00.プロローグ

 ──熱気である!


「お待たせいたしました! これが予選Aブロックの雌雄を決する戦いとなります! すみおかシト選手vsつるぎタツヤ選手! 全日本大会への切符を手にする者は、果たしてどちらか!」

「「「ワアアアアアアーッ!!」」」

 大競技場の客席を埋めつくす観客。所狭しとしつらえられた、大画面の超世界ディスプレイ。僅か十四歳の中学生同士の異世界転生エグゾドライブとはいえ、今から行われようとしている試合は、彼らと同年代の子供がデパートやゲームセンターで興じるような遊びのレベルではない。

 WRA異世界全日本大会関東地区予選トーナメント。その準決勝戦である。

 関東地区から本戦トーナメントに出場する者は上位二名。

 この試合の勝者が、全日本大会本戦出場枠を手にすることになる──プロの転生者ドライバーの耳目すら集める、最強の中学生転生者ドライバーを決める戦いは、誰も予想だにしない対戦カードとなっていた。


 多くの優勝候補を打ち破り、関東地区最強の座へと指をかけた二名。

 かたや緻密なる戦術で連勝を重ねる期待の新星。すみおかシト。

 そして、かたや無名、異世界転生エグゾドライブの素人と思われたダークホース。つるぎタツヤ。


 そのつるぎタツヤは、自らの転生レーンに待機する軽トラックへと駆け寄っていた。

「おっちゃん! この試合も思いっきり頼むぜ……! ほしはら精肉店の軽トラだから、俺はいつだって全力で転生ドライブできるんだしよ!!」

「おうおう! 任せときなタツ! 相手が期待の新星だかなんだか知らねえけどな……お前は中学最強の転生者ドライバーだ! ずっと見守ってきたおっちゃんが言うんだから間違いねえ……! 優勝祝いはメンチカツだぞ! ハハハハハハ!」

「ああ、ありがとよ! 期待して待ってる!」

 赤いジャケットと跳ね気味の髪が特徴の、見る者に快活な印象を与える少年である。同級生と比べれば小柄な体だが、異世界転生エグゾドライブに体格差のハンデなどは存在しない。彼の表情や言葉には準決勝戦に臨むことへの気負いではなく、純粋に今から始まる異世界転生エグゾドライブの勝負を楽しみにしているかのような、心の内からの熱がある。

 そして彼が振り返った先に待つ対戦相手は──とうに転生ドライブの開始位置についている。

 ……何もかもが、タツヤとは対照的な少年といえた。すらりと高い長身。髪の色と同じく染み一つない、白一色の衣装。ともすれば酷薄な印象を与えかねぬまなしがある。

 この少年こそが、我らが主人公。名をすみおかシトという。

「──茶番だ」

 左腕のドライブリンカーへとチートメモリを装填しつつ、シトは告げた。

異世界転生エグゾドライブにトラックのしなど関係ない」

 長く使い込まれた星原精肉店の軽トラックに対して、すみおかシトが立つ転生レーンに待機するトラックは、白く無機質なWRA認定オートれきさつ2tトラックであった。

「無論……きずなや心などという、甘ったれた代物もな。勝負を分けるものは、デッキ構築と戦略の力。それだけだ」

「ヘッ……! お前の常識じゃあそうなのかもしれねーな」

 シトの挑発を不敵な笑みで受け流しながら、タツヤも自らの転生レーンへと並び立つ。

 ここにはタツヤの望む全てが存在する。赤と青の二色に塗り分けられた二つの転生レーン。前方にはこうこうとヘッドライトを照らすトラック。超世界ディスプレイに表示される試合開始へのカウントダウン。熱狂する観客の声。そして、すみおかシト。

 彼の望んだ強敵と、全力で戦うことができる。それだけでいい。

 だから妥協できないだけだ。心も、トラックも。

「俺には違うんだよ」

「……。そうか」

 シトも、己の転生ドライブスタイルを曲げることなくここまで勝ち上がってきた転生者ドライバーである。

 かつてタツヤと戦った時と同じように、淡々と宣告した。

「予告しよう。準決勝の世界脅威レギュレーションは『単純暴力A+』。……となれば貴様のデッキ構成は【超絶成長ハイパーグロウス】、【絶対探知フラグサーチ】を中心とした効率重視の速攻型。故に、貴様は……この俺には、決して勝てない!」

「どうかな! ──やってみなきゃあわからねえだろ! 人生も異世界転生エグゾドライブも、そこが一番面白えところだろうがッ!!」

「ならば試合で語ってみせろ! ……レディ」

「望むところだ! レディ!!」

 二人の転生者ドライバーは前方のトラックへ向け、同時に助走の姿勢を取った。

 カウントがその時へ近づいていく。2。1。0。

「エントリィィィ──ッ!!!」

 たけびとともに駆け出す! エンジン音! 加速! せんこう

 トラックが二人の少年を轢殺する!

「「ウオオオオオーッ!!」」

 Aブロック準決勝戦の幕が今、切って落とされる!


   ◆


 この世界と隣接する、異なる現実──

 平行世界の実在証明は、それ以前の文明を一変した。

 無限に広がる異世界の観測。転生。そして干渉。


 ばくだいなる未知との遭遇に人々は熱狂した──だがしかし、程なくして彼らは知ってしまった。

 観測された異世界のことごとくが、同時に滅亡の危機にひんしているということを。

 尋常では到底救いきれぬ数の希少なる世界が、彼らの目の前で滅びつつあった。

 誰もが容易に救世主となれる技術の開発は急務であったのだ。


 ──そして時は流れ、西暦20XX年!

 世界転生協会World Reincarnation Associationが普及させた異世界転生エグゾドライブの競技人口は全世界で一億人にも達し……

 今、世界救済は娯楽と化した!


 超世界転生エグゾドライブ!

 それは異世界の勝負に文字通りの『人生』を賭ける、熱き少年達の戦いである!

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