木々の合間をけると、視界一面に色とりどりのが広がった。

 そこははなぞのだった。遠くにふんすいが見え、それを中心に円形のだんいくにも重なっている。

 広場以外にもほこるアーチや、背の高い草木と合わせた花のめいがあった。たまにのぞいて見える半球状の天面を持った建物はガゼボだろうか。

 ふんすい飛沫しぶきが陽光を受けて金のつぶのようにかがやいて見える。

 何かに引き寄せられるようにえんんだ。

 そこはみように身体がふわふわと軽いことに気が付く。れんきの地面をんでいるかんしよくがまるでない。あきは不意に、これは夢なのだと思い至る。

 いくつも並んだのアーチを進むと、太陽が決まったリズムでかくれては現れる。それを手で作ったひさしでさえぎり、目を細めた。

 やがて、あざやかな花のトンネルが切れて、その奥から石造りのガゼボが現れる。

 そこには先客がいた。

 あきは目を見開く。

 そこにいたのは、これまでに見たこともない白金色のかみをした、目鼻立ちのハッキリした少女だった。

 はだは雪のように白く、ほっそりとした手足が病院服に似た制服からびている。

 そして何よりも美しかったのは、その白金色のかみと宝石のようにれいあおひとみ──。

 いちじんの風が巻き起こり、はなびらる。

 これはただの夢じゃない。おくなのだ。

 れたフィルムがせきてきに像を映したような、思い出のざん

 そう自覚したたんあきの意識はまどろみの海からじようする──。



 どこまでもけるような深くあおい空と、純白の入道雲。

 その美しい対比の中で、新緑にいろどられた木々がよくえる。

 その緑のりようせんの向こう側に見えるのは、れいきようちよう高層ビルが織り成す灰色のてんろうぐん。四十年前にはいされた都市で、無数のだんこんほうらくあとがかつてのえいうばっている。

 あきは昨日も戦っていた街のりんかくを横目に、さわやかな夏の風を感じながらしばの上にころんでいた。

 ──なつかしい夢だった。

 に目を細めて思い返すのは、さっきまで見ていた夢ののこ

 あきれいきようぜんしよう基地に配置されている子供たちは、全員同じ場所で育った。

 その場所の名は《パティオ》。

 あきが今見ていた夢は、そのパティオで生活していた時のものだった。

 たびかさなる記憶転写オーバーライトえいきようなのか、あきは幼少のころおくがほとんど無い。かつての思い出がよみがえるのは、今ではもう夢の中くらいしかない。

「あーっ、こんなところにいた!」

 そんなきようしゆうにも似たかんがいひたっていると、不意に黒いかげが顔に落ちてくる。

 視線を上げると、そこにはよこがみを編み込んでいつも以上に洒落しやれこんでいるが立っていた。

 の金色のかみが陽光を受けて、今日は一段とキラキラかがやいている。長い間続いている戦場暮らしの中でおぞましい光景ばかり見てきたことのへいがいだろうかと、ひとり心の中で首をひねった。

「こんな時間からもうひる?」

「心を休めてるんだ。連日連戦でろうこんぱいなんだよ」

 は毎日のせいさんせんとうをこなしているとは思えないほどさわやかながおで、あきの手を取ってくる。

「ねえねえ、アキもビーアサルトやろうよ」

 そうして彼女の口から出てきた単語にあきは思わずしかめっつらをした。

 ビーアサルトというのは、複数人が小型の航空ドローンをあやつってたがいの機体をげきついって点数をきそうスポーツのことである。

 時として何十機というドローンがいくものドッグファイトを織り成す景色が、まるで巣をつついたはちのような挙動からそう呼ばれていた。

 多様なタスクを同時にこなすへいれつ演算の訓練にもなるため、ビーアサルトについてはこうした空き時間に興じることが軍からにんされている。基本的にらくの少ない兵士の間ではメジャーな遊びの一つなのだ。

 しかし、あきはこのスポーツをけていた。

 理由は単純。

「……いやか? 俺がへいれつ演算、とことんダメなの知ってるだろ」

〈ニューラルゲート〉の演算において、あきは一つのタスクをこなす直列演算であればだれよりも速く行えるのだが、一方でへいれつ演算はからっきしなのだ。

 そしてそのことをは分かっていてさそっている。

 彼女の目的もきわめて明解。

 たいてい、ビーアサルトはけをともなう。その日の食堂のデザートからおもいを寄せる相手のポートレートデータまでとその内容はわたる。しかし、あきは過去の参加で一度たりともそれらを手に入れたことがない。

「そりゃあ、いいカモ……って言うか、おさい……って言うか、そうっ、いい盛り上げ役じゃん!」

 の純真ながおかがやく。

 あきは上体を反対側にたおして必死にあらがった。

「絶っ対にいやだ! これ以上、俺から何をしぼろうって言うんだよ!」

「うーん、今度は〝一日足をマッサージしてくれる券〟でどう? 最近、ライガー隊は生存率高いから身体ボデイつかれがまるんだよねぇ。みんな喜んで参加を認めてくれると思うよ? ほら、アキが入ってくれればメンバーとのいい交流になるし、チームワークが向上することちがいなしじゃん!」

「そう言って何度カモられたことか! この前は〝一日しつになってくれる券〟でその前は〝一時間に何か一個めてくれる券〟だろ? ただでさえせんとうつかれてんのに、基地にいてまで労働するのはいやだ!」

「まあまあ、これも隊員サービスだと思って」

「そんなサービスがあってたまるか!」

 しかもたいてい、その券を勝ち取っていくのはなのだ。

 は特段電子戦にひいでているわけではない。しかし、彼女が最も得意とする戦術は不意打ち。敵味方入り乱れるじようきようで、混乱に乗じて敵の背をつのがだれよりもうまい。

 そんな彼女にとって、このビーアサルトという競技は格好のえさである。

ごうじようだなー。今日は賞品の中に、アキの大好きな対戦車ブレードの新型試作機おためしチケットもあったよ? しかも、しんらいと実績のテレサ社製」

「む……」

 食指が動きそうになり、しかしこれもわなであると首を横にる。

 テレサ社と言えば、世界最大の軍産複合ぎようのことだ。

 いかなる勢力にも属さない中立ぎようのスタンスを取っているがゆえに、世界中のどの戦場でもテレサ社の兵器が使用されている。ここれいきよう戦線においても同様で、エルメアのみならずローレリアの装備もその多くが同社の製品である。

「そんなものじゃられないぞ。試作機ってやつは、たいてい問題があるから試作機なんだ。俺は現行機で十分だよ」

「私もずいぶんけいかいされたもんだなー」

ごろの行いが悪いからだ。……にしても対戦車ブレードなんてマイナーな兵装でもハイペースで新機種を開発してるなんて、流石さすがテレサだな」

たま一発からえいせいほうまでワンストップでお届け──だっけ? あの超まずいレーションもテレサ社製なんだからすごいよね」

 そんなふうにと笑って話しながら、あきは内心でほっと息をついた。

 ──よかった。こうして笑っていれば、今まで通りにふるえる。

 だん通り快活だ。どこかさぐるような様子もない。

 りようたろうの二人とは、かれこれ十六年の付き合いになる。

 なるべく心配はさせたくなかった。

 しかし、そう思っていたあきおだやかな胸中を乱すものがあった。

 あきの脳内にけたたましい電子音がひびき、視界に真っ赤にいろどられた『きんきゆう通信』の文字が現れる。

 本部からのきんきゆう連絡である。

いち、今すぐに第一小ライガーたいの面々を集めてくれ』

 回線を開くと同時、低い男の声が脳にひびいた。

 がばりと立ち上がり、グラウンドのほうを見やる。

 あきを除いた他二十一名の隊員たちは、混戦する二機のドローンを囲んでかんせいを上げていた。どうやらりようたろうと隊員の一人とが最後のいつちにいどんでいるらしい。

 異様な盛り上がりを見せており、今まさにその決着がつこうというところだったが、あきさけんだ。

第一小ライガーたい、集合!! マインドトークの第一小ライガーたい専用ルームにつなげ! きんきゆう出動だ!」

「──っ。りようかい!」

 そのいつしゆんで空気がわる。

 全員がドローンを放り出して、あきのもとへ集まりえんじんを組んだ。

 そして視界に起動した念話通信アプリケーション〈マインドトーク〉に表示された参加メンバー一覧が、いつしゆんにして二十五名に達する。

 あきはGPSから割り出される共有座標モードで、〈マインドトーク〉にアドオンされているブリーフィングツールを起動──たちまちえんじんの中心に無数のちよう高層ビルから構成されるれいきようの立体図が表示された。

 すると、数秒ののちに中年の男のホログラムが表出する。

 軍属にも関わらず仕立てのいいスーツに身を包んだ男──かんざきとおるである。

 階級は大佐。あたえられた役割はここれいきようぜんしよう基地がかんかつする戦域における作戦群の立案およとうかつだ。かれこれ三年もの間、嶺京戦線をとつできずこうちやくさせている張本人とも言える。

 そして、第一小ライガーたいの長を務めるあきにとっては直属の上司に当たる。

 かんざきの顔を見て、いやな予感があきの胸の内をよぎった。

 通常の作戦であれば、戦略統合システムUTASのコンタクト用AI──つうしよう〈アジテーター〉がブリーフィングを行う。しかし、何かイレギュラーな作戦がある時は、こうしてかんざきが直々に指令を下すのだ。

 そういう時はたいていろくなことにならない。それをよく知っている小隊の面々は、あきと同様にいやそうな顔をした。

 かんざきはその二枚目の顔に気持ち悪いほどさわやかなみをかべて口を開く。

『──よーし、全員そろったね。三百二十秒前に新規行動計画が立案された。作戦区画はポイントR8501にあるはいされた地下研究せつ西さい研究所。目標は、この研究所のコントロールルームに保管されているデータの回収だ』

 ──西さい研究所。それは、世界一ゆうしゆうな民族と評される嶺京人が作りあげた研究所の一つ。

 かんざきの放ったその言葉に、あきいつしゆん自分の耳を疑った。

 しかし、同時に部隊の間に広がったどよめきを見て、それがちがいではないことを理解する。ある者は青くした顔をたがいに見合わせ、ある者はほおらせたじろいだ。

 あきの右に立つりようたろうもまたこわる。

「オイオイオイそれってまさか……っ」

 あきうなるように言葉をいだ。

「──オペレーション・ホワイトアウトか」

 かんざきがおのまま首を縦にる。

 オペレーション・ホワイトアウト。

 それは任務が策定されてからの二年間、いくとなく部隊が送られては失敗に終わってきた、れいきようぜんしよう基地の中でも悪名高い作戦。

 戦域Rゾーン・ロメオにある地下研究所から機密情報の入ったデータドライブを回収するだけの作戦なのだが、この研究所の防衛システムがやつかいなのだ。西さい研究所は持ち主を失った現在でも、どういうわけか強力なが大量にうごめいている。まるでそのコントロールルームを守るかのように配置されている数々の無人兵器は、これまで何度もサルベージを試みた部隊をぜんめつさせてきた。

 アルカディアがある以上、任務をかんりようする以外はタイムリミットまで戦死する羽目になる。

 結果、この作戦にく部隊のことごとくは、その度におおはばに評点を減らすことになるのだ。

 あきこぶしを強くにぎった。

 こんな作戦なんかに参加したら、せっかく少しずつ積み上げてきた仲間の評点が簡単にんでしまう。そうなれば、りようたろうの夢がただの絵に描いたもちに終わるのは必至だ。

「どうして私たちなわけ……!? ホワイトアウトは、いつも戦績が最下位の部隊に割り当てられるじゃん!」

 あきの左でまゆを立てたがまくし立てた。

 その声に乗じて部隊の面々が便乗して野次を飛ばす。

「そうだそうだ! 俺たちは平均以上の戦績は出してるぞ!」

「割り当てるならもっと、そこのみたいにショットガンしか使えないようなやつにしろよ!」

「オイだれだ今俺を売りやがったのは!?」

「静かにしようか」

 かんざきするどい言葉に、水を打ったように静まり返る。

「ライガー隊が最下位なんだよ。が、ね」

「────」

 部隊の空気がこおる。

「オペレーション・ホワイトアウトは言わばサイドミッションだ。本筋は地上の嶺京を制圧しローレリア大陸こうりやくきようとうとすることにある。アルカディアが投入された戦場をとつするには対人せんとうスキルが不可欠だ。この配置はごく当然の結果だよ」

 あえて言うまでもない。

 それは対人せんとうに重きを置いてこなかったあきの責任であることは明白だった。

 部隊の面々の視線があきに集まるのを感じる。

「……クソ。いちのせいじゃねえかよ」

「ふざけんなよ、なんで俺たちがアイツなんかのしりぬぐいをしなきゃならないんだ」

「俺たちの評点なのに……。ホワイトアウトなんてやったら、底辺コース直行じゃんか」

 かくそうともしない悪態がポツポツとがる。

「なにアキのせいにしてんの! 戦績がるわないのはここにいる全員の責任でしょ!?」

 それを、いつしゆうした。彼女の言葉に隊員たちは一斉にたじろぐ。

 あきは鼻からするどく息をくと、一歩前に出た。

「大佐、俺たちは全部隊の中でもきよてん確保をはじめとしたせんきようへのこうけんりつはトップクラスだ。地上の戦線へ参加するほうが軍にとってお得ってものだろう。別任務への割り当てを希望する」

「ダメだ。君たちは対人戦績が低い割に対の戦績が異様に高いだろう。これ以上にない適所なんだよ」

西さい研究所は地上とはちがって常に閉所せんとうだろ。そうなると俺たち本来のパフォーマンスを発揮できない可能性がある。オペレーション・ホワイトアウトをすでに経験している第三や第四小隊のほうが適しているんじゃないのか?」

「その点も心配ない。君たち第一小ライガーたいの過去のせんとうデータを見ると、地下地上問わず一定の水準を保って戦績を上げていることが分かる。君たちは黙って突撃すればそれでいい」

 あきは奥歯を痛いほどめた。

 そして顔に張り付いたみとは裏腹に、ニコリともしないかんざきそうぼうにらみつける。

「ずいぶんとデータドライブに執着するんだな。ひょっとして逃げられた娘さんの写真でも入ってるのか? しかもこれってローレリア軍ロツツひんぱんに回収しようとしているよな。それだけ重要なデータなら、むしろ大規模なこうせいけるべきじゃないか?」

「む、娘は関係ないし、中身については君たちが知る必要はない。それに何度も言わせないでくれよいち。地上の戦線が最優先なんだ。君たちはね、球拾いのようなものなんだよ」

「……っ」

 あきは浮かんだ笑みがった。

 まるで定型文しか返せない旧式のAIと会話しているような気分になってくる。これなら統合本部アジテーターのAIのほうがかんざきの気色の悪いがおがないだけまだマシだ。

 あきは地下の立体図を見てあることに気が付く。

 それは、研究所の真下に広がるれいきようが丸まる入りそうなほどのきよだいな空間。

「……大佐。まさかとは思うが、研究所の下にあるこのくうどう部分って──」

 かんざきあきの言葉に短くうなずいた。

「お察しの通り、そこにあるのはジオシティ・イオタだ」

「……まじかよ」

 りようたろうをはじめ、部隊の面々がうなった。

 ジオシティ・イオタ。

 それは、かつてこの世のぜいえいの全てが集まっていたとされる、世界最大級のジオフロントである。大戦で散り散りとなった嶺京人の忘れ形見の一つだ。

 あきかんざきを流し見る。

「あの辺りの足元はもろいらしいじゃないか。万が一底面がけたら俺たちは真っ逆さまだ……ネットの届かない、オフライン領域に」

「……んな危ねえ場所なのかよ」

「崩れやすいから細心の注意を払ってくれよ。ただ、オフライン状態が二週間以上けいぞくした場合、除名あつかいにする。こくした記憶変数体マインドステートを持つクローンは〝共鳴〟を起こすからね。死体を見つけられない限り、再生は行えない」

 あきは背筋が冷えた。

 除名あつかいとはつまり、軍から追放され、アルカディアによる複体再生リスポーンも行えなくなるということ。アルカディアに接続できず複体再生リスポーンが行えなくなるということは、再生可能な現代における死そのものと言えた。

 すると、そこでかんざきはおどけたこわで両手を広げる。

「ただし、君たちにとってこれが非常に困難な任務であることはこちらも重々承知している」

「……?」

 話の道が変わったのを感じて、顔をいからせていた隊員たちの視線がかんざきへと集まる。

「だから約束しよう──データの回収に成功したあかつきには、退役までの残り四年間、プラスの評点を五百パーセント、ブーストしてあげる」

 かんざきの言葉に、周囲がざわつく。

 それはやがて興奮へと転じ、最後は歓声へと変わった。

 あきもまたりようたろうと思わず顔を見合わせた。評点のブースト? そんな特別な、これまでに聞いたこともない。それだけの数値が得られれば、さらに味方のける戦術を組むことも可能だろう。

 しかし、あきはどうにも疑心をぬぐえずかんざきに言葉を向ける。

「どういうつもりだ」

 問うてもかんざきは短くかたすくめるのみ。

「二度と再生できなくなる可能性があるほど、危険な任務に割り当てるんだ。これくらいのボーナス当然じゃないか」

 それからというもの、きんきゆうの招集にも関わらず仲間たちの間でやりたいやりたくないの論争が巻き起こる。

「ちょっとみんな、静かにして! 話、終わってないんだから!」

 そのさわぎの熱に対しての声がひびく。

 しん、と静まり返り、視線が再びあきに集まった。仲間を見回すと、そこにはかくを決めた顔が並んでいる。

 あきは肺の中身を吐き出し、かんざきと正面から向き合った。

「──もう一声だ。ポイントとうちやくに航空えんが欲しい。ローレリアの連中のことだ、俺たちの動きを察知して対応してくるに決まってる。研究所のこうりやくまでの損害を最小限にしたい」

 かんざきは片方のまゆを持ち上げる。

「それくらいお安いようさ」

「──よし、決まりだ」

 あきの言葉に満足そうにうなずいたかんざきは、れいきようの立体マップへと歩み寄る。

西さい研究所では不安定な通信下で、こうひん複体再生リスポーンしながらせんとうすることになる。だから今回はいつもよりも多くの生体出力素材バイオフイラメントを持っていきたまえ」

 それから今回の回収目標であるデータドライブらしき立体図がとうえいされた。

 それは手のひら大の直方体で、外側はがんじような造りになっている。

「あと、データドライブにはセキュリティ用のドングルがさっている。本体とドングル、両方が無いとデータにアクセスできないから、必ず二つとも回収するように」

 すると、となりりようたろうが不安げにつぶやく。

「……リスできるとは言え、しよせんは人間。交戦きよが長い地上ならまだしも、演算処理の速い相手に地下の閉所戦はちと厳しくねえか」

「小さな力も集めれば強くなる。案ずるな、これからの時代、人間の兵士がますます戦場の主役になっていくだろう」

 いつもは一つや二つのとげを混ぜて話すかんざきにしては、ずいぶんと毒気のない台詞せりふあきは顔を上げた。

「大人みたいなことを言うんだな」

「こう見えて君たちの何倍も生きているんだ」

 かんざきうすく笑って、それから表情を消す。

「作戦開始時刻は一三〇〇。第一小ライガーたいしゆつげき準備に入れ」

「──りようかい

 かんざきの言葉に、小隊全員の声が重なった。

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