第7話:種馬騎士、中央統合軍を挑発する


「退屈だな、カナレイカ」


 ソファにだらしなくもたれたラスが、ぼんやりと窓の外を眺めて呟いた。


 宮殿の監視塔内にある皇宮衛士の控え室だ。書類仕事を行うための机と、几帳面に整理された資料棚。あとは最低限の家具が置かれただけの殺風景な部屋である。


 部屋にいるのはラスとカナレイカの二人だけだ。黒い仮面マスクをつけて男装したフィアールカは、朝からずっと休みなく皇太子としての公務に駆り出されている。


 表御殿にある彼女の政務室には担当の皇宮衛士たちが護衛についているため、ラスはすっかり手持ち無沙汰になってしまったのだった。


「すみません、ラス。本来なら筆頭皇宮衛士であるあなたが部隊の指揮を執るべきなのでしょうが、なにぶん突然のことだったので組織の改編が間に合っていないのです」


 カナレイカが生真面目な口調で謝罪する。


 書類の上では、近衛師団の師団長は、皇太子アリオールが務めることになっているらしい。皇族にはよくある話だが、形式的な肩書きだけの指揮官だ。


 従って実際に近衛師団の指揮を執るのは、連隊長であるカナレイカの仕事である。暇を持て余しているラスとは対照的に、彼女は面倒な事務作業を黙々とこなしている。


 そのことに居心地の悪さを感じないわけではないのだが、だからといって、ラスに手伝えることがあるわけでもない。


「それはべつに構わないが、急ぎの仕事がないのなら、俺は商都プロウスに戻っても構わないか? フォンに挨拶もせずに皇宮に連れてこられたからな。せめて事情を知らせておかないと、あとが面倒だ」


 ラスがやる気のなさをにじませた声で提案する。


 皇都ヴィフ・アルジェから商都プロウスまでの距離は二百キロほど。さすがにひと晩で往復するのは空搬機カラドリウスでも使わなければ不可能だが、行って帰るだけなら民間用の輸送車カミオンでも二日あれば充分だ。


「フォン・シジェルが、あなたを心配しているということですか?」


 カナレイカが少し意外そうに眉を上げた。

 ラスは黙って首を振る。


「いや、俺が借金を踏み倒して逃げたと思って怒り狂ってるはずだ」

「借金?」

「娼館のツケとか、いろいろとな。いくら弟子だからって、タダで養ってくれるような人情家じゃないんだよ、あの守銭奴ドケチは」

「そう……ですか」


 カナレイカが納得したようにうなずいた。師匠である剣聖フォン・シジェルの下で、ラスが様々な仕事を請け負っていたという事情を思い出したのだろう。


「借金についてはどうかわかりませんが、あなたが皇宮にいることは、フォン・シジェルにも伝えてあります。彼女の店に私の部下を使いに出してありますから」


 カナレイカが、ラスを安心させるように真面目な口調で言う。

 しかしラスの瞳に浮かんだのは、より深刻な不安の色だった。


「……部下? 男か?」

「ええ。さすがに女性衛士を娼館に派遣するわけにはいきませんので」

「そいつは男前か?」

「は?」

「ヤバいな。下手すると、そいつ、喰われるぞ?」

「く、喰われる? いったいそれはどういう意味です?」


 カナレイカが戸惑いの表情で訊き返す。ラスは静かに首を振った。


「可哀想だが、もう手遅れかもな。皇宮衛士の男をフォンの店に派遣するなんて、餓えた蜥蜴トカゲの巣に生肉を放りこむようなもんだ」

「そんな……ですが、彼に限って……」

「そういうタイプがいちばん危険なんだ。身を持ち崩す前に戻ってこられたらいいが……まあ、それはそれで幸せか。とりあえず、フォンのことはしばらく放っておいても大丈夫そうだな」

「私の部下の貞操が、大丈夫ではない気がするのですが……!」


 カナレイカが額に浮いた汗を拭って目を閉じる。

 一方のラスは、肩の荷が下りたというふうに晴れやかな表情で身体を伸ばした。


「すると本格的に暇になったな。皇都の観光にでも出かけてくるか?」

「それよりも剣の修練はどうですか? よければ私がお相手しますが?」

「修練……か。あまり気が乗らないな」


 カナレイカの提案に、ラスは渋い顔をする。


「なぜです? 私では相手として不足ですか?」


「いや。きみは強いよ、カナレイカ。近衛師団最強という肩書きも納得だ。フォンの店の娼婦たちが相手でも、そこそこ対等に渡り合えるんじゃないか?」


「気になることを言いますね」


 カナレイカが警戒したように表情を硬くした。


「フォン・シジェルの店の娼婦というのは、つまり剣聖の弟子ということですか? 私と同等以上の煉騎士を、フォン・シジェルは何人も育てていると?」


「ひとまず連中が皇国の敵に回るようなことはないから安心してくれ。人間を相手にするだけなら、そもそもフォンの剣技なんて必要ないしな」


「人間相手の技ではない? だったら、剣聖の技はなんのためにあるのです?」


「決まってるだろ。人間には倒せないものを倒すためだよ」


 ラスが素っ気ない口調で言う。


 その瞬間、抑えきれずにうっすらと洩れ出したラスの殺気に、カナレイカが身を固くした。


 煉騎士が本来戦うべき相手は人間ではない。人類の生存を脅かす魔獣たちだ。

 煉術や石剣、そして狩竜機シャスール——それらはすべて、非力な人類が魔獣に抗うための道具として生み出されたものなのだ。


 そしてラスのその言葉は、アルギルの皇族を守るためだけに戦う皇宮衛士への痛烈な批判でもある。だからラスは、カナレイカ相手の修練には気が乗らないと言ったのだ。


「なるほど。興味深いですね」


 気圧されたようにしばらく沈黙していたカナレイカが、静かな声で呟いた。いつもどおりの生真面目な表情だが、彼女の瞳はキラキラと輝き、頬が軽く上気している。


「わかりました、ラス。やはり修練場に行きましょう」


「話を聞いてたか? 俺は気が乗らないって言ったんだが?」


「はい。ですから、修練するのは私です。あなたは私に稽古をつけてくだされば、それで結構。いえ、そうですね……せっかくですから、非番の部下たちも呼び出して参加させましょう」


 妙な気合いに満ちたカナレイカに、今度はラスが困惑する番だった。どうやら彼女はラスの言葉に感動して、さっそく影響を受けているらしい。


 そんなにも簡単に言いくるめられてしまって、大丈夫なのか、チョロすぎないか、とラスは呆れると同時に、カナレイカの将来が心配になる。


 しかし彼女に対する皮肉を口にしようとして、ラスはその言葉を呑みこんだ。


 見知らぬ二人の男たちが挨拶もなく、皇宮衛士の控え室に入ってきたからだ。


「おや、近衛師団最強と謳われるアルアーシュ殿に稽古をつけるとは、たいしたものですな」


 立ち聞きしていたことを隠そうともせずに、男がラスたちの会話に割りこんだ。


 たてがみのような見事な髭を蓄えた、赤毛の中年男性だ。男の背後に付き従っているのは、がっしりとした体格の青年である。


 彼らが着ているのは、黒地に銀の厳めしい軍服。中央統合軍セントラルの制服だ。


「我々にも、是非、一手ご指南いただきたいものです、ラス・ターリオン筆頭皇宮衛士殿」


 髭面の男が、ラスを見てニッと野太い笑みを浮かべる。

 彼の襟元で輝いているのは、師団長の地位を表す徽章だった。


    ■■■■


「ハンラハン師団長? どうしてこちらに?」


 カナレイカが、髭面の男を見上げて質問した。


 アルギル中央統合軍セントラル・コマンドは、皇国の皇帝直轄軍だ。

 先の紛争で多くの戦力を失ったとはいえ、彼らは今でも、アルギル国内のすべての方面軍の中で最大の規模を誇っている。


 皇宮近衛師団とは指揮系統が異なるものの、両者の関係は緊密で、カナレイカを含む皇宮衛士の多くが中央統合軍セントラルの出身だった。


 とはいえ、師団長クラスの人間が、用もなく近衛連隊の隊舎を訪れるようなことは滅多にない。なんらかの緊急事態が起きたのではないかと、カナレイカが身構えたのはそのせいだ。


「ああ、いや。失礼した、アルアーシュ殿。邪魔をつもりはなかったのですが、興味深い話が聞こえてきたので、つい」


 カナレイカの不安を払拭するように、髭面の男は豪快に笑った。

 そして彼は、ソファに座ったままのラスへと右手を伸ばす。


それがしは、ガヘリス・ハンラハン。中央統合軍第二騎兵師団の師団長をやっております。貴殿の叔父上、ケネト・クレーフェ子爵とは士官学校の同期でしてな、貴殿の噂も聞いておりますぞ」


「それはどうも」


 ハンラハンの挑発的な言葉を無視して、ラスは差し出された右手を握り返した。


 煉気で強化された握力で、ハンラハンがラスの手を握り潰そうとしてくるが、ラスはそれを平然と受け止める。

 ハンラハンの体内の煉気を乱して、彼の肉体強化を無効化したのだ。


 ラスの叔父——ケネト・クレーフェ・ヘルミヒオンと同期ということは、ハンラハンはまだ三十代半ばということになる。ラスは、むしろそのことに驚いた。

 師団長として若すぎるからではない。

 彼の外見がそれよりも十歳は老けて見えたからだ。


 ラスがそんな失礼なことを考えているとはさすがに知るよしもなく、ハンラハンがニヤリと歯を剥いた。

 表情も変えずに自分の握手を受け止めたラスを、相応の実力者だと認めたらしい。


「なるほど。アリオール殿下の酔狂かと思いましたが、なかなかどうして。上位龍殺し、案外、まぐれでもなかったということですかな?」

「なんのことだか、わからないな、師団長」


 ラスは涼しげな表情で、ハンラハンの言葉を受け流す。


 そんなラスたちのやりとりを黙って見ていたカナレイカが、コホンと小さく咳払いした。


「ハンラハン殿。筆頭皇宮衛士に対して無礼であろう?」

「もっともですな。いや、ターリオン殿、重ね重ね失敬した」


 ハンラハンは悪びれることなくうなずくと、勧められたわけでもないのにラスの正面のソファにどっかりと腰を下ろした。


「お邪魔したのは、ほかでもない、貴殿に頼みがありましてな」

「頼み?」

然様さよう。といっても、たいした用ではありません。貴殿に、我が師団の煉騎士たちと手合わせを願いたいのです、ターリオン殿」


 不敵な表情を浮かべて、ハンラハンがラスの顔をのぞきこんでくる。

 ラスは軽く目を眇めながら、中央統合軍の師団長を見返した。


「俺の実力を知りたいということか、師団長殿?」

「有り体に言えば、そうですな」


 ハンラハンは、ラスの言葉をあっさりと認めた。


「皇宮衛士とは、中央統合軍セントラルの将校の中から、特に技量と人格に優れた者が選ばれるもの。ましてや銀の護り手ガード・オブ・シルバーともなれば、誰もが納得できるだけの人望と実績が必要となりましょう。ですが、我らは貴殿の実力を噂でしか知りません」


「師団長殿の言うことはもっともだな」


 ラスが、愉快そうに口角を上げて足を組み替える。


「それで、納得できなければどうする? 陛下に、俺が肩書きに相応しくないと訴えるか?」


「いやいや、さすがに陛下のご決断に異を唱える勇気はありませんな」


 ハンラハンは、おどけたような態度で首を振った。


「ただ、それでは部下たちの気がどうにも収まらないということで、それがしも頭を痛めておりましてな。そこで、こうしてお願いに上がったわけです」


「人格や人望はともかく、せめて煉騎士としての技量だけでも示せ、というわけだな」


「率直に言えば、そうですな」


 ハンラハンはそう言って肩をすくめると、自分の背後に立っている部下に目を向けた。


 ラスとほとんど年齢の変わらない若い煉騎士だ。長身のラスよりもさらに背が高く、肩幅も広い。膨れ上がった二の腕の筋肉で、制服の袖がはち切れそうだ。


「彼は?」


 ハンラハンの部下を見上げて、ラスが訊く。

 大柄な青年煉騎士は、上司の紹介を待たずに自ら口を開いた。


「クスター・ファレル中尉だ。貴殿と手合わせを願いたい、ラス・ターリオン殿」

「中尉……銀級騎兵か……」


 ラスは青年を値踏みするように一瞥した。


 騎兵——すなわち、軍属の狩竜機シャスール乗りとなった煉騎士は、一定の見習い期間を経て色つきの階級章ウーバーグを与えられる。

 上から金銀銅、そして

 銀級騎兵は、最上位の金級騎兵に次ぐ二番手の地位。

 つまりクスターは、すでにかなりの実戦をこなし、功績を上げているということだ。有望な若手の出世株といったところだろう。


 しかしラスは、そんなクスターを哀れむように首を振る。


「惜しいな」

「は?」

「煉術師になる気はないか? 騎兵師団を辞めろとは言わないが、剣と並行して煉術を覚えてみるといい。なんなら、いい師匠を紹介するぞ?」

「貴様……いったいなにが言いたいのだ」


 クスターが苛立ったようにラスを睨みつけた。


 狩竜機シャスール乗りという肩書きに彼が誇りを持っていることは、鍛え抜かれた肉体が物語っている。それを真っ向から否定されたのだ。クスターが憤るのも無理はない。


 しかし煉気で肉体を強化する煉騎士に、過剰な筋肉は必要ない。人間がどれだけ鍛えても、筋力では魔獣に決して勝てないからだ。筋骨隆々としたクスターの肉体は、煉気による肉体強化の効率の悪さの裏返しでもある。


「煉騎士としての才能がないわけじゃないが、体質的に向いてない。おそらくそれ以上の急激な成長は望めないはずだ。自分でも伸び悩みを感じているんじゃないのか?」

「俺を愚弄する気か?」

「本来の素質が勿体ないと言ってるのさ。だが、まあいい。きみの人生だ。好きにしろ」


 クスターの怒りをあっさりといなして、ラスは再びハンラハンに向き直った。


「話はわかったよ、師団長。第二師団との模擬戦を受けよう」

「いいのですか、ラス? いえ、たしかに近衛師団と騎兵連隊の交流戦は、定期的に行われていることですが……」


 カナレイカが驚いたようにラスを見る。面倒くさがりのラスが、第二師団相手の試合につき合うと言い出したのが意外だったのだろう。


「遅かれ早かれ、こんなことになるだろうと思っていたからな。共に皇国に仕える煉騎士として、信頼関係の育成は重要だろう?」


 妙に胡散臭い笑顔でそう言って、ラスはハンラハンに明るく問いかけた。


「それで、俺は何人斬ればいいんだ?」

「なっ……⁉︎」


 無言でラスを睨み続けていたクスターが、怒りに顔を紅潮させた。第二師団の煉騎士が何人いても自分の相手にはならないと、ラスは遠回しに伝えているのだ。


「貴重な軍の戦力をなるべく減らしたくはないんだが、寸止めや判定で俺が勝っても、納得しないやつが必ず出てくるだろう? となれば、真剣での勝負しかないと思うが? 当然、それくらいの覚悟はあるんだろうな?」

「ふむ」


 ラスの言葉に、ハンラハンが低く唸る。

 第二師団の煉騎士がラスに勝てないかどうかはともかくとして、判定勝ちでは納得しない、という意見には一理あると認めたのだ。 


「では、狩竜機シャスールを使った模擬戦ではいかがかな? 操縦席への攻撃を禁じれば、最悪でも命を落とすようなことはありますまい」


「俺はそれでも構わないが、動かせる狩竜機シャスールが手元にない。商都プロウスから無理やり連れてこられたばかりでな」


 ラスが咎めるような視線をカナレイカに向けた。

 カナレイカは、バツが悪そうに目を逸らす。


 狩竜機シャスールは単なる兵器ではない。

 少なくとも銘入りの狩竜機シャスールに限れば、貴族にとっては爵位と同様の価値を持つ。狩竜機シャスールを操り、魔獣から領民を守ることこそが、貴族の義務とされているからだ。


 ゆえに皇都の騎兵師団に配属された貴族の子弟は、自らの領地から狩竜機シャスールを連れてくるのが慣わしである。

 先祖より伝わる狩竜機シャスールと共に、彼らは皇帝に忠誠を誓うのだ。


 しかし拉致同然に皇都に連れてこられたラスが、狩竜機シャスールを持ってきているはずもない。ラスの乗機は、商都プロウスにあるヴェレディカ家の別宅タウンハウスに今も残されたままだった。


中央統合軍セントラルの演習機があります。無銘の量産機ですが、それでもよければ用意しましょう」


 ハンラハンが、意外にもしぶとく喰い下がる。


「……いいのか? あんたちの予算も、潤沢というわけではないんだろ?」


 ラスは意外そうな表情で訊き返した。


 狩竜機シャスールは恐ろしく高価な兵器だ。模擬戦を行えば機体が損傷するのは避けられないし、修理には相応の費用がかかる。皇帝直轄部隊の中央統合軍セントラルといえども、気軽に支払える金額ではないはずだ。


「そうですな。五機……六機までなら、師団の予備費でどうにかしましょう」


 ハンラハンは眉間にしわを寄せつつも苦笑した。多額の費用を負担することになっても、ラスの実力を確認するほうが有意義だと判断したらしい。


「そうか。では、一機は俺が使わせてもらう。残りの五機は、第二師団そちらの煉騎士で使ってくれ。五連戦でも、総掛かりでも構わない」

「貴殿一人で五人を相手するおつもりか? アルアーシュ連隊長の手を借りるまでもないと?」


 ハンラハンが不快げに声を低くした。


 ラスの発言は、第二師団の煉騎士が五人がかりでなければ自分とは勝負にならないと告げたも同然だ。師団長であるハンラハンとしては面白かろうはずもない。


 しかしラスは当然だというふうにうなずいて、


筆頭皇宮衛士ガード・オブ・シルバーの実力を見せるためには、それくらいはしなければな」

「舐めやがって……!」


 クスターが激昂して呟きを洩らす。

 そんなクスターに目を向けて、ラスはどことなく含みのある表情を浮かべた。


「ああ、そうだ、ファレル中尉。きみには姉か妹はいないのか? もしいるのなら、ぜひ紹介してもらいたいんだが。ああ、もちろん俺が模擬戦に勝ってからで構わない」

「貴様……! まさかこの勝負に俺の姉上を賭けろというのか⁉︎」


 ラスの発言を勝手に解釈して、クスターの顔が怒りに赤黒く染まる。


極東の種馬ザ・スタリオン……やはり噂どおりの男のようだな! 我ら第二騎兵師団は、貴様のような下劣な人間を筆頭皇宮衛士とは認めぬ! この俺が貴様を必ず斬る!」

「口を慎め、ファレル中尉」


 ハンラハンが部下をたしなめた。うっすらと怒りを滲ませているのはハンラハンも同じだが、彼の場合は、それがラスの挑発だと気づいているのだろう。


「いいでしょう、ターリオン殿。では、明後日の夕刻四時に、第二師団の演習場でお待ちする」

「ああ。中央統合軍セントラルの煉騎士の実力、楽しみにしてるよ、師団長」


 部屋を出て行くハンラハンたちを、ラスは涼しげな笑みを浮かべて見送った。


 そんな男たちの様子を眺めて、カナレイカは深い溜息をこぼすのだった。

電撃文庫『ソード・オブ・スタリオン』キミラノ試し読み

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