上がったばかりの鹿じかの風情。

「お呼びでしょうか?」

「あのカフェにいる三人のおじようさん方と、こちらのニナを、客間にまねいて、カフェをってしい」

「はい、神父様」少年の退たいしゆつ──小走り。

 ニナが一歩前へ──氷のように凜として。

われわれMSSの情報が信じられませんか?」

「いいや。君たちは情報のエキスパートだ。そして私はこの会合を、君たち公安局のせいみ台にさせるわけにはいかない。重要な情報は警察に。私は会合に出ねばならない」

「私も同席させていただけますか?」

「それはこまる。みな君に心をうばわれ、誰も私の話を聞かなくなってしまうからね」

 バロウ神父のしよう──やんわりと。

 無表情のニナ──冷たいつるぎのように美しいおもち。

「冬真のれるカフェはい。君も味わってから帰るといい」

 ろうを歩み去るバロウ神父──ものごしやわらか/たいは大らか/それでいて説得にたおれない根深い何か。

 見送るニナ──黒ダイヤのような眸=硬質な──その手にけいたい電話。

この国オーストリアしゆうきようしやは、もはや政治家以上に政治的です……神父様」

 低いつぶやきとともに電話のきんきゆう回線をオンに──指令=切るようなするどさ。

妖精スプライトたちへ。第二態勢へ移行。先取攻勢による要撃準備!」


「いない」少年──冬真=困った顔。

 通りの向こうのカフェ──無人のテーブル。

 ゴミの山=空のタバスコびんとうぶくろ・レモンじるよう──入れちがい。

「どういうお客様なんだろう」

 首をかしげながら教会へもどる──げんかんの横手に三人の警官たち。

 大声でだんしよう──全員の手に煙草たばこ

 そちらへ歩みる冬真。

「ここはきんえんです。きつえんじよ以外でのお煙草はおひかえ下さい」

 警官たちのちんもく──にわかにばくしよう

「そいつはどこの宗教用語ですかね、教会のお使いさんよ」「聞いた感じじゃ日本語ヤバニシエのようだぜ」「オーストリア流のドイツ語じゃないのはたしかだな」

 たじろぐ冬真──かっと頰がこうちようする/なけなしのいかりをめて。

しゆうによっては喫煙を禁じている方もおりますので」

しゆうえするよう言ってやんな」

 警官の一人が冬真に顔を近づけ、いきなりけむりきかけた。

 目・鼻にきようれつげき──おどろきとくつじよくに思わず後ずさる。

「な、何をするんですか……!」

 さらにせまってくる警官──わった目/へいげい/ドスのいたじんもん口調──ぼうりよくふうあつ

「おい、お前らが誰に守ってもらってるか言ってみろ」

 冬真──ぜつ/立ちすくむ。

おれたちだ。ここは俺たちのかんかつだ。ぼうさんの見習いになめた説教をされるすじいがどこにあるってんだ?」

「一本めぐんでやるから帰んな、さん」

 別の警官が火のついたがらを指ではじく──冬真のむなもとに当たって火花が舞った。

 あわてて顔をそむけたたんようしやのない笑い声が起こった。

 こんぼうのように心をたたひびき──落ちた吸い殻を見つめたまま動けなくなる冬真。

 ふいに小さなくろぐつあらわれ、吸い殻を踏んで火を消した。

「下品でしゆうあくにおいですこと」

 笑いが急停止──はんしや的に目を上げる冬真。

 うでを組んで立つ、一人の少女。

 深紫の瞳デイープ・パープル──左目のかいぞくきずようはくりよく──微笑ほほえみ=しんから上品に。

「ダイオキシンなど二百種類以上の有害ぶつしつをふくむ煙草の煙は、喫煙しない第三者に最も強くがいおよぼします。すなわちふくりゆうえんによる受動喫煙」

 ぽかんとなる冬真+警官たち。

 少女が続ける──かんぺきなオーストリア流ドイツ語発音。

「煙草はあらゆるクレプス肺気腫ルンゲンアウフブルング気管支炎ブロンヒテイスぜんそくアスマ胃潰瘍マーゲンゲシユヴアール心筋梗塞ヘルツインフアルクト脳卒中ゲヒルンシユラク脳出血ゲヒルンブルートウング糖尿病ツツカークランクハイト口臭ムントゲリユーヒ難産アイネゲブーアトシユヴエレカリエスクノツヘンフラースなど多くのびようえきをもたらし、また七百度にもなるその火は全世界の火事のげんいんのトップ。万一この文化せつさいを起こせば、がいがくはあなたの一生が十回あっても足りませんわ」

 いつぱくの間──少女がけいかんたちをわたす。

「ドイツ語は通じますかしら。うすぎたない警察用語を使わなければなりませんの?」

 冬真にせまっていた警官──を込めて少女に近づく。

「それくらいにしておきな」

 半歩下がる少女──鼻に手を当てながら。

「なんてこうしゆう。もう少しはなれて下さいませんこと?」

 目をく警官──意にかいさぬ少女=冬真へ微笑みかける。

「あなた、もしかしてカフェで、あたくしたちをさがしていらっしゃった?」

「あの、ぼく……」

 返答につまる冬真──身を乗り出す警官。

「このガキ──」

 そのとき、けたたましい音が二人の声をき消した。

 車のブレーキ音──タイヤのさつおんふくすう

 ふいに少女の身がしずんだ。

 ひるがえるスカート──長いあしとつぷうのように警官のひざった。

 ものの見事にてんとうする警官──ぎょっとなる冬真。

 通りに急停止した三台のバン=そのまどからき出される、いくつもの自動しようじゆう

 せんこうごうおん──立て続け。

 だんがんの飛来──警官の上半身があった空間──教会のかべに、よこなぐりのだんこん×6。

 ふんじん/火花/鉄がげるもうれつしゆう──辺りが明るむ/目がくらむ/空気がふるえる。

 ほんのいつしゆんの間に、世界のすべてがえられる。

「なにが──」

 起こったか分からぬ冬真の胸ぐらを、少女の手がつかんだ。

 そのまま引きたおされる──信じがたいあくりよくわんりよく

 すぐそばを空気をいて何かが通りぎる──きようが後から来る。

 少女とともに教会の玄関へすべり込まされる──びん退たい

「あっ……」

 吸い殻をほうった警官──ぼうぜん──被弾=むねはら・脚。

 けむりい、衣服が弾丸の熱でえ、声もなく倒れた。

「こちらへ、早く!」

 少女のさけび──もう一人の警官が玄関へ転がり込む。

 少女に蹴られた警官が必死に地面をう──ぜつきよう/金切り声。

「テ、テ、テロだぁ──っ!」


    Ⅱ


 ミリオポリス第二十二区ドナウシユタツト──未来的けんちくぶつむれ〈UNO-CITY〉=国連都市。

 そのちゆうかくたる国連ビル──十階フロア。

 パーティ──二千五年にノーベル平和賞を受賞した国際原子力機関IAEAこんしんかい

 二千十六年げんざいしゆがん。「核の平和利用、核兵器のかくさん、石油使用とさんたんぞう=ハリケーン発生=全地球の災害」

 どれも石油輸出国機構OPECには目の上のこぶ。

「相変わらずウィーン州は社会党のじようだ。次の選挙では何としても切りくずさねばならんぞ、エゴン局長」

 男──きよかんかくりようのバッジ/さんぱくがん/むくんだほおあつい手にグラス=はちみつ色のブランデー──人相の悪いヒグマのあつ感。

「閣下の国民党とともにドイツけい住民の票をねらえばのうかと。ゴットフリートない大臣」

 男──そう/黒ずくめのスーツ/細長い指にグラス=血のような赤ワイン。眼鏡めがねおくで光るしんけいびん気味の目=どうもうせい・静かなきようぼうせい──人間大の黒いカマキリのふん

「特に、こと治安に関しては、この街がまだウィーンとばれていたころからが未来党にじつせきがありますからな」

「あら、それはどのような実績ですのエゴン局長どの?」

 歩み来る女性──ゆうな足取り/愛くるしい小顔/アップにしたきんぱつ/ぱっちりとした目=あい色のこうさいがらだがバラの花のようなそんざい感。

 えりぐり深く、なかが大きく開いたしゆ色のドレス/かたったストールではだかくす──ほっそりした手にグラス=ほうせきのようなピンクのシェリー酒。

 向き直るエゴン局長=きびきびと。

「我が〈憲法擁護テロ対策局BVT〉のていひようあるさいてき部隊配置によって、多数のな警官をリストラした実績だよ、MSS長官ヘルガくん」

 女性=ヘルガ──あいきようをふくんだゆうしゆうの目。

「リストラという名の人種差別でゆうしゆうな人材を多数失いましたわ。トルコ系やスロヴェニア系であるというだけでしよくを追われた彼らは、なおもほこりを失わず、多くがとくしゆ部隊にさいようされ、治安にこうけんしています」

「いやいやいや、決して人種差別ではない。けいようさくげんは首相もさんどうしている」

 ゴットフリート内務大臣──きよたいをそわそわさせて周囲を見る。

 パーティには各国の大使が多数列席=人種差別的発言はそくに世界的ニュースと化す。

 エゴン局長──しかし周囲を意にかいさず。

「やつらは最適な部隊に適合しない連中だった。それ以外に理由はない」

 ヘルガ=つつましげな花のように。

「ドイツ系住民が集中するいきばかり警備を強化し、他民族系の地域にはぼうどうちんあつ部隊やじようほう機関を配置……まるで外国人はすべて、暴動やテロを起こす可能性があるとでも言うようですのね」

「その可能性はていできない」

 あっさりだんげんするエゴン局長──ぎょっとなるゴットフリート。

「あら、未来党のドイツ民族じよう主義を、国連ビルでおおやけに発言なさるの?」

「自国の治安は自国人によってのみ行われるべきだ。外国人の警官などぞっとする」

「外国人ははいせきすべきとおっしゃる?」

 愛らしく首をかしげるヘルガ──こわだかに。周囲の客がまゆをひそめてり返る。

「ややや、むろんが国もEUにしたがい二重こくせきみとめているとも」

 ゴットフリートがあわててフォロー/エゴンをにらむ。

 しぶしぶろんへんこうするエゴン。

「君がしゆちようする全域警備思想などゆめのまた夢だ。都市の全てを守れるだけの予算を要求すれば、他局をあつぱくし、軍国主義的だというはんにあう」

 ヘルガ──その言葉を待っていたかのようなしよう

「予算は今のままで十分ですわ。われわれ信条モツトーは要撃──すなわち待ちせ。すぐれた情報しゆうしゆうりよくてきこうげきポイントを事前につかみ、人員を配置。相手がじゆうを上げると同時に、あつとう的火力と機動力でせいあつ。それが都市治安におけるさいぜんせんりやくです」

 エゴン=かいそうに。

「だがけんぺいや特殊部隊がいる。なぜ君ら〈公安高機動隊MSS〉なのだ」

 ヘルガ=残念そうに。

「彼らは全域警備思想についずいできません。〈猟兵ヤクト・コマンド〉はふんそう地帯にけん、〈特殊憲兵部隊コブラ・ユニツト〉は空港や国連ビルの警備、また〈ミリオポリス憲兵大隊MPB〉は日々ぞうするきようあくはんざいたいしよいつぱい……」

「だが問題がある。……聞けば、君の部隊の副官はトルコけいだそうだな」

 ぎくっとなるゴットフリート。「エ、エゴン局長……!」

 ヘルガ──平然と。

「それが何か?」

「人種を問わない部隊へんせいなどばくだんと同じだ。治安はによってたもつべきだ」

じゆんすいしき? それはきよだいわざわいをもたらした、のようにかしら?」

 エゴン──にぎこぶしかんぜんと振り上げて。

「我ら未来党はナチスを否定しない。ヒトラーは歴史上ただ一人、ドイツとオーストリアのとういつをなしとげた」

 ゴットフリート──せんりつけいれんする顔。

「ややや、やめんか局長! ユユ、ユダヤ系のほんも多数列席しているのだぞ! こくさい問題を起こす気か!」

 向き直るエゴン──にわかにどうかつ口調になって。

「この国の多数のドイツ民族は、我が未来党のしやなのですぞ、ない大臣かつ。だからこそ、あなたがた国民党は、我々と連立し、せいけんかくとくした──」

 にわかに着信音──エゴンの声をさえぎる。

 ヘルガがけいたい電話を取り出す。「失礼」

 だまるエゴン──ほっとするゴットフリート。「パーティ中にすいだな、ヘルガくん。マナーモードにしておきたまえ」

ことですが、治安をつかさどる者が、万一にもれんらくしようをきたすことはけるべきかと、ゴットフリート内務大臣閣下」

 携帯電話を耳に当てるヘルガ。

「私よ、ニナ……ええ、情報通りね」

 新たな着信音──BVT局長エゴンのふところ

 さらに着信音──内務大臣ゴットフリート。

 フロア中で着信音──警察本部長/国連ビル治安たんとう/各党党員/各国大使。

 しやりのような音──きつおんきよう/ざわつくフロア。

 みなぜんと顔を見合わせ、しめし合わせたように、いつせいに慌てて電話に出た。

 ゴットフリート──電話に出るなり顔面そうはくに/巨体がはじけんばかりのろうばい

「し、し、しゆうきよう連絡会議にしゆうげきだと⁉」

 ヘルガ──とつぜんの連絡に慌てふためく国家公務員たちをゆうぜんわたしながら。

「MSSがつかんでいたじようほう通りですわ。もしこれだけの列席者がいる最中に、宗教的要人ががいを受けたとなれば、国際問題にもなりかねません」

「た……たたた、ただちに〈特殊憲兵部隊コブラ・ユニツト〉に守らせろエゴン局長!」

 ゴットフリートが口のはしあわきながら指令。だが、携帯電話を耳に当てたまま歯をきしらせるエゴン──ヘルガをにらみながら、かぶりを振る。

「間に合いません……」

 ぼうぜんとなるゴットフリート──ヘルガ=ささやき。

けい担当はぼうどうちんあつ用のそうしかない警官たち。しかもげんけんぺい大隊の本部から最も遠い地区。ですが……MSSの人員でしたらすでに配置みですわ」

「そ、そ、その者たちに、だいきゆう、要人を命じろ!」

「内務大臣! BVTのかんかつですぞ!」いかりで青くなるエゴン。

「死者が出れば私の首が飛ぶ‼」

 ゴットフリートのぜつきよう──おびえたヒグマのえ声。

 エゴンのぜつ──り上げたうでの下ろしどころを失くしたカマキリの怒り。

「情報だけを持ち、それをじようそうへ報告するすべも、どくたいこうするすべもなく、かごの中の鳥のようだった私どもMSSの苦しみがかいいただけましたかしら、エゴン局長?」

 ヘルガのしよう──気品にあふれて/携帯電話へゴーサイン。

「ニナ、きよが出たわ」

 おうとう──するどく。《では要撃を開始します》

暖気運転中ウオーミングアツプといったところね。通話はけいぞくして。本当の要撃サプライズはこれからよ、ニナ」


    Ⅲ


 じゆうげき──あらしのごとく。

 教会げんかんぐち──いしだたみ・教会のかべに火の雨/通行人たちの悲鳴──広がるパニック。

 車両からりて散開する者たち=完全そう+スキーマスク。

「ひっ、ひいっ」

 警官二名──玄関のかべぎわちぢこまり、手だけき出しはつぽう=でたらめ。

「それじゃ当たりませんわ、おどきになって」

 少女が前へ──手に九ミリけんじゆうひざち/ばやく壁から半身を出す。

 撃つタタン!撃つタタン!撃つタタン!──せいかくな二点れんしや×3。

 三台のバンで悲鳴/銃撃停止──啞然となる冬真+警官たち。

「あの方を助けます!」

 たれてたおれている警官──おのれの血の池の中で弱々しく身じろいでいる/ぜつぼう的な姿すがた

 冬真が思わず口に出す。「あんなやつ──」

しようしやそんざいしません!」

 少女──だん/言うそばから飛び出す。

えんを!」

 低く低く身を低めしつそう──敵が銃撃をさいかい/少女が走りける火線の下・飛びじゆうだんはざ──しんぞうこおりつきそうな光景/見守ることさえおそろしいけ。

 あわてて撃ちまくる警官たち──いつしゆんで命をうばう火のおうしゆうのさなか、少女が負傷者の元に辿たどり着く=そのあしもとで火花。

 少女が倒れた警官のえりをつかむ/引きずる/後ろ向きにもどってくる。

 石畳に警官の血のあとびる──もはやびんげることさえ出来ぬじようきよう──そのがらな身からは信じがたいわんりよくゆうだい

 一方の手に拳銃──精確な応射/の中を帰ってくる/一歩・また一歩。

 ただ呆然と見守ることしか出来ない冬真のしんぞうをわしづかみにするきよう──そして得体の知れないこうよう

 そしてかん=生還。

 少女の手で玄関に引っまれた負傷者──か細い息/せいぞん/警官たちのかんせい

 美しく引きまった少女のおもて──息をんで見つめる冬真。

「応急しよを!」

 少女の声にしたがう警官たち。はっとなる冬真=やっと体が動く──思わず手伝う。

 きずぐちさえる/しばる/手に温かな血──命。

 戸口でがまえる少女──銃のだんそうこうかんする、血にれた手。

 冬真の心を打つ、ひどくとうとい姿。

「君は、いったい……」冬真=おずおずと。

 にこっとしようする少女。

「〈公安高機動隊MSS〉要撃小隊しよぞく──鳳・エウリディーチェ・アウスト」

 れん──深紫の瞳デイープ・パープルおくおどる、はげしい光。

 そののう無線通信ウイスパー=ニナの号令。

妖精スプライトたちへ! 〈紫火アメテユスト〉、〈青火ザーフイア〉、〈黄火トパス〉、そういん、要撃開始! てきせいりよくりゆうし、必要に応じてげんけいじんれんけいしろ!》

!》

 鳳=ばやく銃を構えて。

《さ──ぁ、乙さん、雛さん! お仕事ですわよ!》


 教会うら──れいはいどう

 同じく三台のバンがさつとう──銃撃=警官たちのしようとうそうぜつきよう

 バンからりるそうはんたち──自動小銃を構えて裏口へ。

 その頭上から、にわかに高らかな笑い声。

「あっはは! ドキドキするぅーっ!」

 ひさしから飛び降りる少女=ツバメ──ワイルドに口にくわえたロリポップ。

 全体重をかけたりが、先頭の武装犯の顔面を直撃──もんぜつてんとう

 とつに何人かが撃つ/みだれ交う弾丸/地面を蹴る乙──ちゆうう。

 いつしゆんで武装犯たちのはいに降り立ち、すらりとしたあしもうぜんり上げる。

「もっとドキドキさせてよ‼」

 蹴り=ハンマーのごとく振るわれる黒いエナメルぐつ/可憐なかかと/ひるがえるスカート/ちらりとのぞく水色の下着──とてつもない打撃。

 武装犯たちのがい──がいこつこつろつこつじようわんこつだいたいこつ

 だつきゆうかんぼつふくざつ骨折/ふんさい骨折/れつ骨折──せんとうのう




 教会横手──サイドチャペル側。

 停車中の二台のバンから多数の武装犯たちがあらわれ、いつせいに銃撃。

 警官たちを蹴散らし、教会へ殺到──一人がワイヤーに足を取られる。

 セロテープであまどいに固定されたしゆりゆうだん=安全ピンが外れる。

 トラップ=てつついのごときばくえん──悲鳴とともにき飛ばされる武装犯。

「なんだ⁉」

「いじめないで! いじめないで!」

 いきなり少女の泣き声=ヒビナ──側柱のかげ

 両耳にヘッドホン/右手にけいたい電話&左手に手榴弾──一方をとうてき

「ボクをいじめないでぇーっ!」

 音を立てねる手榴弾──武装犯たちのパニック。

 爆発──数名が宙を舞った。

 倒れた者がワイヤーを引っ張る=はいすいこうせつされた対人らいさくれつ

 飛び散るてつへん──引きかれる人体。

 だいこんらん──まどかべ・道路・水路・いしだたみ=十分足らずで二十か所あまりという不必要なまでの数のトラップを設置。

 自分がいる場所はぜつたい安全というげいじゆつ的計算──るい完結少女の泣き声。

「ボクをいじめないでよぉ!」

「動くな! 手にした物を置け!」武装犯の一人が雛にじゆうを向けてる。

「いつもみんな、なんでそんなことしたのってボクにくよね」

 大音量のヘッドホン=相手の言葉など聞いちゃいないばくだんしゆちよう

 その手が、携帯電話のボタンを素早くそう

 いつしゆん発信パルス──停車中のバンにけたプラスチック爆薬が炸裂。

 爆風でなぎたおされる全武装犯たち──雛に銃を向けていた武装犯もこんとう

 え上がるバン/いつぱん車両/がいじゆ

 火炎の海を見つめる雛の琥珀の目アンバー・ライト

「だって……だって夕焼け空にてたからだもん」


 教会内──ろうを走るニナ。

 右手に銃/左手に携帯電話──公会堂のドアを蹴り開く/銃をき出す/さけぶ。

「バロウ神父様!」

 一か所に身をせているしゆうきようしやたち──キリスト教・ユダヤ教・イスラム教・拝火教・ヒンドゥー教・マニ教・ぶつきようしんとう・各教派のどうしやたち/キリスト教だけで十数派。

 その一人=バロウ神父。「よせ、つな!」

 ニナへの叫びではない。

 カチリとげきてつを上げる音──低いがよく通る声。「銃をあしもとへ」

 ニナ──冷静に動きを止める/ゆっくりと銃をゆかに置く/するどつぶやく。

「やはり、会合の一員が主犯か──」

 男──頭にターバン/浅黒いはだ/野生のわしのようなげんきよくげんまでまされ、りつめた顔・仕草・気配──銃をかまえたまま、ニナの銃のこくいんいちべつする。

「MSS……ミリオポリス公安高機動隊ズイヒヤーハイツシユツツか」

 ニナ=男を真っぐ見返す/冷ややかに。

「シェネル・シェン──表向きはモスク指導者。裏の顔はげきしきジェマー・イスラミアのけいぐ〈戦闘部隊トイフア・ムカテイラ〉のかん

 シェネル=何のひようじようかべぬもうきんの目。

「MSSはつねじようほうりよくすぐれ、実行力に不足し、皮肉にけている。トルコの美徳をわすれてらくした女をつかわすとは……お前のような女のそんざい自体が、アツラーこくへのじよくだ」

 ニナ──無言/鋭くてついたいかり。

 宗教者の一人が前へ出る──同じイスラムの老指導者イマームなげき。

「よせシェネル……ここは宗教間の対立を取りのぞくことが出来る、大切な対話の場なのだぞ。それをこのようなさんげきを起こしては、おうべいの戦争しゆしやたちの思うつぼではないか。われわれは二度とアラブに戦火をもたらしてはならないと……」

「我々はお前たちのたわごとを宗教とはみとめない。お前たちがもたらすのは堕落ときようだけだ」

 シェネル──銃口を老指導者イマームへ。

「戦火は、すでにもたらされている。世界中で。これはその一つにぎない」

 ニナの叫び。「撃つなら私を撃て!」

 戸口から飛び出すがらかげ──鳳=ばやくシェネルに銃のねらいをつける。

「銃をおてなさい!」

 シェネルが鳳をり返る──せつ、窓をり開いて飛び込むしつぷう──乙。

「ドキドキしてきたーっ!」

 乙の足がシェネルのむねへ──しようげき/蹴り飛ばす/手から銃がはなれる/床をすべる。

 着地──すぐさま次の蹴りを入れかけた乙が、たたらをむ。

 その場の全員が息をむ。

「もとより生き長らえる気はない」

 シェネル──ひざ立ち/服のむなもとを開く──どうかれた爆弾の束。

 さらにそのターバンがほどけ、床に落ちた。

 うっ──といううめき/悲鳴/おぞける声。

 まゆ一つ動かさないニナ・鳳・乙。

 バロウ神父──せんりつ。「何ということを……」

 シェネルの頭──無毛/ひたいの後ろ・耳の後ろ・後頭部・だいのう全体が、えぐられたようにぽっかりと消失=人工きずおおっている。

「ここにいる私はえんかく操作で動くなきがらに過ぎない。たましいは、やどるべきうつわうちにある」

 脳のない人間=シェネルが宙をあおぐ。

 その口からろうろうと放たれるいのり──コーラン。


「|慈悲あまねく慈悲深きアッラーの御名において《ビスミツラーヒル・ラハマーニル・ラヒーム》

  万有の主アッラーにこそ全ての称讃あれアルハムドウ・リツラーヒ・アーラミーン

  慈悲あまねく慈愛深き御方アツラハマーニル・ラヒーム

  最後の審判の主宰者マーリキ・ヤウミツデイーン

  私たちはあなたにのみ仕えイイヤーカ・ナアブドウ・ワ

  あなたにのみ御助けを請うイイヤーカ・ナスタイーン

  私たちを正しい道に導きたまえイヒデイナツスイラータル・ムスタキーム


 シェネルの手がこしへ──祈るように/爆薬のスイッチ。

 ニナの号令。「やれ、鳳!」

 銃撃タタン!──せいかくな二点れんしや=シェネルの口とのどぶえに命中。

 えんずいかい/動作停止──祈りがえる/からたおれる。

 鳳の無線通信。《雛さん!》

 雛が戸口からあらわれ、たたっとシェネルの亡骸に走りる。

「こんなのかんたんだもん」ぞうにコードを千切る──シェネルの爆薬をかいじよ

「う、った……?」

 戸口で声──冬真。おびえた目で鳳を見つめる。

「こ、殺したの……。き、君が……」

 り返る鳳──ぜんと。

「ええ、そうですわ」

 冬真──ぜつ

 ニナ──氷のような冷静さ。

「私が命じた。彼女にせきにんはない。ようしやのないいちげきをもってさんげきよくするのが、我々の仕事だ」

「彼の死は私たちにとってすでに惨劇だ……ニナ」

 バロウ神父──深いしわ/亡骸を見つめて。

「おお、シェネル……なぜだ。おお……」

 ひざまずく老指導者イマーム──こぼれ落ちるなみだ/血まみれのシェネルの顔をでる。

「我々にとって、たいはいまだ進行中です。あの男がてきしゆつしゆじゆつを受けたことはたしかですが、かんじんのう行方ゆくえはつかめていません」

のうたいか……」

 バロウ神父──めいもく/さらなるげきえようとするように。

ねむれる器が、彼の死を契機きつかけに目覚める……」


    Ⅳ


 ミリオポリス第二十七区ヴイーナーヴアルト──古くから〈ウィーンの森〉とばれる森林地帯。

 ドナウ川沿えんがんからはなれた場所に置かれたコンテナ=念入りにそうと光学ぼうへきめぐらされたこうはんが、にじいろを帯びながらロックをかいじよ

 自動てんかい──四方へがく的なたまごのように開く。

 現れたものの目覚め──かくとく

 わタし──はがねの体/鋼のつばさ/鋼の

 するどくちばしあんかいしよくのボディ/よくに不思議なこくいん=『Princip Inc.』。

 無人のそうじゆうせきけ巡ると電子。

 エンジンとねんりようせいみつ機械の起動/モーターの回転──それが、わたシ。

 目的・行動・標的・しゆだんが思い出される。

 おのれの脳=たましいささげたことが思い出される。

 犠脳=力無き者がかいの王となるために。

 操縦訓練もしきの習得も必要なく、ワたシとこの鋼の体を一体のものとするために。

 さあ、始めよう。この命をまつとうするために。

 そうばんの全ランプがてんとう

 その中央でかがやく大きなカプセル──脳/ずいえき/無数のせつぞくコード。

 うなり──ギロチンのような回転翼が動き出す/重力のくさりりほどく。

 唸り──いのりにもて/風をようりよくを得る/ゆう/木々をらして森から現れる。

 唸り──機械の目で都市を見る/おどろくほど何もかも小さい/低い/あわれなほどみにくい。

 唸り──かんほうこうを上げてしよう

 もうだれもワタシを止められない。


「せせせ、戦術ヘリだとぉーっ⁉」

 国連ビル──ゴットフリートない大臣のぜつきよう。どよめくパーティ客。

 こおりつくエゴン局長。「そんなもの、どうやって都市に……!」

「〈カウカソスのおおわし〉──六百六十六万のパーツにぶんかいされ、運びまれたかいぶつ

 ヘルガの声──あくまでおだやかに。

「人に火をあたえたばつはりつけにされたプロメテウスのかんぞうむさぼる、神の鳥。その名はすでにMSSがつかんでいました。しゆうきよう会議所は陽動。真のねらいはおそらく──

 ぎもかれてよろめく黒カマキリ=エゴン。

「こ、国連ビルをばくげきする気か……!」

 きようこうをきたすヒグマ=ゴットフリート。

「たたた、たいこうは取っておらんのか‼」

げんじようではかい……ですが、これにサインをいただけましたら、その措置がのうかと」

 ヘルガ──あざやかなしようのように。

 差し出されるカード──電子板がてんかい

 文書のしゆつげん=コピー不可・えつらん不可・ごく指令書。

「公安局のマスターサーバー〈<外字>バク〉の全使ようけんを、私におあたえ下さる指令書です」

「きっ……、さま! ヘルガ!」エゴン=いかりでそうはく

 ゴットフリートが息をむ──ふるえる手がびる。

 目に見えぬ糸にあやつられるように、あつい指が電子板に近づいてゆく。

 エゴンの絶叫。「ない大臣‼」

 ぎりぎりとぎしりするゴットフリート。「お、お前が、私兵をほつしていることは察していた。それを、むざむざと……このぎつねめが!」

 太い親指が電子板にれた。もんにんしよう──データてきごう/サイン受理/わずか二秒。

「おめにあずかり光栄ですわ、かつ

 電子板がたたまれ、ヘルガのむなもとし込まれる。

 まどを向くヘルガ──ストールがかたすべり、一方の手ににぎられる。

 そのはだがあらわに──ぜつするゴットフリートとエゴン。

 右肩からひだりごしへ走る、らいのようなきよだい火傷やけど──そのきずあとを背負うヘルガの顔からしようが消えた。

 れつに都市をえるヘルガの横顔──真にほこる薔薇の花のごとく。

 近づきがたく/触れがたく/くらべるものとてなく──けいたい電話へくちびるせ、ささやく。

「得るべきものは得たわ、ニナ」

《おめでとうございます、長官》

「これがMSS初の公式戦よ。じゆんは良いわね」

 そして、にわかに放たれるせいれつな号令。

「第一たいせいこう! 待機中の全接続官コーラスに〈<外字>バク〉のどくせん使用を通達! 〈てんそうとう〉のフルどうようせい! 〈焱の妖精フオイエル・スプライト〉による要撃を開始する!」


 教会──おびえたままの冬真/ふるえが止まらずひざをつく。

 けんじゆうをしまう鳳。「あなた、お名前は?」

「え──」びくっとなる。「と……冬真・ヨハン・メンデル……」

「ファーストネームは漢字名キヤラクターですの?」

「う、うん……」

 国連都市ミリオポリスのせいさく=文化たく──戦争やさいがいなどでぜんこんなんとなった国の文化を他国がする。日本の漢字名キヤラクターを名乗れば、毎月の保全金+社会しようはらわれる。

「冬真さん、あなたのたんじようは?」

「な、七月三日……」わけも分からず返答。

かにですのね」

 微笑ほほえむ鳳──ポケットから銀のケースを取り出して開く。

 れいならんだ物=カラフルなばんそうこうすべてに手書きの印。

「さ、お手を。おまじないをして差し上げますわ」

 冬真=おそる恐る手を出す。なぜかさからえない。まるで相手がかんきようのような気分。

 鳳=ていねいな手つき──冬真の手のこうに、それがペタリとられた。

 絆創膏=バナナのかおり=蟹座の印。

こわいときには勇気を、さびしいときにはやさしさを、かなしいときには喜びを与えてくれる、おまじないですわ」

 にこりと微笑む鳳──じゆうを持っていた姿すがたからはそうぞうもつかぬやわらぎ。話しているだけで恐れが消え、不思議と体のこわばりがけてゆくおどろき。

 ふと他の二人の少女にも絆創膏おまじないが貼られていることに気づく。

 乙=ほっぺた=魚座の印。

 雛=小さな鼻の頭=の印。

せんじゆつヘリが都市上空にしゆつげん……!」

 ニナ──けいたい電話を耳に当てたまま、バロウ神父に。

「十中八九、シェネルののうしよくされたかと」

「完全りつ兵器だ……都市の全マスターサーバーがかんしようを試みてもハッキングによる停止はのうだろう」

 バロウ神父=哀しく目をせて。

「ヘルガは……〈<外字>バク〉を手に入れる気だね、あの全てを見通す、電子の〈三つ目〉を」

「じきにそうなるかと」

 顔を上げるバロウ神父──静かに鳳のそばに歩み寄る。

ひさしいね……お嬢さんフロイライン

しておりますわ、神父様」

「本当に……使いこなせるのかね?」

「おめでとうございます、長官」ニナの声──その目が鳳たちへ。

 小さくうなずき返す鳳──目をバロウ神父にもどす。

らんに入れますわ、神父様」

 しよう──手をちゆうへ差しべる。

「転送をかいふう

 にわかにうなり──鳳の手が・足が、けものほうこうにもた音とともに、エメラルドのがく的なかがやきに包まれた。

 きようがくする冬真+しゆうきようしやたち──もの悲しいまなしのバロウ神父。

 鳳の手足が指先からりゆうじようぶんかい──一瞬で新たな姿すがたへ置きえられる/機甲化する。

 乙と雛の手足も同じ輝きに満ちる──形状のへんぼう──ありえない姿へ。

 わずか一秒あまりの変化──完成/起動。

 三人の少女の背に、輝きが生える。

 むらさき・青・黄の、大きな大きな──羽。


    Ⅴ


 ミリオポリス第十九区デープリング──市街地──上空。

 もうぜんと飛来するこうてつおおわし=完全そうの戦術ヘリ。

「来たぞ!」

 さけび──ほうこくを受けたげんけいかんたい=急ごしらえのじん/ビル屋上にげきじん

 飛び立つ警察ヘリ=とうじよう狙撃手が、てきよくこくいんをとらえる。

プリンチップ株式会社Princip Inc.? どこのぎようだ?」

「知るか、て撃て!」別の狙撃手の号令。「どこにとそうがかまわん、どうせここらは外国人どものすみだ!」

 いつせいしやげき──とうらいする敵ヘリのそうこうおよびぼうだんガラスに火花の雨。

 立て続けの銃撃──きずの敵ヘリ。

 追いすがる警察ヘリ──搭乗狙撃手が敵の操縦席をねらう/あつに取られる。

「む……無人⁉」

 敵ヘリのそうじゆうばんはんのう──そのくちばし=ガトリングほうが音を立てて起動。

 にわかに咆吼──ビル屋上がはちの巣に/狙撃陣のかいめつまたたく間。

 敵ヘリのきゆうせんかい──つばさひらめく火=発射されたミサイル弾──警察ヘリを自動つい

 搭乗員の悲鳴/ぜつきよう

 ふいに、いくすじかのせんこうがミサイル弾を貫いた。

 さくれつ──ほのおからげる警察ヘリ。

 搭乗者のおどろき。「なんだあれは⁉」

 にわかにりる紫の輝き──地上数十メートルでやわらかにはばたく、きよだいな羽。

 ひるがえるロングヘア×ウェーブ/勇ましく見開かれた深紫の瞳デイープ・パープル=その左目のかいぞくきず

 あわい紫のこうたくを放つ、なめらかなフォルムの鋼鉄の手足。

 その右手に、じようしきなサイズの特大兵器=発射されたミサイル弾をせいかくそうしやげきついした──十二・七ミリちようでんどうじゆうかんじゆう

「MSS要撃小隊《焱の妖精フオイエル・スプライト》っ! 初・公・式・出撃っ♪ ですわぁ──っ‼」

 鳳──かんせい=高らかに/歌うように。

 身長よりでかい機銃を軽々とかかげ/かまえ/ねらう。

 掃射──ダダダ!ダダダ!ダダダ!ダダダ!ダダダ!

 たちまち火花まみれになる敵ヘリ──しようげきえんねつ

 その防弾ガラス・ボディ装甲・翼・尾翼に、れつ/黒いみのように広がるだんこん

 敵ヘリの旋回──退たい/反撃。

 ガトリング砲が咆吼を上げて負けじと弾丸をばらまく。

 すかさず左へ右へ舞う紫の輝き。

 ようりよくと高度な平行移動ホバリングすぐれたはばひろのアゲハチョウの羽──掃射を続けながら、ひらりひらりとなんなく敵弾をかわす/一発として食らわずせつきん

 火花に包まれながら敵ヘリがきゆうこう──旋回/きゆうじようしよう

 放たれるミサイル弾──すぐさま撃ち落とす鳳。

 爆発=えんまく──もうスピードで転進する敵ヘリ。

 鳳の通信。《敵が南西へ進路をへんこう!》

 ニナのそくおう。《追うな、〈紫火アメテユスト〉! 最終要撃ポイントへどう! 〈青火ザーフイア〉と〈黄火トパス〉に敵武装をふうじつつ追いませる!》

 鳳の即応──ぜんとなる警察ヘリのとうじようしやらへ、にこりと微笑/しよう/舞うように。


 ミリオポリス第十九区デープリング──南西/市街地──上空。

 大きくかいしたせんじゆつヘリが、ぐんぐんスピードを上げてばくしん

 そのぎようかく七十五度からとつげきかつくうする──青い火。

「ドキドキしたいっしょー!」

 き浮き突撃──乙。

 速度とすいちよく移動にすぐれたたてながのトンボの羽──するどい形の鋼鉄の手足/四つの関節を持つ長大なうで/両方のひじからびる灼刃ヒートブレイド──青白い炎。

 はくげきだんのごとく飛来する乙に、てきヘリがはんのう──ガトリングほうが仰角を向く=れんしや

 せんじように広がる弾幕を信じがたい速度でけながら、えいかく的にせまる乙。

 その両腕が、ものかくするトンボのあごのごとく開かれた。

 いつしゆんこうさく──超高熱のはくじんが、すさまじい速度で鋼鉄をようかい──りようだん

 たてに真っ二つにかれたガトリング砲──その弾丸がぼうはつ/一挙炸裂/はがねくだけてめくれ返り、じゆうしんがばらばらになって飛散した。

 青い火のだつ──敵ヘリの離脱=機体下部からき出すこくえん

 乙の無線通信。《そっち行ったぞ雛ぁっ!》

 雛の応答=たよりなげ。《うぇ……》

 すぐ向こうにドナウうん/ドナウ川/新ドナウ川。

 その先に第二十二区ドナウシユタツト=〈UNO-CITY〉。

 敵ヘリの猛進──低空飛行──次々に河面をえてこうそうビルのはざとつにゆう

 間もなく、国連ビルがしやていきよ内に入った。

 りようよくのポッドがふたを開放──多弾頭式クラスターばくだんしゆつげん──そくに発射=全弾しよう

 ちゆうはしる鉄の矢×8──その全弾頭が宙でぶんかつ──×80以上になってようしやなく飛来。

 その正面。ビルのかげからおどり出る──黄の火。

「いじめないでぇ──っ!」

 雛──そのかがやき=いかなる気流のみだれにも対応し、超高度な姿せいせいぎよほこる、鋭いスズメバチの羽。

 相変わらず両耳にヘッドホン/丸いフォルムの鋼鉄の手足/全身でけんをアピールする警告黄色アンバー・ライト

 両腕にけんのん──左腕=えんとうけいポッドがてんかい──連結式爆雷チエーン・マインの束と化し、しんたいそうのリボンのごとく8の字ダンス=敵の爆弾ぐんすべとうてき

 点火──飛び散るてつぺん=雨のごとき火炎と鉄球が、敵ヘリの放ったミサイル弾を穿うがった。

 ゆうばく──もくろくごうおん──ビルの谷間に発生する炎のせきらんうん

 ミキサーのようなばくあつ──ビルへきめんまどせいだいれつ

 凄まじいまでの爆風の中でも、雛は平気な顔で姿勢制御。

 ばくえんから飛び出す敵ヘリ──雛のそくおう=その右腕をかまえる。

 火炎放射器フアイアーブラスター──めくるめくえんふんしや

「いじめないでぇーっ!」

 ちよう高温のほのおうずを浴びた敵ヘリが、焼けただれながらも雛のかい下を飛び去ってゆく。

 さらにこう──超低空飛行。

 つばさに残されたミサイルだん×6を包む炎──誘爆を避けて全弾発射。

 国連ビルへさえぎるものとてなく、ミサイル群が白煙を噴いて直進。

 雛の通信。《鳳ぁーっ!》

 鳳のおうとう。《あとは、あたくしにおまかせなさい‼》

 飛来するミサイル群──その正面にりる──むらさきの火。

 最終要撃地点に先回り──計算された待ち伏せサプライズ

 右手ににぎりしめたどでかい機銃をかかげる/かまえる/ねらう。

 その残弾ひよう=〈30000〉

「さ──ぁ‼ ごほうさせていただきますわよ──っ‼」

 ダダダダダダダ!ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!ダダダ!

ダダダダダダダダダ!ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!

ダダダダダダダダダ!

ダダダダダ!ダダダダダダダダダダダダダ!!」

ダダダダダダダダダ!

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!‼」

ダダダダダダダダダダダ!》《ダダダダダダダダダダダダダダダダダ!ダダダダダ!ダダダダダダダダダダダ!。《ダダダダダダダダダダダ!⁉ ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!》

ダダダダダダダダダ!

 ダダダダダダダダダ!ダダダダダダダダダダダダダダダ!ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!

ダダダダダダダダダ!

 ダダダ!ダダダダダダダダダダダダダダダ!ダダダダダダダダダダダ!ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!

 そうしや開始から六秒=〈00000〉

 空転するドラムだんそう──凄まじい熱を放射する銃身。

 せまる敵ヘリ──もはや原型をとどめぬ火のかたまり

 機銃のドラム弾倉が自動はいしゆつ──さいそうてん

 退しりぞかない/退けない鳳──そのはいわずか二百メートル先に国連ビル。

 さらに機銃を掲げ/構え/狙い──さけぶ。

「さっさとこわれなさいっ‼」

 さいそうしやすんぜん──てきヘリのそうじゆうせきが、にわかにほうかい

 せつの時間──引きかれたはがねえ上がる炎、そのはざあらわれたもの。



 鳳のひとみ=超音波たん=電子探査によってかび上がるカプセル。

 機体にしよくされた、男ののう

「あたくしも……あなたの行いを、しゆうきようとはみとめません」

 狙う──いのりに代えて=ダダダ!

 脳が木っじんくだけ散った。

 ヘリのかいてんよくぶんかい──失速。

 鳳の視界下へ、こくえんき上げながらしつつい

 国連ビルげんかんの噴水中央──ピンポイントで墜落。

 せいだいな水しぶきが上がり、これまでで最も弱い爆発と炎がしゆうえんを告げた。


    Ⅵ


 国連ビル──静かなまなしで、炎を見下ろすヘルガ。

「これが……この街に満ちた血まみれのたいせいさんする、最初の炎となるでしょう」

 ぼうぜんしつのゴットフリート──よろよろとひざまずく/なみだ

「か、各国大使がいるここにとすとは……」

 エゴン──しにがみのようにそうはくの顔。

「女シーザーめ……BVTと対立して生き残れると思っているのか。いつか身内にされる日が来るぞ」

「ごちゆうこくありがとうございます、局長。それよりせんじゆつヘリを都市内に持ち込ませたせきにんについて、委員会が局長をお待ちでは?」

「お電話です」フロアの係員=電話を手に。「ヘルガ様に、ウィーン州知事からです」

 エゴン──にらみ殺さんばかりの

 やがて、きびすを返してフロアを退たいきよてゼリフ──なし。

 そのを見送りながら電話を取るヘルガ──あでやかなみ。

「ごげんよう、州知事様」

 太くおだやかな男の声。《画期的なたいおうだったな、ヘルガ。しようしやも都市がいも、しゆつげんしたきように対し、考えうるかぎりのさいしようはばだ》

「光栄です、州知事様。ですがMSSのじようほうでは、都市に運び込まれたプリンチップ社の兵器は、一つではありません」

《だがそれにたいこうするしゆだんを君が手に入れてくれた。ぎりぎりだが間に合った。敵が行動に出た今、ゆうは許されない。やつらにほろぼされる前に、ともにこの都市を変えよう、ヘルガ》

 ヘルガのしようこうな花のように──きようじんめて。

私のお兄様マイン・ブルーダー


 教会──テレビの前に集まるしゆうきようしやたち・バロウ神父・冬真・ニナ。

 げきついされたヘリのえいぞう──〝羽の生えた人間〟のかくにんじようほう

「出撃から撃墜まで三分十七秒──まずまずか」

 ニナ──けいたい電話の時間ひようを確認。

「か……彼女たちは、いったい……」

 冬真がぼうぜんとバロウ神父をり返る。

「児童ふくほうの改定……」

 バロウ神父──告解のように重い声。

ちよう少子こうれいによる人材不足を解決するため、十一さい以上の児童に労働のあたえ、また肉体にしようがいを持つ児童をしようで機械化するせいさくが発表された」

 後を続けるニナ=れいげん

「そして最もゆうしゆうな機械化児童には〈とくしゆ転送式きようしゆうこう〉──つうしよう特甲トツコー〉をあたえ、ぞうだいするきようあくはんざいやテロに対抗させた。彼女たちこそ〈てんそうとう〉へのようせいけんを持つ最強のとくしゆ兵科──MSS要撃小隊《焱の妖精フオイエル・スプライト》だ」

「機械……? 彼女たちが……」

 冬真──言葉を失う──ふとかおりに気づく。

 手の甲──かにの印=いちごの香り。

 絆創膏おまじない=勇気・やさしさ・喜びのための。

 それを見て、たしかに体のふるえが止まっていることに、ようやく気づいていた。


 第二十二区ドナウシユタツト──ドナウタワー。

 高さ二百五十メートルあまりの塔。

 そのちようてんのごくわずかな面積にり、苦もなく着地ランデイングする、むらさき・青・黄のかがやき。

「夜だとよく分かんなかったけど、ここ高ぁっ。ドキドキするーっ」

 ワイルドにくわえたロリポップ──

 小隊の〝迫撃手モータル〟こと、乙・アリステル・シュナイダーのかんせい

「もう暗いところばかり飛ばなくても良いんだよね」

 相変わらずそうちやくしたままのヘッドホン──

 小隊の〝爆撃手ボンバー〟こと雛・イングリッド・アデナウアー=真顔。

「ええ。これでもう夜間のみつ訓練やごくにんからはおさらばですわ」

 ほこらしげ──つやめくロングヘア×ウェーブ。

 小隊長にして〝要撃手サプライザー〟たる鳳・エウリディーチェ・アウスト。

「ついにっ、公式出撃を成しげたのですもの。お二人とも本当にえらいですわ。ごほうにクイズの答えをお教えしますわね♪」

「あーわすれてた。Bだっけ?」「Cだもん」

「ッブ──‼」鳳──口をとがらせぜんてい。「せいかいはA──っ! ですわ♪」

「んだっけA?」「どもが死んだから?」

「そう。きようらんのろいをかけられたヘラクレスは、自ら大切なが子を殺してしまったの。そのつみつぐない、失われた希望を取りもどすため、数多あまたなんぎよういどむ決意をしたのだわ」

 かいせつする鳳──うっとり。

「は──……それってオレらになんか関係あんの?」「っぽいしきぃ」

「あら、大いに関係ありますわ。だって、このはヘラクレスと同じですもの。歴史の中で自ら大切な希望を殺してしまった……だから、多くの難行を乗りえねばならないのだわ。失われたものを取り戻すために」

 その深紫の瞳デイープ・パープルが見つめる街の全景──地平線まで続くかのようなざつな建物のむれ

 歴史のいしぶみ──あるいは人々が今そこに生きているしようめいの列。

 二人を振り返る──って。

「あたくしたちのお仕事は、そのお手伝いをすることよ」

「ふーん」「ふーん」

 乙+雛──しんけんに欠ける顔。

「んだか分かんねーけど、ドキドキできんならもんねーっしょ」

「ボクをいじめるをやっつければいいんでしょぉ」

妖精スプライト達へ》ふいにニナからの無線通信。《じようきようしゆうりようそういん、本部へかんせよ》

「いきましょう、お二人とも」鳳──ふわりとちゆうへ。「この決してちない羽を手に入れたあたくしたちになら、きっと出来ますわ」

 青空/大地をおおう大都市──そのはざ

 かがやき/おどるように──むらさき・青・黄の羽。

 これはなんぎようを運命づけられ、また自ら選んだ者たちのおく──妖精たちの物語スプライト・シユピーゲル




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