第二章 惨禍の再来

 えんらいにも似たごうおんを耳にして──ユウゴは足を止めた。

 じゆつ組合ブロドリック支部の建物から出て、すぐの事である。

「なんだ……?」

 まゆひそめてくもぞらを見上げる。

 またごうでも降る前兆かと身構えたが、しばらくながめていても雲間にいなびかりひらめく様子は無い。

 では道の復旧作業をしていたじゆつ──クレイが、じゆつを使った際の音だろうか。

(でもこんな音したっけか?)

 まるでばくおんのような──かく的な音。

 通常、土木工事等で岩をくだく際のじゆつは、こんなばくおんじみた、しゆんかん的でそうぞうしい音を立てない。ある種のちよう高音をけいぞく的に当てて、岩が自らくずれるようにうながすのだ。

 手っ取り早くばくはつ系のじゆつや火薬でばくしないのは、単純に、へんが飛んできて危ないからである。

 ともあれ──

「どうにもいやな予感がするっていうか──」

 つぶやきながらユウゴはじゆつ組合の支部の方をいた。

 そのしゆんかん──

「──って、おい!?」

 まるでそれを待っていたかの様に、支部の建物の方で二度目のごうおんと、そして白いせんこうふくがった。

ばくはつ!?」

 それもじゆつ組合の支部で。

 ばくはつが何かの可燃物によるもの──つまりはぐうはつ的な事故か、それともじゆつによるじん的なものなのかまでは、さすがのユウゴにも判別がつかなかった。

 だが、何にしてもじゆつ組合の建物で、不測の事態が起きているのはちがいが無い。

「くそ、なんだよこんな時に!?」

 ユウゴはきびすかえしてじゆつ組合の建物に向かってした。

 あそこにはだエミリアがいる。

 しかも彼女はだ昨日の傷がえていない。

(クレイのやつだって作業していた──あんないややつ、友達でも何でもないけど……!)

 顔見知りである事にちがいは無い。

 いや──クレイだけではない。

 ユウゴもじゆつはしくれだ。組合支部の事務所には、ホールデン支部長をはじめとして何人もの知り合いが居る。クレイと共に作業をしていた者達の中にも、ユウゴの知人がいる可能性があった。

(万が一に、クレイのやつが、じゆつの失敗か何かであのごうおんせんこうを引き起こしたのなら──)

 本人達も無事では済んでいない可能性がある。

 そして──

「……え?」

 じゆつ組合の建物に辿たどく前にユウゴは思わず足を止めていた。

 るいるい──と言って良いのかどうかは分からないが。

「な、なんだこれ!?」

 みちばたに何人もの人々がたおれている。

 というより立って歩いている者がかいだ。

 生きているのか死んでいるのかまでは、一見しただけでは分からないが……じんじようの風景でないのはちがいなかった。

 しかも──

「クレイ!?」

 たおれている人々の中に見知った顔を見つけてるユウゴ。

「おい、クレイ? 何があった!?」

「うっ……?」

 短くうめくクレイ。

 彼の額には、てんとうした際にったのか、うつすらと血がにじんでいる。

 あるいは何かで強く頭を打ったのか、クレイの神経質そうなほそは、もうろうとしてしようてんが定まっていない。そばにしゃがんで自分を見下ろしているのがユウゴかどうかも分かっていないようだった。

「おい、クレイ、クレイ・ホールデン、しっかり──」

 とつこしてすろうとして──しかし脳内出血の可能性に思い至ってユウゴは手を引いた。

 彼のしようであるエミリアは、時に事故現場に借り出される事もある。なので彼女の手伝いが出来るようにと、ユウゴはにんの応急処置についても、多少の知識を持ち合わせているのだ。

「くっそ──なんなんだ一体!?」

 もちろん、クレイだけではない。

 一カ所に折り重なって──というわけではなく、通りには点々と町の住人がたおれている。まるで何者かが通りすがりに、次々と──くわした順に、おそかっていったかのように。

 一体、何があったのか。

 クレイには息があった事を思えば、他の者達も死んではいない可能性は在る。だが一人一人その生死を確かめているようなゆうはユウゴには無かった。

 たおれている人々の姿を追っていくと、その『何者か』はちがいなくじゆつ組合の建物に向かっていると分かるからだ。

「…………」

 ユウゴは立ち上がり、じゆつ組合の支部に向かって走り出す。

 クレイの容態は気になったが、本格的なりようとなると、ユウゴの手に余る。専門のじゆつを心得たじゆつや、医者の出番だ。下手に動かさない方がよいだろう。

 それよりも──

「まさか……じゆつこうげきか?」

 じゆもんえいしようだのけついんだのでひまじゆつを、いつしゆんを争うせんとうの現場で使うのは難しいが──あらかじめ入念に準備しておいて、しゆうの手段として使うなら、一度に大勢の人間をこんとうさせる事は可能だ。

 だとすれば──

じゆつが──多分、徒党を組んで町をおそった?)

 それとも目的はじゆつ組合で、町の住人をこんとうさせたのはもののついでか──あるいはじやが入らぬようにか。

(万が一、じゆつの中にしようかんが混じっていたら──)

 じゆつ組合の側に勝ち目は無い。

 しようかんに正面からいどんで勝てるのはしようかんだけ──逆に言えばしようかんしゆうされてはじゆつ組合の側はすべが無い。もちろん、数名の武装したようへいが警備員としじようちゆうしているが、先制攻撃されては満足に応戦出来るかどうかもあやしい。

(エミねえは──しようは戦い方なんて知らないだろうし)

 ユウゴが知る限り、エミリアはてつていしてしようかんじゆうを──エルーシャをせんとうには使ってこなかった。せいぜいががいじゆうぱらった事がある程度である。

 ちなみにエルーシャのであるユウゴも、しようかんじゆうを使ったせんとうほうなんて知らないわけだが……幼いころから、クレイらに『人殺しのむす』だの何だのととうされいんねんをつけられる経験だけはあったので、けんの場数だけは人並み以上にんでいる。

「──カミラ!」

 通りを走りながらユウゴはおのれの相棒をぶ。

「──お呼びですか、我が君」

 かんはつれずユウゴのかたわらのくうに〈ヴァルキリー〉のカミラが姿を現していた。

 ただし──先日と異なり彼女は空を飛ばず、すとんと地に降りると足を使ってユウゴと共に走りだした。つばさは目立たないようにたたまれ、一見すると軽装のよろいを帯びた人間の少女と見分けがつきづらい。

 どうやらユウゴが『勝手にしようかんじゆうを使った』事で𠮟しかられたのを、彼女なりに気にしてくれているらしい。

𠮟しかられたばかりだというのに、また──」

「何度でも𠮟しかられてやるから!」

 カミラの言葉におおかぶせるように言うユウゴ。

「周りを見ろ。下手したら人死にが出る」

「…………ぎよ

 カミラは点々と町の住人がたおれている通りをいちべつして──それから小さくうなずいた。

 そして──

「──!」

 ユウゴはがくぜんと立ち止まった。

 道の先──たり。

 じゆつ組合支部の建物の周りに、二十人ばかりのひとかげが見えた。

 彼等はじゆうけんやりで武装している。

 ただし軍隊の類ではないのもすぐに分かった。着ている服も、帯びている装備も、全く統一がとれていない。さんぞくだのとうだの──いわゆる無法者の集団だというのは、明らかだった。

「……カミラ、そつこうで片づけるぞ」

ぎよ

 おさえたユウゴの声にカミラが応える。

 武装集団は、いずれもじゆつ組合の建物の方を向いており、ユウゴ達の接近に気づいている様子は無い。

 ならばばやく彼等の間合いの内側に飛び込んで暴れ回った方が効果的だろう。何しろこちらにはカミラが──いくさおとたるしようかんじゆう〈ヴァルキリー〉が居るのだから。

(こっちからしゆうしてやる!)

 けんならば先手必勝だ。

 一対多でも、いきなり相手の戦意をくじけば、あるいは相手を引っかき回してやれば、勝てない事も無い。要は相手にれんけいするすきあたえない事だ。それをユウゴは経験上、知っていた。

 だつごとすユウゴとカミラ。

 さすがに武装集団の男達もけ込んでくる二人の足音に気がついて身構えるが──おそい。

「なんだこいつ!?」

 男達が声を上げた次のしゆんかん、ユウゴとカミラは武装集団の真ん中に飛び込んでいた。

 そして──

「──ッ!」

 カミラのつばさが広げられる。

 くうたたいくさおとの白い羽根。うずを巻く風が周囲の男達を押し退け、数名をてんとうさせていた。

 そして──

「おい、こいつしようかん──」

「──〈契約の剣ソードオブプロミス〉」

 つぶやくようなカミラの一言と共に、彼女は一回転。

 けんはなちながらえがくと、けんさきどうに沿ってきようれつしようげきほとばしっていた。

「ぐおっ!?」

「ぎゃっ──」

 男達の間から悲鳴が上がる。

 よろめく者、たおれる者、反応は様々だったが、カミラのしよげきを防いだ者はかい──だれもが体勢をくずしていた。

契約の剣ソードオブプロミス〉はカミラの戦技スキルだ。

 基本、こうげきけんを用いてのざんげきである〈ヴァルキリー〉だが……その本質は見た目通りのものではない。あくまでけんによるざんげきに『人間のには見える』だけだ。カミラのけんじゆつの具象であり、使い方によってはその効果はせんぺんばんする。

 けんせんどうに乗せて放たれたしようげきは、れた者のたてよろいとうしてその肉体を直接たたく。まともにらえばのうしんとうは必至、何とかこらえ、かわしたとしても、全くの無傷というわけにはいかない。

 それこそじゆつで防ぐのでもない限りは。

「このガキっ!?」

だれがガキだっ!」

 カミラの〈契約の剣ソードオブプロミス〉をえてまだ立っている男達には、ユウゴがかる。

 特にかくとうだの何だのの心得はないが、前述の通りけんの場数だけは豊富にんでいる。複数に囲まれてなぐり合った経験も何度かある。だから相手が集団であろうとも、ユウゴは全くひるまない。

 そもそも今のユウゴは一人ではないのだ。

 たのもしい相棒といつしよなのだから。

(まずは一人!)

 もちろん、ユウゴは馬鹿正直になぐり合う様なはしない。

 身体からだしずめ、あしばらいをけ、相手の姿勢がくずれたところを──押すなりくなりしてやればそれでじゆうぶんである。後はそれを上から体重をけてんづけるなりばすなりすればいい。

「ぐえっ!?」

 ユウゴに腹をまれた男がカエルのようにざまな悲鳴を上げる。

 だがほこるでも相手の状態をかくにんするでもなく、ユウゴは次の相手に向かっていた。

 もちろん、男達もユウゴに対応しようと身構えているのだが、先にカミラの〈契約の剣ソードオブプロミス〉をらっているせいで、多くの者があしもとすら定まらずにふらついている。

 そこにっ込んでやれば彼等はおもしろいように転んでくれた。

「こ、このガキ──」

「うぎゃっ!?」

 さらにカミラはもう一度──全包囲に〈契約の剣ソードオブプロミス〉をける。

 武器を構える彼等は、しかしそれを使う事も無く、しようげきらってった。

 使わないというより使えないのだ。ユウゴ達は彼等の集団の真ん中に居るため、かつに武器を使うと味方を傷付けるおそれがある。特に弓矢やじゆうはとても使えたものではない。

 そして──

退しりぞけ、いつたん退しりぞいてきよをとれ!」

 武装集団の中のだれかがそうさけぶ。

 我に返った彼等は、ぼうぎよを固め、一カ所に集まりユウゴ達と向かい合う。けんめいな判断だ。

 だがこの時点ですでに立っている者は、半減していた。

 残り半分は全員、もんぜつするか気絶するかして路上に転がっている。

 もっともこれを多いとみるか少ないとみるかは、その者の考え方によるだろう。もしユウゴが男達を殺すつもりであったなら──カミラにさつりくを命じていたならば、彼等は半減どころか、ぜんめつしていたであろうからだ。

 しようかんしようかんじゆうと戦うとは、そういう事なのだ。

「お前等なんだ!? 何しに来た!?」

 改めてユウゴはそうきつもんする。

 同時にかたわらのカミラがけんかかげると、そのいつせんがどんなりよくを持つのか身をもつて知っている男達は、表情をこわばらせた。

 しかし──

「──何やってんの」

 不意に、ユウゴの背後からあきれたかのような声がかる。

 そのしゆんかん、男達の表情が明らかにあんゆるんだ。

「リゼルじよう!」

「だから、じようって呼ばないで」

「…………」

 かえるユウゴ。

 道の真ん中をゆうぜんと歩いて来るかげが一つ。

 がらで細身の──少女だ。

 暗めのあかしようを身に包み、少しくせのある長い赤毛を黒いひもくくってまとめているかみがた。そのせいかまるで少女は全身にほのおを帯びているかのようにも見える。

 対してそのはだの色は雪のように白く、はくいろりようりんぜんとした光を宿しており、全体としてせんれつな存在感が在った。

 美しい少女だが、ただ美しいだけではない。

 みようはくりよくを帯びている。

 その正体は──

「──しようかん

 つぶやくユウゴ。

 少女の背後には、赤いよろいをまとったきんぱつの青年がっていた。

 人間のように見えるが、人間ではない。少なくとも人間がオーロラのようにらめく光を、その身にまとう事はない。

 しようかんじゆうだ。

(多分……〈らいてい〉だな……)

 今まで、正規のしようかんしようかんに成功したしようかんじゆうについては、じゆつ組合がしようさいな記録を採って共有している。しようかんになるためのしゆぎようけいで、ユウゴはその記録にを通した事があった。

「リゼル、こいつもしようかんだ!」

「……そうみたいね?」


 リゼルとばれた少女がを細めてねこのように笑う。

 うすくちびるが開いて口元に小さな八重歯が見えた。

「丁度いいわ。一方的にらすのもそろそろきてきたところなのよね。ねえ、バーレイグ?」

「…………」

らいてい〉らしきしようかんじゆうは無言でリゼルの言葉にうなずく。

「あんたのしようかんじゆうは〈ヴァルキリー〉なんだ?」

 リゼルも一目見てユウゴの相棒の正体をいたらしい。

「衛士隊があっさりぜんめつしちゃったんで、ちょっと欲求不満なの。君はあの脳筋連中より、少しは骨があったりするかな?」

「…………」

 ユウゴは息をむ。

 町の治安を預かる衛士達のつめしよは、このブロドリックの町に数カ所在るが──確か少女がやってきた方に本部が在ったはずだ。

(つまり……本部の衛士全員を?)

 彼女の言葉がハッタリではないのだとすれば、武装集団の連中とは別行動をして、衛士達を──総勢百名以上の、せんとう訓練を受けた武装兵士達を、片づけてきたという事になる。

(……つまり準備ばんたんって事か……)

 最初からこの町をおそうためにこの連中は準備をしてきたのだ。

 そしてじゆつ組合と衛士つめしよをほぼ同時におそった。

 自分達のじやが出来るだけの力を持った相手を、れんけいさせる事無く、最初につぶしにかったのである。

「私と遊んでくれる?」

 リゼルという名の少女しようかんは、そう言って──再びねこのように、にんまりと笑った。



「しっかり──」

 重傷を負ったホールデン支部長にかたを貸しながら、エミリアは支部の一階へとつながる階段を降りていた。

「…………」

 ホールデン支部長は歩いてはいるものの、意識はもうろうとしているようで、エミリアの声にも返事をしない。

 二度目のばくはつの際──建物そのものに対してけられたこうげきに巻き込まれたらしく、エミリアはろうまみれでたおれていた彼を見つけたのである。

 彼女のわきにはづかわしげな表情の〈フェアリー〉エルーシャがっている。

 支部長が受けた傷はエルーシャの力で応急処置を済ませてはいたが、流した血の量が多く、傷をふさいだだけでは安心出来ない状態だった。

 改めてかに運んで輸血するなり、〈浄化の手招きピユリフイケーシヨン〉以外にもりようのためのじゆつかさけしなければならない。

 ただ──

「…………」

 エミリアの表情はきようっていた。

 ホールデン支部長を巻き込んだ二度目のばくはつ

 あれは、しようかんしようかんじゆうによるものだった。

 爆発の直後、二階の窓から飛び込んできた彼等は、支部長を傷つけたのみならず、たのしげに笑いながら、その場に居たエミリアにもこうげきけてきた。

 これに対しエミリアは──エルーシャをび出して〈水柱アクアハリケーン〉と〈睡眠スリープ〉のれんげきしようかんしようかんじゆうを制圧した。

 とつの対応としては見事なものだったろう。

 十四年ぶりのせんとうならなおさらの話である。

 ただ──

(あのしようかんしようかんじゆう……死んでない……よね……?)

 とつの事で手加減が出来なかった。

睡眠スリープ〉は基本、の名の通りねむりを対象に強制する力で、殺傷力は無いと言われているが──いきなりこんとうするためてんとうして頭を打つ、骨を折る、という事は有り得る。

 先の〈水柱アクアハリケーン〉でめい的な傷を負っていたという可能性も在る。

 何にしても──

(私は……私やユウゴは……せんせいみたいにはならないっ……!)

 簡単に人を殺せる力がある。

 だから人を殺す──それはケダモノくつだ。

 理性在る人間だから、その力を持っていたとしても、ぎよして、えて使わない──それがしようかんの、いや、人間の在り方なのだとエミリアは考えている。

 こんぼうものだって最初は武器であったのだろう。

 だがそれで同じ人を傷つけ殺すのではなく、別の使い方をして、他者と手を取り合い、より豊かに生きる方法を、大多数の人は選んだ。

 出来るからする、ではない。

 出来てもしない、えてやらない、からこそ別の道を見つけられる。

 料理を作ったり。

 田畑を耕したり。

 病気を治したり。

 絵画をえがいたり。

 …………

 だから人間の世界には文明があり、だからしようかんじゆう達とも力を合わせて栄える事が出来るのだ。エミリアはあの日以来、そう自分に言い聞かせてこの十四年間を生きてきた。

 だが……

「──!」

 ホールデン支部長と共に、階段を降りきって一階のゆかあしを降ろす。

 何かが燃えているのだろう。一階には白いけむりくさにおいが立ちこめ、時折、ほのおのものらしい光がらめいては消える。

「…………」

 まるで十四年前のあの日の再来のように、何もかもがあいまいで……自分はだあの悪夢にとらわれているのかとすら、エミリアは思った。

 そして──その、何もかもをおぼろかすませるけむりの向こうに、見覚えのあるかげを見て、エミリアはこおいた。

「マクシミリアン……!」

 通路の先、の真ん中。

 そこにひようぜんと立っているのは〈ウェポンマスター〉ことマクシミリアン、すなわちエミリアのしようオウマ・ヴァーンズのしようかんじゆうだった。

「…………」

 いや。先にオウマの姿を見ている以上、ここにマクシミリアンがいる事には何も不思議は無い。おどろくにはあたいしない。エミリアが身をこわらせたのは、十四年前のまわしいおくと現在がつながったからだ。

 いちげきで人間の首をねたしようかんじゆう

 いや。一体でじゆつ組合の人間を半数以上、せんめつしたバケモノ。

 あの時の再現だ──とでも言うかの様に、今、マクシミリアンの周囲にはじゆつ組合の人間の死体がいくつも転がっていた。生死は確かめるまでもない。首を切り落とされて生きていられる人間は居ない。

「エミリア──」

「だ……だいじよう

 こみ上げてくるを無視し、気力をしぼって声をけてくるエルーシャにうなずく。

 ここで気絶してしまったら、かたを貸しているホールデン支部長まで死なせる事になってしまうからだ。

「──おや」

 血と、そしてもののげるにおいと……それらが混ざり合ったせいさんな空気にはおよそ似つかわしくない、おだやかな声がけられる。

「エミリア──ですか? 久しぶりですね」

 十四年ぶりに耳にする師の声。

 エミリアはわきばらの古傷が再び痛み始めるのを感じていた。

「息災でしたか?」

 かつて自分がエミリアに対して行った事を忘れ果てたかのように、やわらかながおでそう問いながら、エミリアのしようだった人物は──オウマ・ヴァーンズは堂々とじゆつ組合の建物に足をれてきた。

 当時と異なるのは……今、彼の左右には人間の男女が一人ずつ付き従い、さらにはしようかんじゆうが一体ずつずいこうしている事だった。

 ほのおごとれるあおたてがみけものは〈イヌガミ〉。

 がいこつめいた顔をしたべにごろもひとかげは〈グリムリッパー〉。

 共に先に、事務所の二階から見たしようかんじゆうだが──

しようかんが……三人……いえ、先の一人をふくめれば四人……)

 それははや、完全武装の兵士千人とでもわたえる戦力だ。

 おそらくオウマの左右の男女はしようかんだろう。

 しようかん一人につきしようかんじゆうは一体。

 それはかつて天才と評されたしようかんオウマも、そして同じく師にせまる実力があるとされたエミリアも、くつがえす事が出来ない絶対的な『決まり』だった。

「十五……いえ、十四年ぶりでしたか。久しぶりのていの再会ともなれば、積もる話もあるかもしれませんが──」

 オウマの口調はやはり落ち着いていて、何の色も帯びていない。

(この人は……)

 やはりもう人の心を持っていない。

 この話しぶりは──別にたちの悪いかいぎやくでも、あくを気取っているのでもない。完全に素だ。

 本当に何の罪悪感もこの男はいだいていない。

 そも十四年ぶりに再会したエミリアに対してける言葉がそれか。

 実の子であるユウゴの事にげんきゆうすらしない。おそらく彼の事など興味のはんちゆう外なのだろう。

せんせい……)

 オウマ・ヴァーンズとは、元々こういう人間だったのか。それにおろかな周りの人間が気がつかなかっただけなのか。

 それとも妻と死別した時に、ひそかに変わってしまったのか。

 そこまではエミリアにも分からないが──

「私は少々急いでいましてね。話はまたの機会に。それよりもゼロ番倉庫のかぎわたして欲しいのですが」

ゼロ番倉庫──」

 このブロドリック支部に限らず──各地のじゆつ組合の建物は、たいてい、地下に『ゼロ』の番号がられたとくしゆな倉庫を備えている。

 およそ考え得る限りにがんじように作られたそこには、じゆつ組合によって『いつぱんじんにはあつかいきれない危険物』と判断された品が保管──いやふういんされているのだ。

 当然、つうの人間は出入り出来ない。

 組合所属のじゆつが、自らの肉体を──『生きた人間』の持つりよく特性そのものを『かぎ』として登録し、ゼロ番倉庫のとびらかいじようする。

 エミリアもホールデン組合支部長も共に登録者だ。

 かつてはオウマもその登録者だったが、当然、十四年前の一件以来、彼の登録はまつしようされていた。

いまさらいまさら何の用なのですか、せんせい──いえ、オウマ・ヴァーンズ!」

「まさに、まさにいまさらですね」

 オウマはを閉じて、過去に思いをせるかのように言った。

「私とした事が初歩的な失敗をしてしまいました。探し求めていたものが、実は始まりの地に在ったなど──」


 ──ごうおん


 するどくも重いそれが、オウマの言葉をさえぎった。

 それも──いくつもの音が重なり合って。

(あれは──)

 け構造になっている──その二階部分の張り出しろうで、いつせいライフルを手にした男達が二十名ばかり、立ち上がるところだった。

 かつこうからしてじゆつ組合が警備としてやとっているようへいだろう。

 しゆうげきしやしようかんだと知って、警告無しにいつせいしやげきけるという行動に出たのだ。エミリアと組合支部長が、オウマ等と一定のきよがあった事も──せいしやに巻き込まれる可能性が低い事も、彼等が不意打ちにった理由だろう。

 基本的につうの人間はに武装していたとしても、しようかんしようかんじゆうの組み合わせには勝てない。つうの人間同士の戦いとはことわりちがうのだ。

 だからこそ一方的にこうげきするしか──しゆうこうげきしか、つうの人間がしようかんしようかんじゆうに勝つ方法が無い。

 しかし──

たたけろ!」

 指揮官らしきようへいがそう指示を出す。

 屋内でのはつぽうの際にせんこうで目がくらんだか、しようえんさえぎられて、オウマ達の状態がかくにん出来なかったのか。あるいは単に念には念をという考え方からか──ようへい達のライフルは上下二連じゆうしんなので、二発まではかんはつれずにつ事が出来る。

 だが──

げ──」

 エミリアの声は届かない。

 彼女の位置からはオウマをふくめた三人のしようかんしようかんじゆうが、無傷である事が見て取れた。〈イヌガミ〉と〈グリムリッパー〉、それに〈ウェポンマスター〉が同時に動いて、じゆうだんの雨を防いだのだろう。

 いつしゆんの事だったので、それぞれどう動いたのかはエミリアにもにん出来なかったが──これがしようかんじゆうの強み、単なる『武器』とは異なるおそろしさだ。

 彼等はあくまで意思を持った生き物であり、この世界のことわりからも半ば外れた存在である。そして必要とあればあるじであるしようかんを守るために独自に動く事が出来る──


 ──二度目のごうおん


「──〈無影乱舞シヤドウレスダンス〉」

 マクシミリアンのつぶやきは、耳をろうさんばかりのじゆうせいの中でも、かはっきり聞き取れた。

 同時にマクシミリアンが身に着けているいくつもの武器が、持ち主の身体からだからはなれて空中にかびがる。

 けんおのじゆうやり

 それらがいつせいに二階に向けて──張り出しろうようへい達に向けてさつとうしたのは次のしゆんかんだった。〈ウェポンマスター〉の名はではない。マクシミリアンにとって身に帯びる武器は全ておのれの手足に等しいのだ。

「うおあっ!?」

 まるでばくれつしたかのように二階の張り出しろうほうかいする。

 ようへい達はばされ、あるいはマクシミリアンのきよう身体からだを切り刻まれて、れきと共に一階へと落下していた。

 そこに──

ちくしろ!」

みなごろしだ!」

 しようかんの命令を受けて〈イヌガミ〉と〈グリムリッパー〉がはしった。

「ぎゃああああっ!?」

「くそっ、やめ──」

 だ息のあるようへい達は、武器をかかげて応戦しようとするが──

「……うふ。うふ。……〈グリムサイズ〉」

 その骨丸出しの身体からだの、から声を出しているのか。

 どくがおの〈グリムリッパー〉は笑いながらようへいの一人の首をそのおおがまると──殺した相手の命の力を得てちよう高速化、近くに居たもう一人にかっていた。

「~~~~ッ!」

〈イヌガミ〉も同様──一人目をころしたかと見えたしゆんかん、時間が止まったかのようなちようこうそく移動で、もう一人におそかっている。

 一人を殺す時間で二人を殺す。

 二人を殺す時間で四人を殺す。

 そういう理外のかいぶつ達なのである。

 つうの人間が──たとえ数と武器をそろえても勝てる道理が無い。

 しかし……


 ──じゆうせいかんはつれずに二度。


「──おや?」

 オウマがまぶたを開いて首をかしげるのと──彼の左右に立っていたしようかんらしい男女が、たおれるのは同時だった。

 彼等の側頭部には小さな穴が──じゆうそうがぽつんと穿うがたれていた。

「あれは──」

 オウマがふと顔を上げる。

 エミリアも彼が目を向けている先に視線をやって──気がついた。

 少しくせでくすんだきんぱつようへいが一人、ほとんほうらくした張り出しろうはしに引っかかっている。

 彼が──しようかん達をげきしたのだろう。

 ようへいは予備のものらしいライフルを投げ捨てると、身軽な動きでくずれ残った張り出しろうの上に登る。

「──ッ!!」

 二体のしようかんじゆうが、二階に向けてちようやくするが──しかしその姿は空中で確固たるりんかくを失い、またたくうけて消えていた。

 しようかんという『因』を失い、そこからのりよく供給を失ったしようかんじゆうは、この世界にとどまる事が出来ないのだ。

「へっ──」

 ようへいくちはしに野太いみをかべる。

 張り出しろうざんがいに片手でぶら下がった状態、しかも片手保持のライフルで、屋内とはいえ二人をげき、射殺してのけたのだ。

 それだけでもようへいとしては相当なすごうでだと分かる。

 だが──

「さすがにあれは少し、うるさいですね、マクシミリアン?」

 オウマがつぶやくように言う。

けてください」

「……ぎよ

 たん、とゆかって二階の高さにまでがるマクシミリアン。

 きよを置いての不意打ち以外に、つうの人間がしようかんじゆうに真正面から相対して勝つ方法は無い。ようへいは次のしゆんかんには、マクシミリアンに首をねられている──はずだったが。

「──こんのバケモノっ!」

 ようへいが、とつに、ふところから取り出した何かを投げる。

 次のしゆんかん──せんこうほとばしった。

「──!」

 それはようへいとうてきした何かのりよくか、あるいはマクシミリアンのこうげきりよくか、それとも、その両者がぶつかり合った相乗効果なのか。

 ばくおんが組合の建物全体をるがし、しようげきが広がる。

「くっ──」

 エミリアとエルーシャは、負傷したホールデン支部長共々、たおされないようにぼうぎよするだけでせいいつぱいだった。



『いざ戦いとなればしようかんしようかんにしかたおせない』

 しばしば人々の口に上る話である。

 だがこれは厳密に言えば『あつかう力の大きさ』や『しようかんじゆうによるこうげきばやさ』のみを問題にしているわけではない。

 しようかんには知識が在る。

 しようかんじゆつあつかう上で当然の事だが、しようかんは基本的にしようかんじゆうについてしつしている。過去にしようかん達が行ったしようかんの記録にを通し、多種多様なしようかんじゆう達の生態や能力についての情報をたくわえている。

 自分自身がしようかんしたしようかんじゆうけいやくを結ぶ際、そうした知識が無ければあつかいを誤る事も在るからだ。宝のぐされになるならだ良い方で……たがいにりよくつながっているため、しようかんしようかんじゆうそうほうすいじやくしてしまう場合すら在る。

 ゆえに──しようかん同士が戦う場合、相手のしようかんが連れているしようかんじゆうについて、一見しただけでも『どんな能力が在るのか』について想像がつくし、そこから『どんなこうげきけてくるのか』『どうそれを防げばよいのか』についても思い至りやすい。

「──ッ!」

 せんこうはしる。

 文字通りに光の速さで〈らいてい〉から飛んで来たいなずまを、しかしユウゴとカミラはかろうじてかわす事が出来た。

「あぶねぇ……!」

 勢い余ったか、あおい白いいなずまれた路面でぱちりと音を立ててねるのを見て、ユウゴはつぶやく。

 もちろん、光にまさる速度で動けるはずが無い。

 ユウゴらがかい出来たのは、〈らいてい〉相手だといなずまが来る、と先に心構えが出来ていたからである。

 かみなりを投げてくるえんきよこうげき型の〈らいてい〉はかくとう戦型の〈ヴァルキリー〉に対して自ら近づいてくる事は無いはずだ。ならば相手がねらいを定めるしゆんかんきわめて、そのしゆんかん退けば、相手のこうげきくうを切る。

 くつではそうなのだが──

けたわね」

 と〈らいてい〉のしようかんらしき赤毛の少女──『リゼルじよう』と呼ばれていた──は、必殺であるはずしよげきをかわされても、さしてあわてた風も無く、むしろたのしげにみすらかべている。

「少しはたのしめそうじゃない?」

「俺はたのしみたくなんかないんだよ!」

 言いながらユウゴは身構える。

 リゼルのわきでバーレイグと呼ばれていた〈らいてい〉が、次のこうげきの準備をしているのが見えたからだ。リゼルの方に意識を向けたままだと、かいおくれる。むしろリゼルはリゼルでそれを期待して、わざわざ、せんとうの最中に話しかけてきているのだろう。

「じゃあ次は──」

 とリゼルは首をかしげて。

「〈落雷ライトニング・ストライク〉のれんげき、いってみようか」

 その言葉と同時に〈らいてい〉の持つつえが、せんこうを発する。

「──っ!」

 立て続けの五れんげき

 とつにユウゴとカミラは、近くの建物から路上に張り出していた、大きな看板のかげかくれる。看板は木製だが、それだけにぜつえん性は高いはず──と読んだのである。じゆうぶんいなずまを防ぐたてになり得る。

 ただ──

「──ぐあっ!?」

 次のしゆんかん、ユウゴは全身に走るきようれつな痛みに、思わず声を上げていた。

 足がもつれて、その場にてんとうする。身体からだの感覚が半ばしていて思うように動かない。

 これは──いなずまらったのか。

 だが、確かに防いだはず──

「お馬鹿」

 とリゼルが笑う。

「雨の日に〈らいてい〉と戦うのがどれだけぼうか、考えなかったの? しようかんのくせに?」

「我が君!」

 立ち上がる事も出来ずにもがくユウゴを、カミラがかかえてかびがる。彼女はこうげきらっていないようだが──

(……路面か!)

 れんげき。文字通りにまたたたたける連続こうげき

 だがいつしゆんで五回のいなずまを、同じ場所に向けて発する事に、意味は無い。れんげきは同じこうげきを続けるのではなく、みように角度やてんを変えるからこそ相手をめる事が出来るからだ。

 そして──先に〈らいてい〉が発した五れんげきのうちの二発は、やや下向きに放たれていた。ユウゴがたてにした看板ではなく、れた路面に命中し、そこを伝わり、ユウゴの足をがる様にして彼を痛めつけたのだ。

 カミラが無傷なのは、彼女が空中にかんでいたからだ。

 彼女にかかえてもらったユウゴは、もう路面を伝わるらいげきらう事は無いが──カミラ単身での移動に比べるとどうしても速度が落ちる。

 また、いかにちよくげきはしていないとはいえ、しようかんしようかんじゆうつながっている以上、カミラも、ユウゴの感じた痛みもしびれや一部は味わっているはずだ。

 次はかわせるかどうか。

(くっそ……けんとは勝手がちがうか、やっぱり)

 なぐいでいなずまを投げてくるやつは居ない。

 ただ──

「これじゃあ、次でもう終わっちゃうね。つまんない。君、もうちょっとがんって、私に対しようかん戦の経験、積ませてよ?」

 とリゼルはゆうみをかべながらそんな事を言ってくる。

 ユウゴにつけ込むすきがあるとすれば、彼女がユウゴを『容易たやすたおせる相手』とめてかかっている内だが……

(……待てよ?)

 カミラにかかえられて移動しながらふとユウゴはある事に思い至って口の中でじゆもんを唱える。〈遠見ユニバーサルスコープ〉のじゆつだ。

(あいつは衛士隊をぜんめつさせたって言ってたな)

 これだけのさわぎで一人の衛士もけつけてこないところを見ると、それははったりではないのだろう。

 だが……それが本当だとして。

 百人以上の衛士を、一人ずつらいげきたおしていったわけでもあるまい。そんなゆうちような事をしていたら、むしろ回り込んだ衛士に弓矢なりじゆうなりで背後からこうげきらいかねない。

 かくとうせん型である〈ヴァルキリー〉のカミラですら、対集団こうげき用の戦技スキルを持っているのだ。〈らいてい〉がその種のこうげき手段を備えていないはずがない──容易たやすけられる『点』ではなく『線』でもなく、かいそのものがきわめて困難な『面』をこうげきする戦技スキルを。

 ではそれを使って一気にユウゴとカミラをはらわない?

 ユウゴとカミラを目で追うばかりで、リゼル自身はさきほどから、全く動いていない。〈らいてい〉もしようかんを守る必要性からか、同様だが──

(……やっぱりか)

遠見ユニバーサルスコープ〉のじゆつでユウゴは視点を変えて現場を真上から見下ろす。

 最初にユウゴとカミラがたおした無法者達、十人余りがあちらこちらにたおれたままである。残りの十人は、ユウゴらの相手をリゼルらに任せ、仲間を救護する事も無くすでじゆつ組合の建物の中に入っている。

めんこうげき、しないんじゃない──出来ないんだ)

 めんこうげきを──はんこうげきをすれば、仲間を巻き込む。

 そもそもたおされていなかった十人がリゼルらのえんに回らずじんそくに現場をはなれたのも、自分達の存在が足を引っ張りかねないと理解していたからだろう。

ゆうかましてべらべらしやべってるのも──)

 実際には、ユウゴが移動してリゼルらから見て『こうげきしやすい』位置に来るのを待っているのではないか?

(路面がれてるから、さっきみたいに、『たて』をかいしていなずまがこっちをこうげきしてくるけど……)

 その一方で、れた路面にれた〈落雷ライトニング・ストライク〉のりよくは急速に拡散し、そのえいきようはんいちじるしく縮小してしまう。

 逆に言えば、リゼルらは、一定のりよくで単体こうげきをしている限り、こうはんに〈落雷ライトニング・ストライク〉のりよくが広がって仲間を巻き込む可能性は低いのだ。

 だから──

(間にたおれた連中をはさんでやれば、あいつら、こうげきしにくいんだ)

 ならば戦いようはある。

「──我が君」

 づかわしげに声をけてくるカミラ。

 彼女に──

「……俺の言った通りに動いてくれ」

 ユウゴはそうささやいた。



 じゆつ組合ブロドリック支部地下──ゼロ番倉庫。

 そこにはじゆつ達が、いつぱんじんにはあつかいかねると判断した品々が厳重に保管されている。

 その内訳は旧時代のじゆつ達が造り上げた遺物がほとんどだ。


「かつてのしようかん達、私達の先達は、相争う中で、世界をほろぼしかけた事があるそうです」

「その『世界めつぼうの危機』に際しては、大戦争もかくやというほどの死傷者が出て、無数の町や村が焼かれたのだとか」

「なので後世の人々はその一件を『だいさいやく』と呼んでいます」


 具体的に何がどう起こったのかは……じかに知る者はもう居ない。

 またしようかん達の『暴走』による暗黒時代の記録は、人命と共にその多くが失われ、じゆつからんだ多種多様な技術も、失われて久しい。

 だからこそ『だいさいやく』以前のものとおぼしきせきからのはつくつひん、回収品は、まずじゆつ達の元に運ばれて検査・検分されるのが常だ。

 そして『危険性は無い』と判断された品は、市場に出回る。

 一方で『危険性が在る』と判断されたもの、あるいは『危険性があるかどうか判別がつかない』ものは、ゼロ番倉庫に保管される。

 そして……


「市場に出回る〈だいさいやく〉以前の品は、たいていの場合に高値がつきます。じゆつ組合の重要な収入源の一つですね」


 もう手に入らない、失われた技術の産物ともなれば、こう、権力者、そういった者達が金に糸目をつけずにしがるからだ。

『旧時代の遺品』は今や『宝物』と同義。

 当然、じゆつ組合からごうだつしようと考える者も出てくる。

 そうしたらちものげき退たいするために、ゼロ番倉庫にはたいてい、『倉庫番』が居る──それ自体が旧時代の遺品とも言われる存在が。

 すなわち……

「──ふむ」

 オウマは首をかしげてまえの二体のきよだいな『倉庫番』をながめた。

 彼のすぐ横には此処ここに来るちゆうで拾った、年配の女性が一人、転がっている。かつこうからしてじゆつ組合の関係者だ。

 ゼロ番倉庫を開けるための『生きたかぎ』として〈ウェポンマスター〉に引きずらせ、連れてきたわけだが……無理をさせたせいか、あるいは雑なあつかいで頭でも打ったか、『かいじよう』作業のちゆうで死んでしまった。

 その結果、ゼロ番倉庫への不正なしんにゆうこうされたらしく『倉庫番』が起動してしまったようだった。

 すなわち──

「相も変わらずストーンゴーレムの『倉庫番』ですか」

 ストーンゴーレム。

 石の身体からだを備え、人間に倍するたけと、人間とはけたちがいのりよりよくを備えた自動人形である。

 さきほどまでそれら二体は、そうとびらりようわきにそびえる石の柱だったのだが……今やそれらは、ぎちぎちと音を立てながら、組木細工の様に部品をえて変形──たたまれていた両手をばして、彼につかみかかろうとしていた。

「経験から学ぶという事を知らないのでしょうか。単なるていたいを伝統とえて得られるものが何かあるとでも?」

 人間などいつしゆんにぎりつぶせる石のてのひらが左右からせまってくるというのに、オウマにあわてた様子は無い。

「ああ、それとも、ストーンゴーレム以上の『倉庫番』を用意できなかったのかもしれませんね。それは気の毒な事です」

 そう言うオウマのかたに石の指がれた──そのしゆんかん


 ──ぎぢっ!


 岩がこすれ合いきしむかのような異音。

 次のしゆんかん、ごつりと音を立てて、ストーンゴーレムの手は、手首から切断されて落下、ゆかにめり込んでいた。

 右も左もほぼ同時に──だ。

「…………」

 言うまでもなくオウマのそばはべるマクシミリアンのわざである。

「マクシミリアン。任せましたよ」

 そうオウマが告げ、マクシミリアンは小さくうなずく。

 うでを落とされたとはいえ、血も通わぬ石像は、痛がりもしなければひるみもしない。

 それどころか──ストーンゴーレム達が落ちたうでを拾って、切断面を合わせると、どういうくつまたたき二つ三つの間にこれらは接合し、その指が元通りに動き始めた。

 ごうおんと異音が地下の通路にひびく。

 ごつりごつりと岩のこすれ合う音を立てて、先にもまさる勢いでマクシミリアンにつかみかかるストーンゴーレム達。


「…………」

 だがマクシミリアンもまたひるむ様子も無く、そのりよううでに武器をたずさえてストーンゴーレムのこうげきはじき、あるいは受け流して、そこからこうげきへとつなげていった。

 火花が散り、せきへんが飛び、打音がひびく。

 マクシミリアンとストーン・ゴーレム二体は、まるで三体そろっておどっているかのように、たがいに位置を変えながら、うでり、一定の調子でち合っていく。

 しばらくはきつこうしているだろう。

 その様子をいちべつしてから、オウマはじゆもんを唱えてとびられた。

 やがて──

「──ふむ」

 ぱちん、と何かがはじける音がひびいたその後、分厚い鉄製のとびらが、音もなく左右に開いていく。

 のうみつやみった内部をさらゼロ番倉庫。

 そこにオウマはちゆうちよなく足をれた。

「…………」

 続けてオウマはまた別のじゆもんを唱える。

 ほどなくして彼の頭上にじゆつの明かりが──こうきゆうが生まれる。それは歩みを進めるオウマに付き従い、彼の頭上に定位し続けた。

「……さて」

 ゼロ番倉庫の中には三列のたなが在った。

 かべぎわの二つと真ん中の一つ──そこに、あるものは布に包まれて、あるものは硝子ガラスびんに入れられて、またあるものは鉄の箱に入れられて、何十何百の『遺品アーテイフアクト』が安置されている。

 その全てを持ち去ってはらえば一生遊んで暮らせるだけの財が手に入るだろう。

 だがオウマはそれらの『遺品』には興味が無いようだった。

 彼は迷う事無くぐ倉庫の奥へと向かい──真ん中のたなはしで足を止める。

「…………おや?」

 オウマはうすやみの中で目をまばたかせた。

 彼がを向けた先には、てのひらに乗るほどの四角い箱が在る。

 まるで宝石箱のような造りのそれは、しかしすでに開いていた。

 中身は──無い。

 布張りされたその中には、大きめの硬貨コインか、さもなければ何かの勲章メダルを収めていたとおぼしき丸く浅いくぼみが二つ残っているだけだ。

「よもや──すでに?」

 そうつぶやいて首をかしげるオウマ。

 彼の背後で──二体のストーン・ゴーレムがそろってのうかくつらぬかれてたおれたのは、次のしゆんかんだった。



「──ねばるわね」

 赤毛の少女しようかんリゼルはユウゴらをそう評してきた。

 すでに彼女と〈らいてい〉バーレイグのこうげきを、ユウゴとカミラはギリギリながらも、五回にわたってかいしているからだ。

遠見ユニバーサルスコープ〉のじゆつで上から彼女と自分の位置をかくにんし、間にたおれている無法者が来るようにして『たて』にする。

落雷ライトニング・ストライク〉のいなずまが飛んで来た際には、カミラがユウゴを引っ張っていつしゆん、空中にげる事で、れた地面を伝わってくるこうげきかいする。

 これをユウゴらはかえしてきたのだが──

「さすがにちょっとイラッときたかな」

 と言うところを見ると、そろそろ『経験を積む』だの『たのしむ』だのというゆうが無くなってきたのかもしれない。

「〈遠見ユニバーサルスコープ〉のじゆつでおたがいの位置をかくにんして、私の仲間を『たて』にしてるんでしょ。まあ時間はかせげるわね? かせいでどうするのか知らないけど。かから助けでも来るのを期待してたりする?」

「…………」

 だが──

らちがあかない)

 ユウゴはユウゴでれていた。

 リゼルの言う通り──これはかんかせぎにしかなっていない。

 こうげきをかわす事は出来ても、こうげきに転じられなければ勝ちは拾えないのだ。まさかこのまま延々と、日が暮れるまで戦い続けるわけにもいくまい。りよくも集中力もそれまでにきる。

やつかいだな……)

 カミラはざんげきを『飛ばす』事が──えんきよこうげきも出来る。

 だが、これはけんる動作をともなう。

 なので、バーレイグの〈落雷ライトニング・ストライク〉よりもこうげきが相手に届くのがおそい。放つのが同じじゆつの力である以上、バーレイグの放ついなずまがこれを空中でたたとす事も可能だ。実際、カミラは二度ばかりえんきよこうげきけているが、いずれもあっさりいなずまげきついされていた。

 やはりじゆつい、投げ合いでは、〈ヴァルキリー〉よりも〈らいてい〉にがあるようだ。

(どうにかしてこっちの間合いに──かくとう戦の間合いに持ち込めれば)

 そうすれば勝機はある。

 だがそのすきが──どうにも見いだせない。

 リゼルと〈らいてい〉バーレイグは感覚を同調させているらしく、四つのが常にユウゴ達をえているからだ。

 かつに近づけばそくに〈落雷ライトニング・ストライク〉のちよくげきらうだろう。

(こんな事なら、エミねえに土下座してでも、対しようかん戦の訓練をしておくべきだったな……)

 そもそもユウゴはしようかんしようかんじゆうを相手に戦うのは初めてだ。

 けんの経験は豊富でも、同じ町の住人相手に、しようかんじゆうもちろんじゆつを使ってこうげきするわけにもいかない。

 エミリアがこれを厳しく禁じていた。

 彼女はあくまで『人々の役に立つ』『みなの生活を支える』事にしようかんの力を使う事にこだわっており、しようかんになる事を決めたユウゴにも、しようかんじゆうを戦いに使う事を──それが訓練であっても許さなかった。

 今、ユウゴがしゆんさつされずにねばっていられるのは、単にけんの経験と、しようかんとしての知識と、それに生来の頭の回転の速さがっただけの……いわばぐうぜんの結果に過ぎない。

 ただ──

「君、かくとうせんの間合いに持ち込めば勝てる──とか思ってるんでしょ? 〈ヴァルキリー〉は近接かくとうが強いものね?」

 かしたかのようにそんな事を言ってくるリゼル。

「じゃあやる? かくとうせん?」

「──!?」

 おどろくユウゴに、リゼルはてのひらを上に向け、指を折り曲げて『招き』の仕草をしてみせる。かかってこい。そう言っているのだ。

 何かのわなか。だが──

「我が君──」

「いくぞ、このままじゃ勝ち目が無い」

 ユウゴは相手のさそいに乗る事にした。

 わなならわなで──自信満々でけたそれを食い破られれば、相手には大きなすきが出来るはずだ。

「──ぎよ

 カミラはそう応じて──したユウゴに並んで飛ぶ。

 再びれた路面をいなずまが伝わってくれば、しゆんにユウゴを引っ張りあげられる位置である。

 だが──

「──勝負っ!」

 カミラがけんを構えて前に出る。

 彼女がねらうのは言うまでもなく〈らいてい〉バーレイグの方だ。

 リゼルらのこうげき力は全てしようかんじゆうたる〈らいてい〉にっている。そして〈らいてい〉のこうげきである〈落雷ライトニング・ストライク〉はいなずまの投射──相手とのきよがあまりに近ければ、しようかんであるリゼルまで巻き込みかねないもろつるぎだ。

 つまりかくとうせんに持ち込んだ時点でカミラの勝ちである。

 そう──考えたのだが。

「──ッ!」

 れつぱくの気合いと共にカミラのけんよこぎにバーレイグをおそう。

らいてい〉は空中にかんだまま、特にこれをかいする様子も無く──

「甘い」

「──!?」

 あろう事か。

 バーレイグは手にしたそのつえでカミラのけんざんげきを受け止めていた。

「そんな馬鹿な!?」

 思わずさけびながら──しかしユウゴももうまれない。

 彼はしつそうの勢いそのままにバーレイグにかっていた。

たおす事が出来なくても注意をそらせれば!)

 そう思っての事だったが。

おそい」

 そんな言葉と共につえたん──いしき部分がされ、ユウゴの胸部を強打していた。

「ぐあっ!?」

 苦鳴をらしててんとうするユウゴ。

(なんだ、このはやさっ!?)

 カミラのような『わざ』で武器をっているのではない。だがおそろしいほどの速さでバーレイグは動いている。それがカミラのこうげきを難なく防ぎ、結果的に単なるつえの一打を、もうれつな強打にえているのだ。

 これは──

「我が君!?」

 と悲鳴じみた声で彼を呼ぶカミラに、バーレイグのるうつえようしやたたけられる。くうに残像のを引くほどの速度でせんかいしたそれは、カミラをもそのまま地面にたたせていた。

 れた路面に二人そろっていつくばるユウゴとカミラ。

 それを見下ろしながら──

「〈ヴァルキリー〉はかくとうせんが強い。そうね。その通り。でも〈らいてい〉が──私のバーレイグが、かくとうせんに弱いなんてだれが言ったの?」

「…………」

「種明かししてあげましょうか?」

 リゼルはうでを組んでそう言った。

「〈〉──」

「あれ。知ってた?」

 とリゼルは首をかしげる。

「私が強化のじゆつけてあげるとバーレイグは『知識』を習得する。まあ知性派しようかんじゆうめんもくやくじよってところかしらね?」

「…………」

 ユウゴはそれ以上は声も出ない。

 代わりに、よこだおしになってあえぐ彼の口からこぼれ落ちたのは──血だ。

「バーレイグの『知識』は自身の能力を強化し、応用する。〈らいてい〉はいなずまを投げるだけが能だと思ってた? おあいにく。神経の上を走ってるのも電気──いなずまの一種よ。だからバーレイグはこれをあやつって自分自身の『速度』を速める事が出来る」

「…………」

「それと。別の使い方をすれば、いなずまの『あみ』を作って物にかぶせる事も出来る。このあみは物の『補強』に使えるのよ。どうして岩でもはがねでもれちゃう〈ヴァルキリー〉のけんを、つえで防げたのかと思ったでしょ? 『あみ』は強化にも使えるし、『向き』を反転させてやれば、相手のこうげきはじせきりよくとしても使え──んん? ちょっと難しかった?」

 ユウゴが反応しないのを見て──リゼルはわずかに身をかがめて彼の様子をうかがってくる。

「折角説明してあげてんだから、がたきな……って血いてる? え、死にかけ?」

「折れたろつこつが肺を傷つけたのだろう」

 と言うのはそのろつこつを折った当事者のバーレイグである。

「出血量にもよるが、手当をせねばおのれの血でおぼれ死ぬ事もある」

「うわっ──」

 とリゼルは顔をしかめて。

「どうしよう、バーレイグ?」

「どうも何も。手当をしてやる義理はないが」

 と〈らいてい〉は素っ気ない。

 しようかんちがって彼は『敵』の生死には興味が無いのだろう。

「うーん……」

 一方でリゼルはいまさらのようにこんわくの相を見せている。

 どうやら彼女はユウゴを殺すつもりはなかったらしい。

(……考えてみれば……らいげきも……)

 ユウゴがそくする強さではなかった。

 先にユウゴに『かんかせぎ』うんぬんと言っていたが、彼女こそ他の者達が目的を果たすための時間をかせいでいただけだったのかもしれない。

「…………」

 ユウゴがくちびるふるわせる。

「え? なに? 何か言い残す事でもあるの?」

 と顔を近づけるリゼルに──

「──つかまえ……たっ……!」

 ユウゴがばした右手がかかった。

「え? ちょっ──」

 間のけた声をらしたリゼルの顔に──というかあごにユウゴのきが決まったのは次のしゆんかんである。

「みぎゃっ!?」

「リゼル!?」

 とさすがのバーレイグもあわてたように声を上げるが、次のしゆんかん、地面からきたカミラのけんが、彼の首をねらってせんかいする。

「──!」

 バーレイグがつえかかげてこれを防ぐものの──

「〈落雷ライトニング・ストライク〉は……やめておけよ……〈らいてい〉……!」

 くちはしから血をこぼしながらの、せいぜつな相でユウゴが告げる。

しようかんを……巻き込むぞ……もちろん……この密着状態だと……速さも……関係ないよな……?」

 リゼルのえりくびつかんだまま、そう言って笑うユウゴ。

 最初にとつげきした時から、ユウゴがねらっていたのはこれだった。

「こ……こんのっ……!」

 と左手であごを押さえながら、右手でユウゴをなぐるリゼル。

 だが先にユウゴがバーレイグに言った通り、たがいに密着状態だとそもそもうでを大きくれず、りよくが出ない。もっともがらな少女のわんりよくでは、れたとしても大したりよくは出ないかもしれないが。

 やがて──

はなせ、はなしなさいっ!?」

だれが……はなすかっ……!」

 そんなおうしゆうをしながら、おたがいにつかみ合った二人はごろごろとれた路面を転がっていく。

「…………」

「…………」

 たがいにけんせいしている状態なので、しようかんじゆう二体はといえば、その場を動けず、これを見送るしか無い。

 しようかん同士も、しようかんじゆう同士も、それまでの戦いがまるでうそであったかのように、実にどろくさくてざまな状態だった。

 そして──

「ああもう、バーレイグ!」

 転がりながらリゼルがれたさけびを上げる。

「巻き込んでもいいから、私ごと〈落雷ライトニング・ストライク〉をこいつに当てて!」

「…………」

 しゆんじゆんいつしゆん

 割り切りは良いのか、しようかんの命令には絶対服従なのか、バーレイグはカミラのけんつえで受け止めたまま、そのせんたんに光をともす。

落雷ライトニング・ストライク〉のいなずまを放つ前兆だ。

 このままの体勢からでもバーレイグは問題無くいなずまを放てる。カミラはけんを引こうとするのだが、バーレイグの『あみ』にからめ取られているのか、けんつえからはなれない。

 まずい状態だ。このままでは良くて相打ち。悪ければけつで体力が落ちているユウゴだけが死ぬ可能性もある。

 ただ──

「──!?」

 そんななかに。

 まるで──場の空気をじんも読んでいないかのように。

「…………」

 ふらふらとした足取りで、じゆつ組合支部の建物から出てくるがらひとかげが一つ。

 それは──白銀のかみをした、一人の少女だった。

「──おいっ!?」

 思わず──飛沫しぶきと共に、悲鳴じみた声をユウゴは口かららしていた。

 その白銀のかみの少女は、あろう事か、彼やリゼルと、バーレイグらの間に割って入ったのだ。

 このままではず少女が〈落雷ライトニング・ストライク〉をらう。

 リゼルをも巻き込むのが前提の〈落雷ライトニング・ストライク〉であれば、そのりよくは殺傷能力を押さえ込まれているはずだが──とつぜんの事態に動転しているユウゴはそこまで察するゆうは無い。

 彼は──

「危ないっ……!」

 とつにリゼルから手をはなして、ぎんぱつの少女に飛びついていた。

 彼女を両手両足でかかえ込んで、今度はまた別方向に転がっていく。

(くっそ、しくじった……!)

 思わず少女をかばってしまったが。

 考えてみれば、これは結局〈らいてい〉の前に『どうぞこうげきしてください』とおのれぎんぱつの少女の身を差し出したに等しい。

 むしろリゼルを巻き込むおそれが無くなった分、バーレイグはえんりよ無くこうげきが出来るだろう。

 ただ──

「…………?」

 まゆをひそめるユウゴ。

 こうげきが──らいげきが来ない。

 代わりに何か空気のうなりのような音が聞こえてきて──

「なんだ?」

 げんの表情をかべて顔を上げたユウゴは──すぐまえに、自分達をかばうようにしてそびえる、水の柱を見る事になった。

 じゆれい千年のきよぼくにも等しい大きさのそれは、ユウゴ達をはずだったいなずまを、高速回転するおのれの内にからめ取っていた。

「エルーシャの〈水柱アクアハリケーン〉──エミねえ!?」

 じゆつ組合支部の建物の方をかえると──そこに、かたひざをつきながらエルーシャと支え合っているエミリアの姿が見えた。

 エルーシャは水属性の〈フェアリー〉だ。

 彼女は自由自在に水をあやつる事が出来るので、水を用いていなずまどうを曲げたり、逆に混じりっけの無い純水を生み出していなずまさえぎぼうへきとする事も可能だ。

 エミリアはせんとうにエルーシャを使うのをかたくなにこばんでいたが、だからこそ、こうしたぼうぎよに特化した使い方には精通している。

 しかもエルーシャの〈水柱アクアハリケーン〉は──たつまきの様に回転しながら少女しようかんらの方へと移動を始めた。

 それはすなわち、移動する『たて』だ。

「…………」

らいてい〉バーレイグは、カミラを解放し、リゼルのそばへと空中をすべるようにして移動──これをかばいながらもさらに、〈落雷ライトニング・ストライク〉のいなずまを放ってくる。

 だがそれらは全て回転する〈水柱アクアハリケーン〉に巻き取られ、さえぎられて、ユウゴ達には届かない。

「……ユウ……ゴ……」

 エミリアがユウゴ達の方にを向けてくる。

 かなり無理をしているのだろう、彼女の顔はひどく青ざめており、その呼吸は熱病にでもかかっているかのように、あらい。

 だが──今は姉の所にっているゆうは無い。

 というよりユウゴはユウゴで、激痛とひんけつすでに今にも気を失いそうだった。

 もう長くはたない。

 ならば──

「カミラ……!」

 ユウゴはぎんぱつの少女から身をはなして、おのれしようかんじゆうに声をけた。

「──ぎよ

 以心伝心──ことさらに言葉にせずともカミラはユウゴの考えをくみ取ってくれたらしい。彼女はユウゴの背後に回って彼をわんかかえると、地をり、つばさを広げて──かつくうした。

 地面すれすれのちよう低空飛行。

 だがそれゆえに二人は水柱アクアハリケーンかげかくれ、いなずまたれる事も無く、一気に相手とのきよめていた。

「ちょっ──えええええ!?」

「──なに!?」

 眼前にせまったユウゴ達を前に、ろうばいするリゼルと〈らいてい〉。

 とつに〈らいてい〉はつえかかげてカミラのりかざすけんたいこうする。自らのいなずまで加速しているバーレイグは、難なくカミラのざんげきを止められるはずだったが──

「──弱い」

 着地したカミラのつぶやきと共に放たれる、下段からのすくい上げるようなざんげき。これを受けたつえはじかれ……手放しこそしなかったものの〈らいてい〉は大きく姿勢をくずす事となった。

 空中でのざんげきと、地に足を着けてのざんげきでは、そも、りよくちがう。

 加速しているとはいえ、『受け止める』バーレイグの力は、変わっていないので、彼はカミラのざんげきおさえきれなかったのである。

 さらに次のしゆんかん──

「──ら……えっ!」

 ユウゴは自らのさけびと共に『射出』されていた。

 カミラがその外見に似合わぬりよりよくで──しようかんじゆうとしてのかいりきで、わんかかえていたユウゴをぶん投げたのである。

「──うあっ!?」

らいてい〉をかすめ、すっ飛んでくるユウゴを前に、目を丸くして固まるリゼル。そこに──ユウゴがカミラにかかえられている間にじゆもんえいしようしていたじゆつさくれつした。

ブラスト〉のじゆつである。

 ユウゴがたった二つだけ使えるじゆつの一方。

 だが見た目の派手さに比してそのりよくは──殺傷力は低い。

 だからユウゴも、これでリゼルを殺したり傷つけたりするつもりはなかった。

「ひあっ!?」

 じゆつが発動したしゆんかん、ユウゴとリゼルのきよは、ほぼ無いちようきんきよ──密接状態でこれをらった少女しようかんは、いつしゆんにして目を回していた。

 しかも……

「だああああああああっ──」

 射出されたユウゴはユウゴで、目的を果たしたからとその場に停止する方法があるでもなし──彼は、リゼルに対して再びき気味にしようとつしていた。

「ぎゃんっ!?」

「ぐおっ──」

 二人して悲鳴を上げると、ユウゴと少女しようかんはまたも、からまり合うような体勢でごろごろといつしよに転がっていった。今度は共に意識がもうろうとしているのか、がつんごつんといしだたみの路面で痛そうな音を立てながら転がっていく

 ざまな事この上無い。

 だが──

「リゼル!」

 しようかんぬしの方をかえる〈らいてい〉。

 その首筋に、を立てない、カミラのけんこんぼうごとち込まれたのは次のしゆんかんであった。

「………ぐっ?」

 しようかんじゆうといえど、人と同じ姿をしている以上、人と同じ弱点を持っているという事か。〈らいてい〉はがくりと姿勢をくずした後、その場にひざまずき──

「ぬ…………」

 カミラの方をうらめしいちべつして──消えた。

 しようかんぬしが急に気絶した事で、供給されるりよくりようがいきなり半減したためだろう。自身の存在をこの世界でするために、りよく消費の少ない状態に自ら移行したのである。

「…………」

 ほっとためいきをつくカミラ。それから彼女は少しはなれたところで少女しようかんと共に転がっているユウゴの方へ視線を向ける。

「我が君!」

「…………」

 だいじようだと示すかのように、ユウゴのこぶしが上がるのを見て──カミラはもう一度、今度は胸に手を当てて長いためいきをついた。



「──我が君。動かないで」

「ユウゴ、オトナシクシテテ」

 カミラとエルーシャ──二体がかりで〈応急処置〉と〈浄化の手招きピユリフイケーシヨン〉、系の力を、重ねけしているしようかんじゆう達。

 重傷にもかかわらずユウゴがじっとしていないので、彼女等は文句を言いつつも彼にってを続けていた。

 とりあえず肺の出血は止まったようだが──

「えっと……だいじようか?」

 ユウゴは改めてぎんぱつの少女に歩み寄ってそうたずねた。

「…………」

 ぎんぱつの少女は……なおじようきようが分かっていないのか、ぼんやりとした様子でその場に座り込んでいる。

 としころは十代前半だろうか。

 短めに整えられた銀のかみ、大きくつぶらなへきがんはなちにはゆがみもかたよりも無く、顔のりんかくはといえばれいな卵型。

 せいにしてれん

 まるで──めいしようの手になるせいな人形のように、いつさいすきが無く美しい容姿だった。

 ただ美しすぎて生身のぞくしゆうに欠けるというか……か人型のしようかんじゆうにも似た、ばなれしてちようぜんたるふんがそこにはあった。

 人によっては『近寄りがたい』と感じるかもしれない。カミラやエルーシャで『人ならぬ美しい少女』に慣れているユウゴは、さすがにこのぎんぱつの少女を前にしても、おくれするような事は無かったが──

「…………」

 ぎんぱつの少女は──無言でユウゴを見つめている。

 その顔にはおそれやあせりの表情は無く、まるで夢でも見ているかのようにひとみしようてんすらあいまいゆるんでいる。

「おい。だいじようか? 俺の声が聞こえてるか?」

 ひょっとして先のばくはつか何かで頭を打ってもうろうとしているのだろうか。

 そんな風にも思ってユウゴはもう一度、声をけてみたのだが。

「我が君の顔がこわいのでは?」

 と──横からカミラが言ってくる。

「は? 俺の顔?」

まみれですが」

「あ、そっか」

 とユウゴは合点してうなずく。

 そんな彼を前にして──

「問題ない。です」

 ぎんぱつの少女は一度またたきしてからそう答えてきた。

「そうか。ええと、見ない顔だけど、君は──」

「問題ない。です」

「…………」

 何かのカラクリの様に、同じ言葉を同じ口調と同じこわかえぎんぱつの少女。

 じゆつ組合支部の建物から出てきた事を思えば、じゆつ組合の関係者なのだろう。そしてユウゴもじゆつはしくれ、じゆつであるなしにかかわらず、組合の関係者とはたいてい、顔見知りである。

 なのにこのぎんぱつの少女には全く見覚えが無い。

「──名前は?」

「カティ。です」

 今度はそくとうである。

 ただし何かそのしやべり方にはみようよくようというか……ぶつ切りにした単語を並べているかのような、たどたどしさが在った。

「カティ──名前か。せいは?」

せいはない。です」

「…………」

 言葉にまるユウゴ。

 自分も『実の親が居ない』という事もあって、このカティという少女にそれ以上、家族に関連する話をただすのが躊躇ためらわれたのである。

「……とりあえず、カティ」

 周囲を見回してユウゴは言った。

 戦いは一段落ついたが、少女しようかんふくめ、気絶した武装集団は十名ばかりこの場にたおれたままだ。いつ息をかえしてくるか、細かい事まではユウゴにも分からない。

「ここは危ないから、少しはなれててくれ」

「危ない? 少し? ちゆうしよう的かつあいまいな命令は実行しにくい。です」

あいまいって──ああもう、いいから、この建物が見えない辺りにまで行ってくれ」

 と言ってユウゴはじゆつ組合と反対の方向を指さす。

りようかいした。です。実行する。です」

 こっくりとうなずくとカティはすたすたと通りを歩いて行く。

「いや。だから──おい、急いで、あし!」

りようかいした。です」

 とユウゴがさけぶと、カティはとたたたた、とかろやかな足音を立てて走って行った。

 本当に分かっているのかどうか少しあやしい感じだったが、ユウゴとしては、いつまでも彼女にかまけているわけにはいかない。

「我が君」

「分かってる」

 うながしてくるカミラにうなずくと、ユウゴは大きく一階と二階のかべくずれたじゆつ組合の建物の中へとけ込んだ。

「エミねえ! じゃなかった、しよう!」

 ユウゴはエミリアのところった。

 さきほどは〈水柱アクアハリケーン〉でユウゴ達を助けてくれた彼女だが──今はかべに背中を預けるようにして、座っていた。

「ユウゴ──」

 ユウゴの顔を見てあんしたのか──彼女はふっとを閉じる。

 どうやらめていたものが切れて、意識を失ったらしい。

 彼女が気絶した事でりよく供給量が半減したからか、ユウゴにっていたエルーシャの姿が、空中でけるようにして消えた。

「エミねえ──」

 ねんのため、エミリアの首筋に指をれさせて脈をとる。とりあえず呼吸もみやくはくも安定はしているようだ。小さなきず切り傷はあるようだが、そくの手当が必要な深い傷、大きな傷も見当たらない。

「でもどうする、ここにこのままにしておくわけにも」

 周囲にはこれ以上無いというくらいに明らかな死体が──首をねられたむくろいくつか転がっていた。

 先のリゼルという名の少女しようかんちがって、じゆつ組合の建物にとつにゆうした連中は、これを見る限り、殺人に対してちゆうちよしないやからだという事が分かる。

 そんなやつが──あるいはやつが、うろうろしている様な場所にエミリアを置いていくわけにはいかない。

 だからといってエミリアだけ連れてすわけにもいかない。

 クレイ同様、個々人に好感を持っているかいなかはさておいても……ユウゴはじゆつ組合の関係者はほとんどが顔見知りだ。

 彼等もまた殺されるかもしれないというのに、無視して自分達だけでげるようなはしたくなかった。ましてやしようたるエミリアがそれを許しはしないだろう。

「むしろ敵対する相手を制圧してしまう方が早いかとも」

 と──カミラが提案してくる。

「我が君と私だけで全ての負傷者を保護するのは無理です」

「……それは、そうだな」

 確かにその通りだ。

 しかも先にリゼルが言っていた事が本当なら、衛士達のつめしよは彼女にしゆうげきされてみな、制圧済み──死んではいないかもしれないが、身動きがとれない状態の者がほとんどだろう。

 だとすると、これ以上、事態が悪化しないよう、しゆうげき者達を確実に制圧しておく──というのは、最初に採るべき一手として悪くない。

 そう考えて、ユウゴは立ち上がり──

「──!」

 そこでけむりの立ちこめる奥から、二つのひとかげが歩み出てくるのをにんする事になった。

「あれは──」

 けむりの中から姿を現したのは、しようかんらしいそうねんの男性と、それに付き従うしようかんじゆう──どうやら〈ウェポンマスター〉らしき者が一体。

しようかんがいたのか……いや、居て当然か)

 リゼル以外にもしようかんがいたからこそ、彼女は本隊よりはなれて衛士つめしよ本部の制圧という仕事を任されたのだ。

「カミラ」

「──ぎよ

 身構えるユウゴにカミラもうなずいてけんを構える。

 その様子を見て──

「──おや」

 そうねんの男性は首をかしげた。

「それは〈ヴァルキリー〉ですね。リゼル達の言っていた二人のしようかん一人はエミリアで──もう一人が君ですか」

 その口調には何のきんちよう感も無い。

 このじようきようで身構えるユウゴ達が何を考えているのか、分からないほどおろかなわけでもないだろうに、まるで『お前達などおそるるにあたいしない』とでも言うかのように、身構えるでもなく、従えるしようかんじゆう共々、たいぜんじやくとしている。

 それが──ユウゴには少々腹立たしかった。

「何だあんたは。何者だよ、何を考えてこんな事してんだよ」

 ユウゴはいどかるような口調でそう問うた。

「そもそも、あんたエミねえの事を知ってるのか? どういう知り合いだ?」

「エミねえ? ああ、エミリア・アルマスの弟ですか?」

 男はユウゴの問いには答えず、何やら自分の中の知識をかくにんするかのようにうなずいている。

「まあ、あれから十四年もっているのだから、君くらいの弟が居ても不思議ではないですが──」

「答えろよ、あんた何者だ、何を考えて──」

「ああ、失礼」

 男はしようかべて言った。

「オウマ・ヴァーンズ、見ての通りのしようかんです。もっとも公的資格はすではくだつされて久しいですが、ね」

「……なんだって?」

 今、この男は何と言った?

 オウマ──『ヴァーンズ』?

 それはつまり……

「……我が君」

「…………」

 づかわしげにカミラが声をけてくるが、ユウゴには返事をするゆうが無かった。

 胸の内で心臓がねる。

 どくんどくんとおのれどうみみざわりなほどに感じられた。

 同じヴァーンズせい。十四年前。エミリアの知り合い。

 それらの情報が導き出す結論は一つしか無い。

 つまりこのまえの男が──

「はぁっ……はぁっ……」

「──我が君!」

 胸を押さえてあらい呼吸をかえすユウゴにあわててうカミラ。

 だが──

「カミラ──」

「──はい」

「こいつら、ぶちのめす、ぞ」

「…………」

 カミラは何か言おうとしたが。

「──ぎよ

 しようかんぬしに従うのがしようかんじゆうだ。

 彼女は何かをるように小さく首をると、改めてけんを構えてそのつばさを広げた。

 ──だん!

 とゆかって男に向かい飛び出すユウゴとカミラ。

「おや?」

 ユウゴ達の反応がむしろ意外だったのか、男は再び首をかしげていたが──彼のしようかんじゆうは、それよりも先に動いていた。

 ユウゴ達と男の間に割り込むと、両手の武器をかかげる。

 ながやりたいけん

 それらはカミラのけんと同様、『そう見えている』だけの、実体はじゆつ的な別の何かである。カミラがざんげきを飛ばせるのと同じく、それらの大きさは間合いとは関係が無い。

 ゆえに──

「──!」

 先手必勝、とばかりにカミラがけんり降ろす。

 彼女のけんから放たれたざんげき──飛ばされた切断のじゆつが〈ウェポンマスター〉へとさつとうした。

 しようかんじゆうしようかんじゆうでしかたおせない。

 逆に言えば人間たるしようかんは同じ人間でもたおせる。

 ならば自分は〈ウェポンマスター〉をおさえ、オウマと名乗った男はユウゴに任せる──そういう割り切りだ。先のリゼルらとの戦いと基本的には同じである。

 だが……

「…………」

 ぶぉん、と音を立てて〈ウェポンマスター〉がながやりる。

 次のしゆんかん、見えない何かを引っかけ、からめ取ったかのように、ながやりの周囲の空間がゆがみ、そして、音を立ててはじけていた。

 カミラのざんげきだ。単なる武器の打ち合いのようにも見えるが──しようかんじゆうじゆつ的なこうげきを、同じくじゆつ的な力で防いで流したのである。

 しかも──

「──っ!?」

 わるようにしてされるたいけんの一げき

 とつげきしているユウゴとカミラには、これをけるすべが無い。

 とつに──カミラはつばさで羽ばたいて急制動、つまさきでユウゴの服のえりを引っかけていた。

 引っ張られて、がくんとユウゴの姿勢がくずれる。

 ざんげきの場合、間合いを変えればかい出来る可能性が上がる。

 そう判断しての事なのだろうが──

「──うおっ!?」

 たいけんの一げきは、ざんげきではなかった。

 それは上下左右に広がるしようげきとなって──めんこうげきとなって、ユウゴ達の方へと押し寄せていた。

 こうなればけるけないどころの話ではない。

 カミラのおかげで、しようげきに正面からっ込む事は無かったが、ユウゴ達はあみのようにしてせましようげきを完全にかいする事は出来なかった。

「…………!」

 高々とばされる二人。

 カミラは背後からユウゴをめてくれたが、そのつばさで勢いを殺すところまではいかず、二人はかべげきとつする。

「ぐはっ──」

 肺から空気をしぼされて、あえぐユウゴ。

 彼とカミラは、そのままかべからすべちて──

「く……そ……」

 急速に赤黒く染まって閉じていく視界。

 その中で、ゆうぜんと立つオウマ・ヴァーンズをにらみながら──ユウゴはいかりとくやしさに歯ぎしりしていた。

『サマナーズウォー/召喚士大戦1 喚び出されしもの』 発売記念キャンペーン

関連書籍

  • サマナーズウォー/召喚士大戦 1 喚び出されしもの

    サマナーズウォー/召喚士大戦 1 喚び出されしもの

    榊一郎/toi8/Com2uS/木尾寿久(Elephante Ltd. )/Toei Animation/Com2uS

Close