第3章 砂漠の国のスコップ(ユリアすこ)

エピローグ「ユリアのおんせんスコップ(予告編)」

 夜になっていた。

 アランはひとり、ラハルの村の温泉に入っていた。

 ドラゴンを倒したことをラハル族の族長に報告すると、むせび泣いて『どうか祭りを開くから一晩だけでも』と懇願されたのである。ついでに、村にいた温泉に入っていってほしいとも。

 なお温泉はユリアの水呼びパワーが強力すぎて湧いた。温泉ユリアだ。

 当のユリアは帰路の途中、アランをぼうっと見上げていた。心ここにあらずといった、まるで酔っているような表情だった。きっと、長年の苦労が報われて安心したのだろう。アランはそう結論づけた。

「これでオーブが三つ……残りは四つだな」

 次のオーブは砂漠の国の隣国にあるという。

「リティシアとの約束は、無事果たせるだろうか」

 すべてのオーブを集めて、宰相ゼルベルグから国を取り戻す。それがリティシア姫の願いだった。それが果たせるかと言うと──ちょっと疑問だ。いやオーブを集めるのは可能だが、問題はそこではなく、リティシアが当初の目的を覚えているかが不安だ。

 あの姫はとてつもない勢いで何かに覚醒しつつある。

 神聖スコップ教団の布教が旅の主目的にしか見えない。

「…………いや、でもまあ」

 ロスティールに戻ればきっと正気に戻るはずだ。

 今はきっと慣れない旅で、はしゃいでいるだけなのだ。たぶん。

 などとアランが珍しく現実逃避しはじめたときだ。

「し……し、失礼……いたします……っ」

 カラリ。木製のドアが横に開いた。

 振り返ると、水色の髪が見えた。夜なのに輝くほど白い肌。

 ユリアだ。

 しかしアランが驚いたのはそこではなかった。

 普段のヒラヒラの服を、どこかに脱ぎ捨てたようで、何もまとっていない。

 裸である。

「は?」

 木製のタライと純白のタオルだけを持っている。たわわな胸にタオルが引っかかっているが突端はまったく隠せず、フルリと震えるピンク色が見えた。大事なところを隠してはいるが、そんな巫女の姿がかえって、危ない感情を想起させる。

「いや待てユリア、こっちは男湯だ!」

 珍しく慌てるアラン。裸の巫女ユリアはせんじようてきを通りこして卒倒的だ。

 アランのアダマンティンの自制心すら破壊されそうなほどだ。

 ユリア本人も恥ずかしいらしく、顔はしゆうのピンクに染まっている。

「男湯なのは……ぞ……ぞ、存じて……おります……っ」

「存じて!?」

「あの、あの、私、その……た、大変失礼ながらっ!」

 ユリアがたわわな胸を腕に抱きつつ、タライから何かを取り出した。

 それはに最高に似つかわしくない物体。

 水色スコップであった。

「スコップ最高司祭のご命に従い、お、お背中を《スコップ》させていただきます……!」

 ホカホカの湯気がふたりの間を流れてゆく。

 やがてアランは心底後悔した。


 ──リティシアのスコップ活動を、さっさと止めるべきだった。

このエピソードをシェアする

  • ツイートする
  • シェアする
  • 友達に教える

関連書籍

  • スコップ無双 「スコップ波動砲!」(`・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д゜;;;).:∴ドゴォォ

    スコップ無双 「スコップ波動砲!」(`・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д゜;;;).:∴ドゴォォ

    つちせ八十八/憂姫 はぐれ

  • スコップ無双 「スコップ波動砲!」(`・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д゜;;;).:∴ドゴォォ 2

    スコップ無双 「スコップ波動砲!」(`・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д゜;;;).:∴ドゴォォ 2

    つちせ八十八/憂姫 はぐれ

  • スコップ無双 「スコップ波動砲!」(`・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д゜;;;).:∴ドゴォォ 4

    スコップ無双 「スコップ波動砲!」(`・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д゜;;;).:∴ドゴォォ 4

    つちせ八十八/憂姫 はぐれ

Close