じつは義妹でした。 ~最近できた義理の弟の距離感がやたら近いわけ~

第3話「じつは義弟とゲームをすることになりまして……」(1)

 あきらたちが引っ越してきてから数日が経った。

 兄弟仲良く、とはいっていない。なんとなくだが、ぎこちない日が続いている。

 というのも、晶は基本的に部屋にこもりがちで、顔を合わせるのは食事のときと、晶がなにか用があって部屋から出てきているときぐらい。

 今日もたまたま晶とリビングで会ったのだが──

「晶、ゲームしようぜ」

「遠慮しとく。転入試験明後日あさってだし」

 ──と、この調子。どことなく距離を置かれている感じがする。

 いまだ現状は進展していない。

 それはそうと、晶は俺の通うゆう学園に転入することにしたそうだ。前の高校まではうちから片道一時間以上かかるとのことで、偏差値的にも同じくらいのうちに決めたらしい。

 同じ学校に通うとなると、登下校が一緒になったりするかもな。

 うえきょうだいのように──あそこの兄妹はそこまで仲がいわけではないが──一緒に登校できたらそれはそれで楽しいかもしれない。

「じゃあ勉強教えてやろうか?」

「大丈夫。一人でできるし、甘えたくないから」

「そっか、なら頑張れ」

「うん」

 素っ気ない態度だが、これはいつものことなので気にしていないし、徐々に慣れてきた。

 晶は基本的になんでも一人でやりたがる。

 それは俺も一人っ子で育ったからわからなくはない。

 ただ、もう少し接点を持ちたいというか、仲良くしたい。

 そこで俺は兄として先輩にあたる人物に電話して助言を求めた。

「──って感じなんだ。こうせい的にはどう? どうしたらもっと弟と打ち解けられると思う?」

『知るか。訊く相手を間違えてんだろ』

 まあたしかに光惺に訊いた俺がバカだったな。

『つーか、うち、妹だしな』

「だよな。なんでお前に相談したんだろう?」

『切るぞ』

「ちょ───っと待った! だったらさー……」

『なんだよ?』

「年下の男子と仲良くするにはどうしたらいいと思う?」

『年下の野郎に興味ない俺はどう返したらいい?』

 つくづく相談事に向かないやつだ。

 まあ、予想はしていたが、それにしても、それにしてもである。

『……つーか、べつに適当でいいんじゃね? 無理に積極性出すと逆に引かれるぞ?』

「まあ、そうかもなぁ……」

 光惺に言われて最近のことを振り返ってみる。

 たしかに晶にアプローチをかければかけるほど、どんどん距離が離れていっているような気がする。そうは思いたくないが、逆効果なのかもしれない。

『お、ちょうどいいところに──』

「え? 光惺、どうした?」

 多少間が空いたと思ったら、

『──え、ちょっ──お兄ちゃん!? ──も、もしもし? りょう先輩ですか?』

 いきなりひなたが電話に出た。

「ひなたちゃん? 光惺は?」

『あははは、お兄ちゃんが私に代われって言って〜……』

 あの野郎、また妹に押し付けたな?

『それで、先輩、悩み事ってなんですか?』

「ああ、いや、それがさ──」

 俺はひなたにこれまでの経緯を説明した。

『なるほど、としの近い弟さんともっと仲良くなりたいってことですね?』

「うん。なにかいい方法はないかな?」

『まずは共通の趣味を見つけるっていうのはどうでしょう?』

「共通の趣味か……」

 それは俺も考えたが、晶は一向に教えてくれない。自室にこもってなにをしているのかは不明だ。勝手に入って嫌われたくないし、どうやって共通の趣味を見つけるべきか。

「それすら教えてくれなさそうなんだけど……」

『なら、協力者にくのがいいかもしれませんよ?』

「協力者? ──ああ、そういうことか!」

 協力者──さんだ。母親ならなにかと息子の趣味について知っているというわけだ。

「わかった。ありがとうひなたちゃん」

『こちらこそお役に立てて良かったです!』

「助かったよ。光惺に代わってくれる?」

『わかりました。──お兄ちゃん──代わってって──』

 また多少の間が空いて光惺が出た。

『ひなたのアドバイスは役に立ったか?』

「ああ、お前の数千倍な」

『だったら次からひなたに直接電話しろ』

「それは、ちょっと……」

『は? なんで遠慮してんだよ?』

「それは、ほら……お前の妹だから……」

『じゃあ、俺が兄貴じゃなかったらひなたと直接連絡取り合ってたのか?』

 痛いところをつくやつだ。俺が女子に電話する度胸なんてないって知っているくせに。

「それは仮定の話で……。つーかお前的にはどうなんだよ? 俺とひなたちゃんが連絡取り合ってたら兄として嫌じゃないか?」

『べつに。誰と誰が連絡取ろうが俺には関係ないし』

「お前ってつくづくドライだよな〜……」

『お前が人間関係を勝手に複雑にしてんの。もっと単純に物事を考えろ』

「それ、お前に一番言われたくないやつ……。むしろお前はもうちょい物事を複雑に捉えた方がいいぞ?」

『あっそ。じゃあもう切るからな。──それと、たまにはひなたにLIMEとか電話してやれ。じゃあな──』

 光惺はまくしたてるようにそう言って電話を切った。

 俺からひなたちゃんに連絡をとれ? 面倒事をそうやってなんでも彼女に押し付けるのは感心しない。

 そもそも、ひなたは皮肉なしで本当に『良い子』なのだ。

 訊けばなんでも答えてくれるだろうし、頼めば嫌なことでも引き受けてくれる。そんな彼女に俺がいつも甘えるわけにはいかない。ひなたは便利屋ではないのだから。

 ……そうは思いつつも、晶のことで悩んだらひなたに相談してみるのも有りかと思った。

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